『SILENT HILL f』は、2025年9月25日(木)にPlayStation®5、Xbox Series X|S、Steam、Epic Games、Microsoft Store(Windows)で発売予定の恐怖と狂気のサイコロジカルホラー作品です。PlayStation®5版はパッケージ版も提供されます。
価格はスタンダードエディションが8,580円(税込)、デラックスエディションが9,790円(税込、ダウンロード版のみ)に設定されており、CEROレーティングはZ(18歳以上対象)に指定されています。1人プレイ専用のタイトルとなります。
物語の中心となるのは、寂れた田舎町「戎ヶ丘(えびすがおか)」に住む高校生の少女「深水雛子(しみずひなこ)」です。雛子は父親から逃れるように家を飛び出したところから物語が始まり、思春期特有の憂鬱な一面や闇を抱えている設定ですが、戦闘においては頼もしい姿を見せるキャラクターとして描かれています。
開発チームと制作背景
開発には豪華なスタッフが参加しており、コナミデジタルエンタテインメントの「SILENT HILL」シリーズプロデューサーである岡本基氏、シリーズの楽曲を手掛けてきた作曲家の山岡晃氏、『ひぐらしのなく頃に』などで知られるストーリー担当の竜騎士07氏が主要メンバーとして名を連ねています。開発は台湾のデベロッパーNeoBards Entertainmentが担当し、ゲームディレクターのAl Yang氏とゲームプロデューサーのAlbert Lee氏が中心となって制作を進めています。
コナミ、NeoBards Entertainment、そしてトレーラー制作を担当した映像制作会社「白組」の三社が密接に協力し、1960年代の出来事や空気感を参考に、当時の文献を何十冊も調べて資料収集に力を入れ、1960年代の日本の緻密なディテールを再現することに成功しました。
タイトルの「f」については、岡本氏によると複数の意味が込められており、複数の単語の省略形であるとのことですが、プレイヤーによる考察を促すために意図的に秘密にされています。
舞台設定と世界観
1960年代の日本という舞台選択
本作はシリーズ初の日本を舞台とした作品となり、1960年代の寂れた田舎町「戎ヶ丘」が主な探索エリアとなります。この時代設定について、現代と妖怪や化け物がいたファンタジーの時代の「境目」のように感じられ、リアルと幻想が交錯する舞台として機能しています。
雛子の平凡な日常が、霧に包まれて変貌していく町と、うごめく怪異によって崩れ去ります。地面から彼岸花のようなものが咲き乱れ、壁からは触手のような植物があふれ出すなど、鮮烈な描写で日常が侵食される様子が描かれています。
町並みは、岐阜県の飛騨地方で「筋骨(きんこつ)」と呼ばれる狭く入り組んだ複雑な迷路のような構造を再現しており、建造物による死角が多く、緊張感のある探索が楽しめる仕組みとなっています。
グラフィックとアートデザイン
1960年代の日本の原風景が4Kの美麗なグラフィックで再現されており、その狭く複雑な町並みは美しさと懐かしさを感じさせつつも、人の気配がない静けさが緊張感を高める演出となっています。
本作のキャッチコピー「美しいがゆえに、おぞましい。」が示す通り、グロテスクで不気味な要素と美しい要素が混然一体となった画作りが特徴的です。イラストレーターkera氏によるクリーチャーデザインは、一体ずつ丁寧に描かれ、主人公のトラウマを反映しつつ、花や内臓といった「美しさとグロテスクさの共存」をテーマとしており、特に開発初期に作られた巨大なバケモノ「アラアバレ」にその傾向が強く表れています。
革新的なゲームプレイシステム
近接戦闘特化のアクションシステム
従来のサイレントヒルシリーズと最も大きく異なる点として、本作では銃などの遠距離武器は一切登場せず、主人公の深水雛子は鉄パイプ、鎌、懐剣、薙刀といった近接武器のみで戦います。試遊時には包丁やハンマーなども登場することが確認されており、これにより、敵との距離が常に近くなり、高い緊張感と戦略的な駆け引きが生まれる仕組みとなっています。
新たなリソース管理システム
戦闘では「持久力」と「精神力」という新たなリソース管理が導入されました。持久力は攻撃、回避、走ることで減少し、尽きると疲労し行動不能になりますが、時間経過で回復します。精神力は「集中」状態や「渾身の一撃」といった強力なアクションに必要ですが、使用すると最大値が減少するデメリットがあります。これらのリソースを考慮した立ち回りが求められる戦略性の高いシステムとなっています。
