『アサシン クリード シャドウズ』のUXディレクターJonathan Bedard氏が、The Game Awards 2025の取材でPolygonのインタビューに応じました。同作はアクセシビリティ部門(Innovation in Accessibility)にノミネートされましたが、受賞は『Doom: The Dark Ages』へ。それでも「この分野では誰かに負けても気にしない。誰かが勝てば、全員が勝つ」と語ります。
「片腕しか使えなかった」——開発者の原体験
「子どもが生まれて最初の6ヶ月、片腕しか使えなかった。片腕モードがあったら使っていた」。Bedard氏はそう振り返ります。アクセシビリティ機能を開発する立場にいながら、障害ではなく育児という理由でその必要性を感じていました。
字幕をオンにする理由も同じです。「英語を理解するのに問題はない。でも妻が寝ていて、子どもを腕に抱えているときは字幕をつける」。生活の状況がそうさせます。
「アクセシビリティというと障害のことだと考えがちだ。でもそうじゃない」。難しさ自体ではなく、意図しない場所に障壁ができることが問題だ——Bedard氏はそう考えています。
「終盤では遅い」——早期計画が生んだ改善
では、どうやって見えない壁を見つけるのか。Bedard氏のチームはプレイヤーとのワークショップを重ね、直接フィードバックを受けています。あるとき、こんな声が寄せられました。「字幕は最高だ。でも台詞の書き方が曖昧で、自分が何を決めているのかわからないことがある」。
ワールドマップの改善も、対話から生まれました。視覚障害のあるプレイヤーから「砦だけを表示できたら助かる」という提案を受け、マップ上のアイコンを種類ごとに絞り込める機能の実装につながりました。「自分では気づかなかった。知ることが戦いの半分だ」とBedard氏は笑います。
こうした改善が可能だったのは、開発初期から計画していたからです。「もし終盤にこのアイデアを持ってきていたら、他に優先すべきことがあって選択が難しくなっていただろう。でも早い段階で仕様に組み込めば、ずっと簡単になる」。
『シャドウズ』には、コンボ入力を1ボタンで済ませる機能や、話者と声のトーンを示す詳細字幕、目的地までの距離を読み上げるスクリーンリーダーなど、多くのアクセシビリティ機能が実装されています。
「負けても全員が勝つ」——業界全体で進む協調
The Game Awardsで『Doom: The Dark Ages』に敗れたことについて、Bedard氏はこう語ります。「この分野では誰かに負けても気にしない。誰かが勝てば、全員が勝つんだ」。
社内でも似た経験がありました。『シャドウズ』でシリーズ初となるムービーの音声説明機能を導入したものの、Ubisoft内では『スター・ウォーズ 無法者たち』がすでに先行していたのです。「怒りはなかった。『damn、やられた。でもよくやった!』という気持ちだった。Together, we win——一緒に勝つんだ」
誰かが進めば、全員が進む。アクセシビリティの世界には、そういう空気があります。



