『ドラクエ7 リイマジンド』は単なる時短版ではない――開発者が語る「残すべき物語」の選定基準

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スクウェア・エニックスが、2026年2月5日に発売を予定している『ドラゴンクエストVII リイマジンド』について、そのシナリオ再構築の思想を明らかにしました。100時間を超える長大な物語を現代向けに効率化するにあたり、開発陣が重視したのは「何を削るか」ではなく「何を残すべきか」という視点でした。PS5、Xbox Series X|S、Switch 2、Switch、PC向けに発売される本作では、ロデューサーの市川毅氏により、プレイヤーの選択次第で全く新しい結末を迎えることが明言されています。

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なぜ再びリメイク? 3DS版とは異なる「再創造」への挑戦

2001年に発売されたオリジナル版から数え、本作は2度目のリメイクとなります。2016年に発売されたニンテンドー3DS版は、ビジュアル面の強化が中心の比較的忠実なリメイクでした。しかし『リイマジンド』と銘打たれた今回は、100時間以上にも及ぶ原作のプレイ体験そのものに踏み込み、「よりプレイしやすくする」という、物語の構造自体を現代向けに最適化する「再創造」への挑戦となります。

開発の原点は「何を削るか」ではなく「何を残すか」

本作のリードシナリオライターを務めるたかぎさやか氏(※漢字表記不明)は、Game Informerのインタビューに対し、開発が「どの部分を削除するかという議論は積極的には行わなかった」と語っています。開発チームが最初に行ったのは、その逆の発想、つまり「リイマジンド版にどの物語を残したいか」を徹底的に議論することでした。このアプローチからは、単なる時間短縮を目的としたものではないことがうかがえます。

この開発姿勢の背景には、原作への深い敬意があります。たかぎ氏は、物語の変更は原作の素晴らしさを最大限に引き出すためのものであり、ゼロから作り直す意図はなかったと述べています。実際に、グラフィックなどが一から作り直される一方で、シナリオだけは原作を一つ一つのピースに分解し、再び組み上げる「再構築」という特別な手法が取られました。物語は、このリメイクプロジェクトにおいて特に尊重される要素として扱われています。

パズルのような「再構築」の緻密なプロセス

では、具体的にどのように物語は再構築されたのでしょうか。たかぎ氏はその過程を「パズルを組むようなものだった」と表現します。まず物語全体の概要から着手し、イベントの順序を入れ替え、セリフを書き直し、プロットを再形成していきました。一つの変更が次の変更を必要とする「連鎖的な調整」の連続であり、緻密な作業だったことが示唆されています。

この再構築にあたり、残すべき物語の基準として、たかぎ氏が挙げた核となる要素が2つありました。1つ目は、主人公たちが大きな逆境に立ち向かう姿や、そこに描かれる登場人物たちの「人間性」という、作品の根幹をなすテーマ性です。そしてもう1つの基準が、より感覚的な「記憶に残る体験」でした。開発チームは社内のスタッフから広く意見を募り、「子供の頃は理解できなかったが、なぜか強烈に記憶に残っている」といった、理屈を超えてプレイヤーの心に刻まれた場面も、残すべき要素としてリストアップされました。

プレイヤーの「選択」が物語を変える

本作のシナリオにおける大きな変更点の一つが、プレイヤーに与えられる「選択の自由」です。オリジナル版も、中盤以降の一部区間で攻略の順序を選べる箇所がありましたが、全体としては一本道に近い構成でした。『リイマジンド』では、次に向かうべき島をプレイヤーが選べるようになり、この「選択」がゲームの基本的な進行システムとして拡張されているようです。これにより、プレイヤーごとに異なる冒険の体験が生まれることになります。

興味深いことに、この「選択肢」の導入が、シナリオの効率化にも繋がっています。攻略順が固定されていたオリジナル版の前提が崩れたことで、特定の順序でしか意味をなさなかった一部のイベントは、新しいシステムでは論理的に成立しなくなりました。そうしたイベントは優先順位が下げられ、結果的に再構築の過程で整理されることになったのです。こうした調整により、自由な攻略順でも物語全体の整合性を取りやすくなったと考えられます。

さらに、プロデューサーの市川毅氏は、このプレイヤーの選択が物語の結末に直接影響することを明言しています。 市川氏は「プレイヤーの選択次第で、過去のバージョンでは見られなかった新しい結末にたどり着く」と語っており、これにより過去作をプレイ済みのユーザーでも「新鮮な物語体験」ができるようになるとのことです。リプレイの楽しみも、より深まることになりそうです。

初動プレイも快適に。具体的な改善点と発売日

物語の構造だけでなく、ゲームプレイの快適性も向上します。オリジナル版でしばしば指摘された「最初の戦闘にたどり着くまでの時間」については、3DS版でもある程度の改善がなされていました。しかし本作では、プロデューサーの市川毅氏が「大幅に短縮される」と改めて明言しており、より根本的なテンポアップが図られるようです。これにより、さらにスムーズにゲームを始められるようになる見込みです。

『ドラゴンクエストVII リイマジンド』は、2026年2月5日にPlayStation 5、Xbox Series X|S、Switch 2、Switch、そしてPC向けに発売予定です。原作の核心を残しつつ、新たな体験を提供する「再創造」された冒険の始まりを、今から心待ちにしたいところです。

出典

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