2010年に発売された『レッド・デッド・リデンプション』に登場して以来、15年にわたりプレイヤーの間で謎とされてきた人物「奇妙な男(Strange Man)」。その正体について、ロックスター・ゲームスの共同設立者であるダン・ハウザー氏がポッドキャスト番組でついに言及しました。同氏は、このキャラクターが主人公の「影、カルマ、悪魔の顕現」であると語り、その設計思想の一端を明かしました。
「退屈」な世界を面白くするため。“奇妙な男”誕生の経緯
ロックスター・ゲームスの共同設立者であり、『グランド・セフト・オート』シリーズなど数々の名作を手がけてきたダン・ハウザー氏が、Lex Fridman Podcastに出演した際に『レッド・デッド・リデンプション』の「奇妙な男」について語りました。このキャラクターは15年来、ファンの間でその正体が考察されてきた、作品を象徴する謎の一つです。
ハウザー氏は当時を振り返り、開発中の『レッド・デッド・リデンプション』が「車も、機関銃も、都市もない。(中略)ただの男が馬に乗って砂漠を走っているだけで、かなり退屈だった」と語ります。広大なオープンワールドに、プレイヤーを引きつけるための刺激や物語性がさらに必要だと感じていたことを明かしました。
その課題を解決するため、開発の後半段階でRPGのような短編物語コンテンツが追加されることになりました。プレイヤーが出会う様々な人物が織りなすショートストーリー群の一つとして、この「奇妙な男」は生み出されたのです。彼の存在は、当初のゲーム体験に深みとミステリーを与えるための重要な一手でした。
“奇妙な男”の正体は「影、カルマ、悪魔の顕現」
では、この謎めいた人物は一体何者なのでしょうか。ハウザー氏はポッドキャスト内で、その核心に触れる定義を口にしました。彼によれば、「奇妙な男」とは「あなたの影、あなたのカルマ、悪魔の顕現」であるとのことです。
この発言から、「影」は主人公が目を背けたい側面、「カルマ」は過去の行いの応報、「悪魔」は創作者が恐れる存在といった、多面的な意味を読み取ることができます。単一の存在ではなく、プレイヤーの行動を映し出す鏡のような役割を担うキャラクターとして設計されたことがうかがえます。
この超自然的な定義は、ゲーム内での彼の不可解な描写とも一致します。特に初代『レッド・デッド・リデンプション』の終盤で、ジョンが彼に向かって発砲しても弾丸が全く効かない場面は有名です。今回の「悪魔の顕現」という言葉は、彼が単なる人間ではないことを示唆したこの描写の背景を、開発者自らが説明した形となります。
プレイヤーの行動への「論評」。謎として残された部分も
ハウザー氏はさらに、「奇妙な男」が物語の中でプレイヤーの行動に対する「論評(commentary)」として機能するよう意図されていたと説明します。彼がどこに現れ、何を語るかは、プレイヤーがジョン・マーストンとしてどのような道を歩んできたかを反映しているのです。
一方で、ハウザー氏は全ての謎を解き明かしたわけではありません。「彼があなたのことを知っているのは確かだが、それが誰に対してもそうなのかは明確ではない」と述べ、彼がジョンだけを特別に追っているのか、それとも悪の力によって全てを見通せる存在なのかについては「我々も明確にしなかったと思う」と語りました。
今回の発言は、15年来のファンの考察に一つの大きな見解を示すものであると同時に、キャラクターの神秘性を完全に失わせない、絶妙なものでした。




