『Ghost of Yōtei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』は、Sucker Punch Productionsが開発したオープンワールドアクションゲームで、『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』の続編にあたります。このゲームでは、新しい主人公「篤」を中心に、封建時代の日本を舞台にした復讐の物語が描かれます。開発ディレクターのNate Fox氏とJason Connell氏へのインタビューから、オープンワールドのデザインや前作からの変更点が明らかになりました。この記事では、その内容をもとにゲームの特徴を詳しく解説します。
新主人公篤と境井仁からの変化
『ゴースト・オブ・ヨウテイ』では、前作の主人公「境井仁」は登場せず、新たなキャラクター「篤」が主人公となります。篤は、壊滅的な戦士集団「羊蹄六人衆」を追い、復讐を果たす物語が描かれます。Nate Fox氏は、境井仁の物語を尊重しつつ、新しいキャラクターを通じてプレイヤーに新鮮な体験を提供したいと語っています。篤の物語は多くの意外な展開が待っており、封建時代の日本での「ゴースト」という存在について新しい解釈を提案しています。
前作からの移行は、開発チームの意欲を反映しています。Sucker Punchは、境井仁の名誉を守りつつ「ゴースト」になる過程を描き終えた後、全く新しい時代を舞台にしたストーリーを作りました。これにより、プレイヤーはまったく新しいキャラクターと世界観に没入できます。舞台は1603年の北海道で、前作の対馬とは異なる風景が広がります。この変更により、シリーズにさらなるバリエーションが加わりました。
過去と現在を行き来する「記憶」システム
本作の革新的な要素の一つが、篤の子供時代の過去へと瞬時に切り替えることができる「記憶」システムです。Nate Fox氏によると、特定の場所でボタンを押すことで、若き篤として過去のその場所を探索できます。プレイヤーは過去と現在を自由に行き来することで、場所の変化を観察したり、篤が両親を失った経験を追体験したりすることができます。
この機能は、PlayStation 5のパワフルな性能によって実現しました。Jason Connell氏は、「PlayStation 5のおかげで、この過去と現在を切り替えることができるのです」と述べ、ロード時間をほとんど感じさせずにシームレスな体験を提供することを可能にしていると語っています。
オープンワールドの進化と物語の両立
『ゴースト・オブ・ヨウテイ』のオープンワールド設計は、前作の反省を元に進化しています。前作では地図に表示された多数のクエストマーカーが問題視されたこともありましたが、本作ではプレイヤー自身の探索が大切にされています。Jason Connell氏は、北海道の風景に合わせてゲームの自由度を広げたと話しており、プレイヤーは風の流れを頼りに進むか、好奇心を持って別の場所に向かうかを自由に選べます。
具体的な変化として、探索を通じて次の目標を発見する仕組みが強化されています。例えば、馬に乗って広がる風景を眺め、視界の隅に気になるものを見つけたら、それに向かって自由に進むことができます。このアプローチは、フロム・ソフトウェアのゲームのように完全にガイド無しではありませんが、プレイヤーの自由度を大事にしています。
また、『Ghost of Tsushima』の象徴的なナビゲーションシステムである「風の導き」も、蝦夷地の広大な世界に合わせて進化しています。Jason Connell氏によると、本作の風は、巨大な障害物の周りを誘導するシステムが追加され、より広大な世界での探索体験が向上しています。
さらに、篤が背中に背負っている「三味線」も、探索の新たな要素として導入されます。特定の曲を学ぶことで、特定の場所へと導かれるといった、音によるナビゲーションが追加され、ゲーム世界への没入感を高める工夫が凝らされています。
『Ghost of Yōtei』では、前作以上に探索の自由度が高まっていますが、物語は明確な起承転結を持つ構造で進行し、主人公・篤の成長が描かれます。プレイヤーは狩りの対象である6人のターゲットを任意の順番で追うことはできませんが、ゲームの序盤では、どのターゲットを先に追うかを選択できる自由が与えられます。例えば、忍者や雪をテーマにしたエリア、城や火の武器に関連するエリアなどがあり、各エリアの選択がその後の展開に影響を与えます。このように、ゲーム全体としては一本道の物語でありながらも、プレイヤーの選択と自由な探索が両立する設計が目指されています。
