Mastercard、Steam/itch.ioへの成人向けゲーム規制圧力を否定

Mastercard

決済大手が公式声明で関与を否認

決済サービス大手のMastercard(マスターカード)は8月2日、同社がゲームプラットフォームに対して成人向けコンテンツの規制を要求したとする報道について、公式声明を通じて関与を否定しました。

同社は公式Xアカウントへの投稿で「マスターカードは、メディア報道や申し立てとは異なり、いかなるゲームの評価も行っておらず、ゲーム制作者サイトやプラットフォームでの活動制限も要求していない」と明確に否定しています。

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Steam・itch.ioで相次ぐ成人向けコンテンツ規制

この声明は、主要ゲーム配信プラットフォームで発生している一連の成人向けコンテンツ規制措置を受けたものです。

Steam(スチーム)では7月、性的表現を含む多数の「成人専用」ゲームが削除されました。同時に、同プラットフォームは新たなガイドラインを追加し、「Steamの決済処理業者および関連するカードネットワークや銀行、インターネットネットワークプロバイダーが定める規則や基準に違反する可能性のあるコンテンツ」を禁止すると発表していました。

itch.ioも「決済処理業者からの精査」で対応

約1週間前には、インディーゲーム配信プラットフォームのitch.io(イッチ・アイオー)も類似の措置を実施しました。同サイトは数千のNSFW(職場閲覧注意)ゲームを検索・閲覧ページから「インデックス除外」処理を行いました。

itch.ioは声明で、非営利団体「Collective Shout」からの圧力を受けて「決済処理業者からの精査」に直面したと説明しています。現在、決済処理業者の要件を満たすための「包括的監査」を実施中であり、昨夜には無料の成人向けNSFWコンテンツを再インデックス化し、有料コンテンツについては「段階的に再導入」を進めているとしています。

決済処理業者Stripeも銀行パートナーの制約を説明

itch.ioは同時に、決済処理業者Stripe(ストライプ)からの声明も公開しました。Stripeは「性的満足を目的として設計された」成人向けコンテンツをサポートできない理由について、銀行パートナーによる制約があると説明しています。

決済システムの複雑な構造が規制の背景に

この問題を理解するには、オンライン決済の複雑な構造を把握する必要があります。一般的なクレジットカード決済では、以下の関係者が関与します。

  1. カードネットワーク(Visa、Mastercardなど):決済システムの基盤を提供
  2. 決済処理業者(Stripe、PayPalなど):加盟店とカードネットワークを仲介
  3. 銀行パートナー:実際の資金移動を担当
  4. プラットフォーム:最終的にサービスを提供

Stripeの声明によると、「カードネットワークは一般的に成人向けコンテンツをサポートしているにもかかわらず、銀行パートナーによる制約により、現在性的に露骨なコンテンツをサポートできない状況」にあるとしています。これは、各段階で異なる規制や方針が存在することを示しています。

規制活動の発端と業界への影響

今回の一連の動きの発端となったCollective Shoutは、「メディア、広告、ポップカルチャーにおける女性の客体化と少女の性的対象化」に反対する非営利団体です。同団体のキャンペーンは、決済事業者に対して「特定の成人向けテーマ」を扱うゲームへの決済停止を求める圧力活動とされています。

表現の自由をめぐる複雑な議論

しかし、ゲーム開発者からは、この動きが実質的な検閲に相当するとの批判が上がっています。特に懸念されているのは以下の点です。

  • 芸術的表現への影響:トラウマや暴行などの重いテーマを芸術的に探求する作品への制限
  • 社会問題への取り組み:人身売買などの問題に対する啓発を目的とした作品の削除
  • 多様性への懸念:LGBTQ+関連ゲームの検閲につながる可能性
  • 定義の曖昧さ:「成人向けコンテンツ」の境界線が不明確

抗議活動の拡大と業界対応

これらの決定を受けて、Visa、Mastercard、Stripe、PayPalなどの決済事業者に対する抗議活動が組織されています。草の根グループが各社のカスタマーサポートセンターに大量の電話をかけ、方針転換を求める活動を展開していると報告されています。

各関係者の立場と利害関係

この問題では、複数の関係者がそれぞれ異なる立場と利害を持っています。

  • 決済事業者:リスク回避とコンプライアンス重視、銀行パートナーとの関係維持
  • ゲームプラットフォーム:多様なコンテンツ提供と決済手段確保の両立
  • ゲーム開発者:表現の自由と収益確保
  • 活動団体:社会的価値観の推進
  • プレイヤー:コンテンツアクセスの自由

今後の展望と業界への影響

現在、itch.ioは成人向けコンテンツにより寛容な新たな決済処理業者の模索を進めています。一方、Steamの運営元であるValve(バルブ)からは、この件について公式コメントは発表されていません。

この動きは進行中の案件であり、今後の展開次第では以下のような影響が予想されます。

  • プラットフォーム多様化:より寛容な決済手段を持つ新たなプラットフォームの台頭
  • 決済手段の分散:暗号通貨など代替決済手段の普及加速
  • 規制基準の明確化:業界全体での統一基準策定の必要性
  • 地域差の拡大:国や地域による規制方針の違いが顕在化

今回のMastercardの否定声明は、業界関係者による抗議活動が一定の効果を上げている可能性を示しており、今後の動向が注目されます。


出典: IGN – Mastercard Denies It Pressured Steam, Itch.io to Delist Adult Games (2025年8月2日)

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