『サイレントヒルf』開発陣が語る「過去作で多かった”窮地の女性像”から、抗う主人公へ」——西洋偏重からの脱却も

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『サイレントヒルf』の開発を手がけた台湾のNeobards Entertainmentと、Konami北米ブランドマネージャーのDonell Tucker氏が、本作で意図した方向転換について語りました。開発陣は「過去作では多くの女性が窮地に置かれた状況で描かれてきた」と振り返り、自ら抗う女性主人公を描いた理由を説明。Tucker氏は「シリーズは西洋に少し寄りすぎていた」と認め、そのバランスを整える狙いがあったと明かしています。

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「窮地に置かれる女性」から「自ら抗う女性」へ

『サイレントヒルf』の開発陣は、米メディアInverseのインタビューで次のように語っています。「シリーズの核心にあるのは、心理的恐怖の物語です。サイレントヒル特有の物語体験は、主人公の心理的な旅路にプレイヤーを引き込み、内面的な葛藤に向き合わせ、最終的に自分なりの結論へと導くものです。過去作では多くの女性が窮地に置かれた状況で描かれてきました。だから今作では、自らの境遇に抗おうとする女性キャラクターの物語を書くことにしました」。

この方向転換は、シリーズの伝統を否定するものではないようです。Inverseの記事では、雛子の物語をジェイムズ・サンダーランドやハリー・メイソンと同様の「自己対峙と発見の旅」として紹介しています。女性描写のアプローチは変わっても、シリーズの核心は引き継がれているようです。 

では、雛子は何に抗うのでしょうか。Inverseの記事によると、本作は昭和時代の見合い結婚を題材に「選択の自由を奪われる恐怖」を描いているとのこと。同記事は「本作のメッセージは『反結婚』ではなく、自分が望むものを選ぶ意志を奪われることについてだ」と指摘しており、これは誰もが共感できる普遍的なテーマだとしています。 

「西洋に寄りすぎた」シリーズを日本に取り戻す

Konami北米ブランドマネージャーのDonell Tucker氏は、シリーズ全体の方向性についてこう語りました。「過去作は西洋の影響に少し寄りすぎていました。今作では日本の影響を取り戻したかった。サイレントヒルは常に日本と西洋のミックスでしたから、今回はそのバランスを均等にしたかったのです」

Tucker氏は日本ホラーの特徴についても言及しています。「日本のホラーはスロウバーン(じわじわ型)です。美しいけれど不穏なアートワーク。サイレントヒルの本質は『不快感』だと考えることは、私たちにとって難しくありませんでした」

1960年代日本の再現には、徹底した歴史考証が行われました。開発陣によると、台湾のチームと日本のKonamiチームが緊密に連携し、当時の家具やデザインについて調査を実施。数十点の文献を参照したほか、ゲームの舞台モデルとなった岐阜県下呂市金山の市役所から協力を得て、当時の写真を入手したとのことです。 

竜騎士07のビジョン、「一切カットなし」で実現

本作のマルチエンディングは、『ひぐらしのなく頃に』で知られる竜騎士07氏のビジョンを完全に実現するために活用されました。開発陣は「当初予定していたエンディングはすべて実装しました。カットしたものは一切ありません」と明言。すべてのエンディングを達成することが体験の重要な一部であり、過去作と比べて周回プレイ要素に重点を置いたと説明しています。 

周回プレイでは、追加シーン、ノート、セリフの変化などが発生し、物語の新たな側面が明らかになります。複雑な物語を真に理解するためには、複数回のプレイが意図されているとのことです。

出典

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