2025年12月3日、電撃オンラインは『サイレントヒルf』の開発者インタビュー前半を公開しました。竜騎士07氏、岡本基氏ら開発陣がタイトル”f”の意味や没になった教団案、日本神話への転換などを語っています。本記事には物語の重大なネタバレが含まれます。
“f”の意味は4〜5種類──開発陣が認めた正解と、意外だったファン予想
タイトルの”f”について、竜騎士07氏は「私たちが想定した意味は4つぐらい」、Al Yang氏は「4つか5つぐらい」と回答しました。発売後にはプレイヤーの間で”f”の意味について多様な解釈が提示されましたが、開発側が意図した意味は4〜5種類に収まると説明しています。
“f”というタイトルは岡本氏の発案です。岡本氏は「『何の”f”だろう』というところから入る、仕掛けのあるタイトルにした」と経緯を説明しました。プレイすれば各自がひらめくものの、皆で一斉に答え合わせをするとかなりバラバラになるだろうとも語り、「多くの皆さんが思っている”f”はちゃんと含まれている」と付け加えています。
ファンの予想で意外だった単語を尋ねると、Al Yang氏は「ファイター(fighter)」を挙げて笑いました。岡本氏も「鉄パイプの形が”f”だという予想も面白かった」と振り返っています。
1周目エンドの「20代女性」は雛子──高校生姿で描かれた理由
本作の1周目エンディングでは、警察無線で「20代女性」という言葉が流れます。この描写についてインタビュアーが尋ねると、竜騎士07氏は「これはもう答えちゃっていい」と前置きしたうえで、「雛子はあの時点で精神世界では高校生の姿で描かれているけれども、実際は20代の女性である」と明言しました。
なぜ精神世界では高校生の姿なのか。竜騎士07氏は「人生の選択の大きな節目、自分の中で感じる分岐路、よくも悪くも葛藤があった頃が彼女にとっては高校生だった」と説明しています。竜騎士07氏のこの説明から、雛子の内面で特に大きな意味を持つ時期が、あの高校生の姿として投影されていると考えられます。
では、嫁入りを迷う側の雛子と、嫁入りを決めた側の雛子が、どちらも高校生姿で描かれているのはなぜか。この点について竜騎士07氏は「あの頃に雛子の内側に色々あって、ふと2つの自分が同時に存在したというような風に受け取ってもらうのもひとつの見方ではないか」と述べつつ、「ここは踏み込みにくい」として詳細は語りませんでした。
精神世界と現実の境界が曖昧なのは『サイレントヒル』シリーズの特徴ですが、竜騎士07氏は「たとえ全部が幻想だったとしても、その幻想が生まれるためには現実に対応する出来事があった」と語りました。自身のファン向けの言い回しとして「”猫箱”の中身を内側からの光で透かして見るように想像してほしい」とも述べています。
没になった「教団が暗躍する日本版サイレントヒル」──稲荷信仰への転換
初期の構想段階では、従来の『サイレントヒル』シリーズと同様に、日本にいる教団が暗躍するアイデアがあったと竜騎士07氏は明かしました。「文字通り日本版『サイレントヒル』のような案だった」と振り返っています。
しかし岡本氏との議論を経て、竜騎士07氏は方針を大きく転換しました。「日本を舞台にしている以上、日本でしか書けないものを書くべきだと考えた」と語り、稲荷信仰をはじめとする日本神話を本格的に取り込む決意をしたといいます。海外のファンでも神話を咀嚼してくれるはずだという信頼があったとも述べました。
岡本氏は宗教観の違いにも言及しました。従来シリーズはキリスト教圏の「絶対神がいる」宗教観がベースにあったのに対し、本作は八百万の神という多神教の世界観で作られています。「西洋の神と東洋の神は違う。東洋の神の宗教観で作っていることが”f”の特徴」と岡本氏は説明しました。
「心の痛みを具象化する」──コナミ初のCERO Zに込めた表現意図
本作には”獣の腕”の儀式シーンなど、踏み込んだ描写が含まれています。竜騎士07氏はこれについて「『サイレントヒル』シリーズの一番の表現は、心の痛みを具象化できる世界だ」と持論を語りました。心の痛みは人によって受け取り方が異なりますが、『サイレントヒル』の世界では具象化することで誰にでも伝わるように描けるといいます。
雛子の悩みや痛みを表現するには「このぐらいの痛みが必要」と強く提案し、審査機関にも「マイルドな表現や逃げた表現では彼女たちの痛みが伝わらない」と訴えたと竜騎士07氏は振り返りました。
岡本氏によると、コナミとしてCERO Zレーティングのタイトルは本作が初めてです。踏み込んだ表現が本作において重要だという認識のもと、社内でも理解を得て実現したと説明しています。




