『サイレントヒル f』の戦闘が「ソウルライク」かどうかをめぐってファンの間で議論が続いています。こうした中、開発者はIGNのインタビューで「ソウルライクという呼び方は不誠実だ」と不快感を示し、明確に否定しました。本記事では、その発言内容と誤解が広がった背景、そして開発陣が本作で重視する「ホラー体験」についてまとめます。
開発者「ソウルライクと呼ぶのは不誠実」
IGNのインタビューで、プロデューサーの岡本基氏は『サイレントヒル f』の戦闘に対する「ソウルライク」という評価を否定しました。
岡本氏は次のように語っています。
「正直に言って、ソウルライクと呼ぶのは少し不誠実です。スタミナメーターや回避があるだけで、すぐにソウルライクと決めつけられるのは違います。これらの要素は昔の『サイレントヒル』にもありました。」
具体的には『サイレントヒル4』にはチャージ攻撃があり、今回のフォーカスメーター(精神力ゲージ)に近い仕組みだと説明。また『サイレントヒル3』にはスタミナが存在します。岡本氏は「こうした仕組みはアクションホラーの伝統であり、新しいものではありません」と強調しました。

新システム「集中モード」の位置づけ
岡本氏は新システム「フォーカスモード(集中状態)」についても詳しく語っています。ゲージ類の中には“精神力”というものがあり、これを消費することで「集中状態」に入ることができます。集中状態になると、カウンター攻撃の受付時間を延長しつつ、敵を大きくひるませる強力な溜め攻撃につなげられる仕組みです。
岡本氏はこれを「サイレントヒル4のチャージ攻撃メーターに近い仕組み」と説明しており、完全な新要素ではなく過去作からの延長であることを強調しました。つまり、見た目にはソウルライク的に映っても、そのルーツはサイレントヒルシリーズにあると主張しています。
なぜソウルライクと誤解されたのか
誤解が広がった背景には、大きく3つの要因があります。
まず、戦闘システムの見た目の類似です。
IGNのプレビューやGamesRadar+の試遊レポートでは、回避(○ボタン)、カウンター、パリィなどが紹介されました。これらはタイミング重視のアクションであり、一見すると『ダークソウル』や『SEKIRO』に近い印象を与えました。
次に、ファンの心理的な不安です。
長年シリーズを追ってきたファンの中には「サイレントヒルが戦闘主体のゲームになってしまうのでは」という懸念がありました。パリィやスタミナといった要素が強調されると、「雰囲気や恐怖演出が軽視されるのではないか」と受け止める人もおり、この不安が議論を一層広げることになりました。
最後に、スタミナ管理という要素の誤解です。
スタミナや行動制約は昔からアクションやRPGに存在していました。ただし、それをゲームデザインの中心に据え、ジャンル的な特徴として強く印象づけたのは『デモンズソウル』(2009年)でした。そのため現在では、スタミナや回避といった仕組みがあるだけで「ソウルライク」と見なされがちです。
開発者が「ソウルライクではない」と明確に否定したのは、こうした見かけの類似や歴史的な誤解、そしてファンの不安に対して、サイレントヒルがあくまで“アクションホラー”であることを示すためでした。
開発陣の意図:若い世代とホラー体験の両立
GamesRadar+によれば、コナミは「若い世代で高難度アクションが人気を集めている」と分析しています。そこで本作では、そうした世代の嗜好に応える形で一部の戦闘要素を強化しました。ただし開発陣は、従来作と同じく“恐怖体験”を最重要視しており、戦闘の変化によってホラーの本質が損なわれないよう配慮しています。
また岡本氏は「コンバットについて色々と意見を頂いているが、ストーリーモードを選べば従来のサイレントヒルに近い体験で楽しめます」とコメントしており、長くシリーズを愛し支えてきたファンのために物語への没入も軽視していないことが分かります。

誤解とラベリング問題
『サイレントヒル f』をめぐる今回の議論は、この作品だけの問題ではありません。新しい仕組みを導入するたびに「これは別ジャンルではないか」と議論が起こるのは、ゲーム業界全体が抱える構造的なテーマです。
スタミナや回避のような要素は昔から存在していたにもかかわらず、特定の作品の成功によって「ジャンルの特徴」と見なされてしまう。その結果、作品が本来目指す体験よりも、安易なラベル付けが先行してしまう危険があります。
では、ジャンルの枠組みと新しい試みをどう両立させるのか。そして、ラベルではなくプレイヤーが実際に感じる体験をどう評価していくのか。『サイレントヒル f』の発売後にファンが下す判断は、こうした業界全体の問いに対するひとつの答えとなるでしょう。
『サイレントヒル f』は、PS5/Xbox Sereis/Steam向けに2025年9月25日に発売予定です。ゲーム内容の詳細については、『サイレントヒル f』公式サイトを御覧ください。