見切り技による攻防システム
「見切り回避」と「見切り反撃」といった攻防一体の技が追加されました。敵の攻撃をギリギリで回避すると持久力が瞬時に回復する「見切り回避」が発動し、これはキャラクターの心情(アドレナリン噴出)を反映したシステムです。敵の特定の攻撃の隙を突いてR2ボタンを押すと、持久力を消費せずに敵をひるませる「見切り反撃」が可能で、敵の体にエフェクトが表示されるのがタイミングの合図となります。これらの要素は、アクションの楽しさや達成感を高めることを狙って設計されています。
武器の耐久度システム
武器には「耐久度」が設定されており、使い続けると壊れてしまいます。耐久度を回復するアイテム「工具袋」や予備の武器の携帯が必要となり、所持制限があり管理が重要となっています。ただし、裏世界限定武器である懐剣と薙刀には耐久度がありません。
なお、『SILENT HILL 2』リメイクにあった倒れた敵への踏みつけアクションは、雛子たちの性格を考慮し採用を見送られました。
探索システムとサウンドデザイン
音響を重視した探索システム
従来のシリーズにあった敵の接近を知らせるラジオのようなアイテムがなく、バケモノが立てる物音が敵の存在を事前に察知する重要なファクターとなります。探索では耳を澄ますことがより重要になっており、肩越し視点のカメラと合わせて高い没入感を提供します。
霧や闇、建物の死角によって視界が制限されるため、常に危険が潜んでいるという緊張感が途切れることがありません。屋外だけでなく、施設や人気のない民家などの建物内も探索の対象となり、アイテムが豊富に配置されており、マップを隅々まで探索することが攻略の鍵となります。
裏世界の探索
物語を進めると、仮面をつけた謎の男が登場する薄暗く不思議な世界(裏世界)を訪れることがあります。この世界では提灯を照らしながら探索が可能ですが、提灯を持っている間は武器が使えないため、戦闘時には切り替えが必要です。裏世界は現実よりも凶悪なバケモノが蔓延る空間として描かれています。
3D音響による臨場感
山岡晃氏が手掛ける音楽は、1960年代の日本を舞台としながらも、単純な古典ではなく、日本の情緒や湿度感、わびさびの概念を盛り込むことで、本作ならではの独創的な価値を表現しています。民謡的な美しくも不気味な歌声も特徴的です。
3D音響は、物陰の小さな音や背後からの囁きなど、プレイヤーを包み込み、高い没入感と臨場感をもたらします。試遊では、音響のリアルさから、ヘッドホンを外して現実の音か確認するほどだったことが報告されています。
敵キャラクターと戦闘の特徴
独特な敵の行動パターン
本作独自のバケモノが登場し、それぞれ個性的な動きを見せます。特に注目すべきは「アヤカカシ」と呼ばれる案山子のようなバケモノで、視界に捉えていると動きを止め、視界から外すと忍び寄ってくる「だるまさんが転んだ」のような挙動をします。
また、「咲子」と呼ばれる試遊の最後に登場する巫女装束の強敵は、雛子の友人らしい言動をし、リーチの長い攻撃や、姿を消して遠距離から精神力を削る攻撃を使用します。一部のバケモノは不死身で、倒しても一定時間で復活するため、基本的には戦闘を避けるのが推奨されています。
戦闘の戦略性と難易度設定
敵を倒しても報酬がない場合が多く、体力の消耗や武器の耐久度減少を防ぐため、戦わない選択肢も重要な戦略となります。敵の特性を逆手に取った対処法も存在し、狭い場所では武器が壁に当たって隙ができるなど、リアルな要素も盛り込まれています。
戦闘とパズルの難易度を個別に設定可能で、試遊では「物語重視」(やさしい)が推奨されました。難易度「物語重視」では敵が弱くなり、精神力がセーブポイントで回復するなどの違いがあります。難易度「普通」ではアクションが難しく、戦闘を避ける選択も有効な戦略となります。難易度はゲーム開始後も下げることはできますが、上げることはできない仕様となっています。
成長システムとリプレイ要素
祠を利用した成長システム
セーブポイントである「祠(ほこら)」では「お供え物」を奉納して「功徳(くどく)」を貯めることができ、これを消費して雛子のステータスを強化したり、特殊効果が付与された装備品「お守り」を入手したりすることが可能です。手動セーブも可能です。
お守りには「持久力の最大値増加」「回復行動中の攻撃中断無効」「見切り反撃時の体力回復」「武器耐久度に応じたダメージ増加」など、様々な効果を持つものが用意されています。
マルチエンディングと周回プレイ