ゲームの長さは前作と同じくらいですが、アクティビティの種類が増え、プレイスタイルによって所要時間が変わります。ストーリーはそのままに、自由な体験を提供するバランスが開発の核心です。
PS5専用としての特徴とDualSenseの活用
『ゴースト・オブ・ヨウテイ』は、PlayStation 5専用タイトルとして開発されており、ハードウェアの性能を最大限に活かしています。Nate Fox氏は、DualSenseコントローラーのハプティクスフィードバックやアダプティブトリガーがゲームの没入感を高めると述べています。前作のPS5版で得た経験を元に、素早いロード時間やコントローラー機能を最大限に活用した設計がされています。これにより、戦闘や探索がよりリアルに感じられます。
PlayStation 5の性能を最大限に活用し、グラフィック面でも大幅な進化を遂げています。Jason Connell氏は、改善点として以下の点を挙げました。
- 視界の拡張: 遠くの山々がより壮大に感じられるように。
- テレインのテッセレーション: 地形の描写がより高精細に。
- 遠景の高品質レンダリング: 遠くの景色もこれまで以上に高精細に描画される。
- 局所的なボリュームフォグ: 特定の場所に発生する霧が、よりリアルに表現される。
- 低層雲の改善: 空の表現が豊かに。
- 肌と髪のレンダリング改善: キャラクターの表現がより自然に。
- オーロラの表現: ゲームの世界に幻想的な光景が追加される。
前作で高く評価されたファストトラベルの高速性も健在です。Nate Fox氏は、「超高速です」と断言しました。
また、PlayStation 5 Pro対応が予定されており、グラフィックスやパフォーマンスの向上が期待されています。限定エディションのPS5本体やDualSenseコントローラーも発表され、篤のシルエットがデザインされています。
文化的敬意とアイヌ文化の表現
ゲームの舞台が北海道であるため、アイヌ文化の表現には細心の注意が払われています。Nate Fox氏は、歴史的な正確さを重視しつつも、フィクションとして創作していることを強調しています。ソニーの東京チームやアイヌ文化の専門家をコンサルタントとして迎え、スクリプトやゲーム内容をレビューしています。この取り組みにより、アイヌの人々の文化を敬意を持って再現しています。
その他の注目ポイント
映画監督コラボモード
映画監督コラボモード 前作の「黒澤明モード」に続き、『ゴースト・オブ・ヨウテイ』では、日本の著名な映画監督である三池崇史氏と渡辺信一郎氏とのコラボレーションモードが新たに実装されます。
『Ghost of Yōtei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』黒澤モードを踏襲。さらに、『十三人の刺客』三池崇史監督と『サムライチャンプルー』渡辺信一郎監督に敬意を払った2つの新モードも搭載へ。特徴は下記の通り。… pic.twitter.com/rb0EXunTXn
— ゲームのはなし (@gamenohanashi) July 10, 2025
『Ghost of Yōtei』では、前作で好評だった「黒澤明モード」に加え、新たに日本の著名な映画監督である三池崇史氏とアニメ監督の渡辺信一郎氏とのコラボレーションによる特別なゲームモードが実装されます。これらのモードは、ゲームの視覚や聴覚の雰囲気を大きく変え、それぞれの監督の作品世界を体験できるのが特徴です。
三池崇史モード(MIIKE MODE)
- 概要: 映画監督の三池崇史氏(代表作に『十三人の刺客』など)にインスパイアされたモードです。
- 特徴:
- 戦闘中のカメラワーク: 戦闘中にカメラが主人公により接近し、緊迫感と臨場感が増します。
- 血や土の表現: 血しぶきや土の飛び散る描写が強調され、より生々しく、グラフィックな戦闘体験が提供されます。
- 影響: 三池監督の作品が持つ、荒々しく暴力的な美学や、緊迫した雰囲気がゲームプレイに反映されています。Sucker Punchはこのモードを通じて、『十三人の刺客』が『Ghost』シリーズ全体の主要な参考作品の一つであるという影響を表現しています。
渡辺信一郎モード(WATANABE MODE)
