SNKの松原健二氏が代表取締役社長(CEO兼務)を退任し、アドバイザー職に就任することが明らかに。この発表は、同社の新作格闘ゲーム『餓狼伝説 City of the Wolves』の販売成績が期待を下回った時期と重なっています。同作は大規模なマーケティングキャンペーンを展開しましたが、日本国内での売上は1万本前後にとどまり、Steamでの同時接続プレイヤー数もピーク時で4,674人と、他の人気格闘ゲームと比較して低調な結果となりました。SNKは今後、戦略の見直しとブランドイメージの再構築が求められる局面に立たされています。
SNK、CEO松原健二氏が退任し顧問役に移行
2025年5月13日、SNKは松原健二氏がCEOを退任し、今後はアドバイザー職という新しい役割を担うことを明らかにしました。松原氏は2021年8月にCEOに就任、同年10月には代表取締役社長にも就任し、その後、約3年9ヶ月にわたり同社の成長と革新を牽引してきました。今後は専門知識とビジョンを提供する顧問として、SNKの戦略的アドバイスを行う予定です。後任のCEOについては、取締役会の議長が暫定的にその役割を担うことが決定されています。
『餓狼伝説 City of the Wolves』の販売成績と市場反応
SNKの最新作『餓狼伝説 City of the Wolves』は、2025年4月24日に発売されました。同作はWWEやボクシングイベント、著名人とのコラボレーションなど、近年記憶に残る最も壮大なマーケティングキャンペーンを展開しました。しかし、販売成績は期待を下回る結果となっています。日本国内では、発売後2週間でPS5版が6,302本、PS4版が2,599本の売上を記録し、合計で1万本前後にとどまったと見られています。
また、Steamでの同時接続プレイヤー数は、ピーク時で4,674人を記録しましたが、これは同社の前作『The King of Fighters XV』のピーク時8,205人を下回る数字です。
サウジアラビアとの関係とマーケティング戦略
SNKは2022年にサウジアラビアの皇太子モハメド・ビン・サルマンが所有する企業となりました。これに伴い、『餓狼伝説 City of the Wolves』のプロモーションにはサウジ関連のイベントや人物が深く関与しています。
たとえば、WWEのレッスルマニアではゲームのロゴがリングマットの中央に表示され、EDM DJのサルヴァトーレ・ガナッチがゲーム内の衣装でパフォーマンスを行いました。さらに、ガナッチはゲーム内にプレイアブルキャラクターとしても登場しており、サウスタウンでインスピレーションを求めて闘うというユニークな設定が用意されています。この参戦は一部メディアでは注目を集めたと報じられましたが、海外の一部ファンからは否定的な反応も見られ、賛否が分かれた事例となりました。
また、クリスティアーノ・ロナウドがプレイアブルキャラクターとして登場するなど、話題性のあるコラボレーションも行われました。しかし、これらのマーケティング戦略が格闘ゲームファンに十分に訴求できなかった可能性が指摘されています。特に、サウジアラビア関連のプロモーションが強調されすぎたことで、一部のゲーマーや市場でブランドイメージに影響を与えた可能性があります。
今後の展望と課題
『餓狼伝説 City of the Wolves』は、ゲーム自体の品質が低いわけではなく、多くのレビューにおいても戦闘システムやビジュアル面が高く評価されています。Metacriticでは「攻防のバランスが良く、プレイヤーの読み合いを重視する設計」とされ、Siliconeraは「視覚的に魅力的で、戦闘を面白くする多くのシステムがある」と述べています。一方、GameSpotでは「メカニクスは堅実で楽しいが、利用できるモードが少ない」との指摘もあり、改善の余地があるとされています。
今後のパッチやDLC、コミュニティイベントを通じてプレイヤー基盤を拡大できる可能性があり、またeスポーツ展開を強化することで、注目を集めることも期待されます。SNKがサウジアラビアの資金支援を受けている状況を踏まえると、今後はグローバルな展開と同時に、従来のブランドイメージをどのように維持・強化していくかが課題となりそうです。
情報元:SNK




