『Fallout』初代開発者が語る“非公式の想定”──中国が先に核を撃った理由やVaultスーツ製造法を解説

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名作RPG『Fallout』の生みの親であるティム・ケイン氏が、初代開発チーム内で「真実」と共有されていたものの作中で明言されなかった設定を自身の動画で紹介し、ファンの間で大きな話題となっています。IGNが報じた内容によると、これらは現行の公式設定ではなく、ベセスダが別解釈を採用してよい非公式情報(not canon)だと同氏は強調しています。

本作は、核戦争後の荒廃した世界を舞台にしたRPGです。今回明かされた内容には、『Fallout』世界の大戦争がなぜ中国の先制核攻撃で始まったのかという根本的な謎や、シリーズを象徴するVaultスーツの意外な製造方法などが含まれています。

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なぜ中国は先に核を撃ったのか

『Fallout』の世界における歴史の転換点となった「大戦争」は、中国による先制核攻撃で始まったとされてきましたが、その具体的な動機は長らく謎に包まれていました。ケイン氏が明かした開発当時の想定によれば、その背景にはアメリカによる条約違反と裏切り行為があったとされています。

ケイン氏の説明によると、アメリカは国連条約に違反してFEV(強制進化ウイルス)の生物兵器研究を秘密裏に継続していました。中国がスパイ活動でこの事実を突き止めた際、アメリカは一度は研究中止を約束しながら、実際には研究拠点を「グロウ」と呼ばれる隠し基地に移して開発を続けていました。

外交やスパイ活動といった手段が機能しないと悟った中国は、アメリカの度重なる嘘と裏切りに対し、最終手段として核兵器の使用に踏み切ったというのが、開発チームが想定していた筋書きでした。ケイン氏は「技術的には中国が最初の核を発射して戦争を始めましたが、違法な生物兵器研究と度重なる嘘によって、アメリカがその原因を作ったとも言えるでしょう」と付け加えています。

Vault 13の選抜は「くじ」―しかも不正の可能性

初代に用意された3人のプリセットキャラクター(Max、Natalia、Albert)は、Vault 13の住民がくじ引きで選んだ者を外の世界に送り出すシステムで決まったという想定がありました。さらに、開発チーム内では「そのくじ自体が不正に操作されていた“可能性”」も笑い話として挙がっていたといいます。各キャラクターの特徴(力任せの戦闘特化、器用な盗みの達人、人たらしの話術特化)から、厄介者を外に出したかったのではないかという冗談交じりの議論があったためです。

また、Vault 13を出てすぐに見つかるVaultスーツ姿の遺体について、チーム内では「Ed」という名で呼んでおり、主人公が最初の調査要員ではなかったことの証拠として扱っていたと説明しています。

Vaultスーツは「押し出し機」で成形(3Dプリント的な製造)

シリーズの象徴であるVaultスーツについても、意外な製造方法が明かされました。ケイン氏によると、Vaultスーツは布を縫い合わせて作られたものではなく、各Vaultに設置された「エクストルーダー(押出機)」と呼ばれる機械によって個人の体格に合わせて成形されるという想定でした。

この設定は、数百年にもわたるVaultでの生活を想定した際、世代交代や体型変化に対応するため在庫保管は非現実的で、スキャンや寸法入力により都度成形し、背面のVault番号もその際に付与されるという理屈から生まれました。実際、初代のVault内に大量のスーツ在庫が置かれていない点とも矛盾しないと述べています。

ロシアとの関係とナタリアの背景

当時の想定では、ロシアは小国の集合体のように分裂し、アメリカとは友好的な関係でした。これに関連して、プリセットキャラクターの一人ナタリアは「ロシアの外交官の孫」という設定で、ロシア大使館関係者がVaultに入っていたことを示唆する存在だったといいます。

「ハロルド」は何者か―あえて曖昧に

ファンに人気のキャラクター「ハロルド」については、開発チーム内でも「グール(放射線で変異した人間)か、FEVの影響か、その混合か」で意見が割れており、「とにかく異様で説明しきれない存在」としてデザインされました。初代の舞台外にはさらに奇妙な出来事があるという示唆のためのキャラクターだったと語っています。

「シュガーボム」の誕生秘話

子ども向けながら不健康なシリアル「シュガーボム」は、ケイン氏がアメリカのコミック『カルビンとホッブス』の大ファンだったことから生まれたアイデアでした。初代には実装されませんでしたが、その後ベセスダの作品で採用され、Amazonのドラマ版『Fallout』にも登場しています。

重要な留意点:これは公式設定ではない

ケイン氏は「これはあくまで初代の開発チームがそう考えていたという話」であり、「自分の語ることが現在の公式設定ではない」と繰り返し強調しています。ベセスダが別の理由付けを行う自由がある点にも言及しており、これらの情報は「楽しみのためのもの」だと述べています。

出典

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