- 概要: アニメ監督の渡辺信一郎氏(代表作に『サムライチャンプルー』、『カウボーイビバップ』など)にインスパイアされたモードです。
- 特徴:
- Lo-Fiサウンドトラック: ゲーム内のBGMが、渡辺監督の作品(特に『サムライチャンプルー』)で象徴的なLo-Fiヒップホップ調の音楽に変わります。探索中も戦闘中もこの音楽が流れ、独特のチルな雰囲気を味わえます。
- 雰囲気: 従来の侍ゲームの緊張感とは異なり、リラックスした、瞑想的な旅の感覚を提供します。美しい蝦夷地の風景と融合し、まるでアニメのワンシーンを操作しているかのような没入感を生み出します。
- コラボレーション: Sucker Punchは渡辺監督と直接連携し、このモードのためにオリジナルのLo-Fiトラックを制作しています。
これらのモードは、プレイヤーがいつでもオン/オフを切り替えることができ、気分や好みに合わせてゲーム体験をパーソナライズできる点が魅力です。
三池監督は、ゲーム内の刀装「三池」に自身の名を冠するだけでなく、監督自らが名付けた特別な刀装も登場します。Sucker Punchは、三池監督の代表作である『十三人の刺客』を『Ghost』シリーズ全体の主要な参考作品の一つとしており、その影響は本作の戦闘スタイルにも見て取れます。
渡辺監督は、そのアニメ作品で知られ、特に近年公開された「ラザロ」は開発チームに大きな影響を与えたとのことです。Jason Connell氏は「彼も私たちのゲームについて耳にしており、私たちが示したいものとの素晴らしい重なり合いがあり、とても興奮しました」と語り、両監督とのコラボレーションがゲームに深みを与えていると強調しました。
篤の相棒は「エゾオオカミ」
篤の冒険に影のように付き添うオオカミは、野生の動物であり、呼ばれてすぐに来る犬のような存在ではありません。Nate Fox氏によると、オオカミは篤の主要な動物の仲間であり、荒野の象徴です。また、蝦夷地には様々な種類の動物が生息しており、プレイヤーは篤を通じて、それらと触れ合うことができるとのことです。
ちなみに、インターネット上では「オオカミは仁(Jin Sakai)の生まれ変わりではないか」という憶測が流れていますが、Jason Connell氏は笑いながら「ファンは本当にクリエイティブですね」とコメントしました。
利便性を追求した野営地システム
本作では、探索中に特定の商人を呼び出すことができる野営地システムが導入されます。プレイヤーは、例えば弓のアップグレードに必要なアイテムが揃っている場合でも、いちいち町に戻る必要がなく、キャンプメニューから商人を呼び出すことで、その場でアップグレードを完了できます。
これにより、プレイヤーは探索の没入感を損なうことなく、必要な時に必要なサービスを受けられるようになります。Jason Connell氏は、「ファストトラベルは速くて便利ですが、このシステムは、プレイヤーがその場にとどまり、アップグレードを行い、料理をして恩恵を受け、そしてすぐに旅を続けられるようにするためのものです」と説明しました。
『ゴースト・オブ・ヨウテイ』は2025年10月2日にPlayStation 5専用で発売予定です。
情報源
- Ghost of Yotei directors talk open world philosophy and moving on from Jin Sakai | VGC
- Ghost Of Yōtei Directors Share Philosophy On Balancing Freedom With Story | Game Informer
- I asked Ghost of Yotei’s creative directors all of my burning questions | GamesRadar
- Ghost of Yotei Director Reveals Efforts to Respectfully Portray the Ainu Indigenous People of Japan | IGN
- Cultural lessons for Ghost of Yōtei | PlayStation.Blog
- Ghost of Yōtei – Games | PlayStation
- Ghost of Yōtei comes to PlayStation 5 on October 2 | PlayStation.Blog