シリーズの特徴である「UFOエンド」を含め、合計5つのエンディングが存在します。1周目の結末は同じですが、2周目以降は雛子の行動や選択によって物語が変化し、異なるボスや展開のエンディングに到達できます。竜騎士07氏は、これらのエンディングをグッドエンドやバッドエンドといった単純な区別はなく、雛子の選択における結末を示すものであり、プレイヤーによって解釈が異なる余地があるとしています。
これらの強化要素は周回プレイ時に引き継がれるため、繰り返しプレイすることで雛子をより強くすることができます。プレイヤーのプレイスタイルやアクションの習熟度によって異なりますが、1周目は8~15時間、初めてのプレイヤーであれば12~13時間が想定されています。
パズル要素と物語性
物語と密接に関連したパズル
シナリオ担当の竜騎士07氏によって書かれたパズルは、単なる謎解きではなく、登場人物の内面描写や物語のテーマと深く結びついており、彼らの心情を紐解く一助となっています。和を基調としたデザインが取り入れられ、試遊ではサクサク進められる適度な難易度でしたが、難易度設定によっては従来シリーズのような歯ごたえのあるパズルも楽しめます。
ジャパニーズホラーの表現
竜騎士07氏は、ホラーを「命の危険が迫る」本能的な恐怖と、「現在の状況が分からないことによる居心地の悪さ」の2つの方向性があるとし、ジャパニーズホラーは後者であり、違和感のある状況を何とか解釈しようと暗闇に目を凝らす見せ方を重視していると定義しており、これが作品の恐怖の根幹にあります。
開発思想とシリーズへの位置づけ
アクション性導入の意図
『SILENT HILL 2』リメイク版が「アクションの気持ちよさをあえて排除した」ゲームデザインだったのに対し、本作では初期段階からアクションの楽しさや爽快感を重視しています。これはアクションゲーム開発を得意とするNeoBards Entertainmentを開発に選んだ理由でもあり、従来の「SILENT HILLはアクションが楽しいゲームではない」というイメージを打破し、歯ごたえのあるアクションゲームを求める新しいユーザー層を獲得する狙いがあります。Yang氏は、『SILENT HILL 2』のクローンを作りたくなかったため、アクション要素を増やす選択をしたと述べています。
「SILENT HILL」らしさの継承
開発陣にとって「SILENT HILL」らしさとは、Al Yang氏は「心理的ホラー」、岡本氏は「空気感」、竜騎士07氏は「料理」のように、プレイヤーがテーマや葛藤を味わいながら恐怖を体験することだと語っています。
これらの要素により、『SILENT HILL f』は過去作のクローンやコピーではなく、新たなユーザー層も獲得しつつ、シリーズの伝統的な心理的恐怖を継承しつつも、よりアクションに焦点を当てた挑戦的な作品として位置づけられています。
試遊イベントでの評価
「SILENT HILL f Tokyo Media Premiere」での反響
世界最速試遊と開発陣へのインタビューが行われたメディア向けイベントが開催されました。会場では赤い照明、霧を連想させるスチーム、バケモノ(クリーチャー)の等身大フィギュア(アヤカカシ、巫女のバケモノ)が展示され、世界観を演出。駄菓子も用意され、海外メディアにも好評でした。
試遊プレイの印象として、序盤の展開で、古い日本の町並みの探索、頭を悩ませるパズル要素、近距離に特化した戦闘など、本作の魅力の一端に触れることができ、アクション難易度は高めであり、「普通」でも手応えがあり、レビュー担当者は「物語重視」でプレイしても手に汗握る戦闘を楽しめたと述べています。
「外伝ではない雰囲気が感じられる意欲作」であり、「『サイレントヒル 2』のクローン・コピーではない、新しい『サイレントヒル』らしさ」が表現されているとの評価を受けています。
その他の注目要素
時代考証へのこだわり
1960年代という時代設定に基づき、当時の看板や教科書といったオブジェクトのディテールにもリアリティが追求されています。また、当時の社会情勢や慣習、例えば男女雇用機会均等法以前の女性の社会的な役割なども、考察を深める要素となり得るよう設計されています。
内容に関する注意喚起
ゲームには性差別、児童虐待、いじめ、薬物による幻覚、拷問、強い暴力表現が含まれる可能性があり、これらは1960年代の世相や慣習に基づいた表現であると公式サイトで注意喚起されています。
『SILENT HILL f』は、シリーズの伝統を受け継ぎながらも、大胆な革新を試みる意欲作として、ホラーゲームファンの注目を集める作品となりそうです。
先行プレイ動画
出典一覧:




