2001年にアーケードで登場し、多くのファンを魅了した縦スクロールシューティングゲーム『式神の城』。その記念すべき第1作が、Nintendo Switch向けに移植開発中であることが2025年9月26日に発表されました。これは、すでに発売済みの『II』、そして発売を控える『III』に続くもので、シリーズ三部作を現行機で遊べるようにするプロジェクトの最後のピースがはまったことを意味します。長年の障壁を乗り越え、ついに実現へと動き出した全作移植計画の全貌が明らかになりました。
シリーズ三部作、Switchに集結へ
今回の発表は、「東京ゲームショウ2025」で開催された「式神の城シリーズ開発者座談会」の壇上で明かされたものです。開発を手掛けるコスモマキアーによると、初代『式神の城』の発売時期は、2026年4月末の発売が予定されているシリーズ3作目『式神の城III』のNintendo Switch版と同時期を目指しているとのことです。これにより、2023年4月に同社から発売された『式神の城II』と合わせ、シリーズのナンバリングタイトル3作品すべてがNintendo Switchでプレイ可能となる道筋が示されました。
『式神の城』シリーズは、個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語性と、敵の弾に自機をかすらせることでスコア倍率が上昇する「テンション・ボーナス・システム（T.B.S）」という独創的なゲームシステムが特徴です。原作はアルファ・システムが開発し、アーケードで人気を博しました。今回の移植プロジェクトにより、この名作シリーズの魅力を、新たな世代のプレイヤーも手軽に体験できるようになります。
移植を阻んだ「権利の壁」とその解消
シリーズ全作品の移植がこれまで実現しなかった背景には、複雑な権利問題が存在しました。クラウドファンディングのページによれば、シリーズ第1作の権利はこれまで別のパブリッシャーが保有しており、全作をまとめて移植することが困難な状況にあったとされています。ファンにとっては長年、歯がゆい状況が続いていました。
しかし、その状況は2025年2月に大きな転機を迎えます。3作品の販売権利譲渡が完了し、移植に向けたすべての障害が取り除かれたのです。この権利関係の整理が完了したことで、今回の全作移植プロジェクトが本格的に始動する運びとなりました。長年の時を経て、ついにシリーズがひとつのプラットフォームに集結する夢が現実のものとなります。
原作への敬意が込められた開発手法
今回の移植開発は、単に過去の作品をそのまま動かすものではありません。開発はエミュレーターを使用せず、原作を手掛けたアルファ・システムから提供されたソースコードを基に、一からプログラムを書き直す「リプログラミング」という手法が採用されています。この丁寧な開発アプローチは、原作のゲーム体験を忠実に再現しつつ、現行機に最適化させるという、開発陣の強いこだわりを感じさせます。
原作の開発元であるアルファ・システムがソースコードを提供する形で全面的に協力している点も、移植の品質に対する信頼性を高める要素と言えるでしょう。オリジナル版の魂を受け継ぎながら、現代の環境で快適に遊べる『式神の城』が誕生することへの期待が高まります。
ファンと共に創る「トリロジーBOX」
初代の移植発表とあわせて、シリーズ3作品をセットにした商品の企画も進行中であることが明かされました。この企画の実現を目指し、クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」にて、プロジェクト第2弾が2025年9月26日より開始されています。目標金額は300万円に設定されています。
このクラウドファンディングの主なリターンとして、ファン垂涎のアイテムが多数用意されています。シリーズ3作品のゲームソフトを収納できる、園田未来氏描き下ろしの「特装版トリロジー収納BOX」をはじめ、リマスター音源を収録した3枚組のサウンドトラックCD、そして今回の開発者座談会の内容も再録される「ビジュアルファンブック」などが含まれています。これは単なる資金集めではなく、ファンと共にシリーズの集大成を形作る試みと言えます。
明かされた開発の舞台裏
「東京ゲームショウ2025」の座談会では、開発元のコスモマキアー代表・森一申氏、原作を手掛けたアルファ・システム開発部長の須田直樹氏、原作シナリオ担当の芝村裕吏氏らが登壇し、貴重な開発秘話が語られました。その中では、開発スタッフがテストプレイに習熟しすぎた結果、ゲームの難易度が意図せず上がっていったというエピソードや、第1作の主人公が当初は定年間近の刑事という設定だった、といった驚きの裏話も披露されました。
