アトラス、ついに“本来の業績”が数字に表れる──黒字転換の背景と、支え続けたファンの意味

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2025年7月4日、セガサミーホールディングスは、ゲーム子会社アトラスが2025年3月期に純利益8億5400万円を計上したと発表しました(出典:GameBiz)。前年の純損失7億5700万円からの大幅な黒字転換となり、業界関係者やファンの間で注目を集めています。

しかし、この「黒字化」はアトラスの経営が突然好転したことを意味しているわけではありません。背景には、長年にわたり“帳簿上の赤字”とされていた会計処理上のカラクリが存在していました。

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のれん償却の終了──赤字は業績ではなく「過去の清算」

アトラスは2013年、当時経営破綻していたインデックス社からセガが買収したことにより、セガグループ傘下となりました。
この買収の際、セガは実際の資産価値を上回る金額でアトラスを取得しています。理由は明確で、アトラスのブランド力、クリエイター陣、熱狂的なファンベースなど、会計上は評価できない“無形の価値”が高く見積もられたためです。

この差額は「のれん(Goodwill)」として計上され、以降毎年数億円規模で償却(費用化)されていました。この「のれん償却」は業績と無関係に固定的に発生するため、アトラスは実質黒字であっても、帳簿上は赤字となる構造が続いていたのです。

そして2024年度決算で、ついにそののれん償却が完了。帳簿上の制約がなくなり、本来の業績が純利益として表れるようになったというわけです。

売れていたのに「赤字」だったアトラス──ファンは知っていた

注目すべきは、アトラスがこの“見かけの赤字”期間にも着実にヒット作を出し続けていたことです。

  • 『ペルソナ5』シリーズ(2016〜):累計全世界1000万本超
  • 『真・女神転生V』シリーズ:2021年に発売されたSwitch版に続き、2024年の『Vengeance』ではマルチプラットフォーム展開により累計211万本突破
  • 『メタファー:リファンタジオ』:新規IPながら200万本超のセールスを記録

これらの作品が好調であったにもかかわらず、会計上は赤字とされてきた事実に対し、ファンコミュニティでは早い段階から「実際は好調だ」という理解が共有されていました。

SNSや掲示板では、「赤字でもゲームは面白いし売れてる」「のれん償却が終われば黒字化するのはわかってた」といった投稿が散見され、ファンは“企業の見えざる健全性”を読み取っていたことがうかがえます。

成功したM&Aとしての評価──2024年11月時点で明言

セガサミーは、2024年11月に開催された2025年3月期 第2四半期決算説明会(アナリスト・機関投資家向け)において、アトラスの買収について次のように評価しています。

「アトラスの買収は、当社にとって最も成功したM&Aの一つだと捉えています」
— 代表取締役社長グループCOO 里見治紀氏
(出典:セガサミーIR「2025年3月期 第2四半期決算説明会」2024年11月8日開催

この発言は、単なる財務面での成功だけでなく、IP価値の維持・開発陣の継続・グローバルブランドとしての進化を含めた総合的な評価と見られています。

アトラスは“信頼に応えた”──ファンとブランドの共存戦略

アトラスは買収以降も自社開発スタイルを維持し、『ペルソナ』『メガテン』といったシリーズだけでなく、新たなチャレンジにも取り組んできました。

  • 『メタファー:リファンタジオ』(2024)
     → “Re:ファンタジー”構想に基づいた新規RPGタイトル
  • 『ユニコーンオーバーロード』(2024、ヴァニラウェア開発)
     → 王道シミュレーションRPG復興を掲げた意欲作(アトラスがパブリッシャー)

これらの作品は、単なる収益ではなく、ファンとの対話の成果ともいえます。

ファンが信じ、支持し続けたことによって、アトラスは自身のブランド価値と創作文化を守り抜きました。そして、帳簿上にもその力が現れた今、アトラスはようやく“数字と実力の整合性”を手に入れたと言えるでしょう。

終わらない物語──これからのアトラスとファンの未来

ファンが信じ続けたゲーム会社が、ようやくその実力を数字でも証明した今、“帳簿”という制限を超えて、新たな創作に注力できる環境が整いつつあります。

次の『ペルソナ』ナンバリングタイトルは?『メタファー』は第二作へとつながるのか?世界中のファンが注目する中、アトラスがこれからどんな物語を描いてくれるのか──その未来に、これまで以上の期待が寄せられています。

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