PCゲームプラットフォーム「Steam」を運営するValveは2025年11月12日(現地時間)、3つの新しいハードウェア製品群を発表しました。携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」の約6倍の性能を持つという据え置き型ミニPC「Steam Machine」を筆頭に、刷新された「Steam Controller」、スタンドアロン型VRヘッドセット「Steam Frame」がいずれも2026年に発売予定であることが明かされました。
Valveが新ハード3機種を発表、2026年発売へ
海外メディアの報道によると、Valveは本社で実施したハンズオンイベントにて、3つの新ハードウェアを公開しました。リビングでのPCゲーム体験を刷新する据え置き型の「Steam Machine」、伝統的な操作性と革新的な機能を両立させた「Steam Controller」、そしてPCからのストリーミングを主眼に置いたVRヘッドセット「Steam Frame」です。3製品とも2026年の発売が予定されており、特にSteam Machineと新型Steam Controllerについては「2026年初頭(early 2026)」に登場すると報じられています。
Steam Deckの約6倍強力な据え置き機「Steam Machine」

今回発表された製品群の中でも特に注目されるのが、新型「Steam Machine」です。これは、大ヒットした携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」から画面とバッテリーを取り除き、性能を極限まで高めたリビング向けのミニPCというコンセプトの製品です。Valveによれば、その性能はSteam Deckの約6倍にも達するとされており、家庭用ゲーム機のようにテレビに接続して、膨大なSteamライブラリを快適に楽しむために設計されています。
アップスケーリング活用で4K/60fps動作も視野に
Steam Machineの高い性能は、Zen 4アーキテクチャの6コアCPUとRDNA 3アーキテクチャのディスクリートGPUによって支えられています。これを大型の120mmファンとヒートシンクで効率的に冷却する構成です。Valveのデモでは、『サイバーパンク2077』など一部の重いゲームも、1080pレンダリングとアップスケーリング技術(FSR 3)を組み合わせることで、4Kテレビ出力かつ60fps前後で動作していたと報じられています。
カスタマイズも想定された筐体設計
本体の前面・背面には、MicroSDカードスロットや複数のUSBポート、USB-C、HDMI 2.0、DisplayPort 1.4などを備え、豊富な接続性を実現。また、木目調などの交換可能なフェイスプレート試作品も披露されており、Valveは外装のCADデータを公開してユーザーやサードパーティによるカスタムを想定していると伝えられています。価格は未発表ですが、Valveは「同等スペックのPCと同じくらいの価格帯になる」と説明しています。これは、PlayStationやXboxのようにハードウェアを赤字覚悟の戦略的な価格で販売するモデルとは異なり、PCと同じように部品コストを価格に反映させることを意味します。そのため、家庭用ゲーム機(コンソール)と比べて高価になる可能性があります。
伝統と革新が融合した新型「Steam Controller」

2015年に発売され、その独自性から一部でカルト的な人気を博した「Steam Controller」も、全面的に刷新されて復活します。新型は、従来のアナログスティックやボタン配置を踏襲しつつ、Steam Deckで実績のある四角いタッチパッドを左右に搭載。さらに、スティックの誤入力(ドリフト現象)に極めて強い「TMRサムスティック」を採用したほか、背面には4つの追加ボタンを備えるなど、現代のコアゲーマーの要求に応える仕様となっています。
ストリーミングに強みを持つVRヘッドセット「Steam Frame」

3つ目の新製品「Steam Frame」は、Meta Questシリーズのように単体でも動作するスタンドアロン型のVRヘッドセットです。Snapdragon 8 Gen 3チップセットを搭載し、ローカルでのゲーム実行も可能ですが、Valveはその主眼があくまで高品質なPCからのストリーミングにあると強調しています。PCゲームをストリーミングする際の独自技術「Foveated Streaming」がその核となり、視線追跡を利用して知覚的な品質を劇的に向上させることができるとされています。
PCゲームのエコシステムを拡大する一手となるか
今回の発表は、携帯機(Steam Deck)、据え置き機(Steam Machine)、VR(Steam Frame)というValveのハードウェア戦略を大きく前進させるものです。一部の海外メディアからは、強力なハードウェア群と安価なゲームストアの強みが組み合わさることで、PS5やXboxといった既存コンソールの新たな競合になりうるとの分析も出ています。ただし、一部のインタビューでは、Valveの開発者が「他社との直接的な競争というより、PCゲーム体験を良くしたいという動機が大きい」といった趣旨の発言をしているとも報じられており、今後の動向が注目されます。




