ドラクエの父・堀井雄二氏、新作構想を明かす「AIパートナーと捜査するミステリーゲーム」――71歳のレジェンドが見据えるゲームの未来

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『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親として知られるゲームクリエイターの堀井雄二氏が、2025年11月14日に韓国で開催されたゲームショウ「G-STAR 2025」のカンファレンスに登壇しました。堀井氏は講演の中で、プレイヤーの質問に自然言語で応答するAIを相棒とし、共に犯人を探すミステリーゲームの構想を明かしました。71歳を迎えた今も、最新技術を取り入れた新たなゲーム制作への意欲を示しました。

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71歳のレジェンドが語った「AIが相棒のゲーム」

現地時間11月14日、韓国・釜山で開催中の「G-STAR 2025」にて、ゲームデザイナーの堀井雄二氏が「『ドラゴンクエスト』の創造と遺産」と題した講演を行いました。長年にわたり日本のRPGを牽引してきた同氏は、シリーズの誕生秘話から最新のHD-2Dリメイクプロジェクトまで、自身のキャリアを振り返りました。その中で特に聴衆の注目を集めたのが、AIを活用した新たなゲームの構想でした。

堀井氏は「プレイヤーの質問に自然に答えてくれるAIの捜査パートナーと一緒に、犯人を探すミステリーゲームを作ってみたい」と具体的なアイデアを披露しました。71歳という年齢を感じさせない、AIやVRといった最新技術への強い関心を示す発言であり、同氏の尽きない創作意欲を印象付けました。

布石はあったか?『AIポートピア』が示した可能性

堀井氏が語った「対話を通じて捜査を進めるミステリー」という構想のルーツは、氏のキャリアの原点である1983年のアドベンチャーゲーム『ポートピア連続殺人事件』にあります。同作は、プレイヤーが相棒に指示を出しながら捜査を進めるというシステムで、後のゲームに大きな影響を与えました。

そしてこの「対話型ミステリー」の現代化は、すでに一度試みられています。スクウェア・エニックスは2023年4月、AI技術のテックプレビューとして『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』をSteamで無料公開しました。1983年のPC版『ポートピア連続殺人事件』を題材に、自然言語処理(NLP)を用いてプレイヤーのテキスト入力を解釈し、キーボードや音声で自由に文章を入力しながら相棒の刑事に指示を出して捜査を進めることを目指した、実験的なソフトウェアでした。

この技術デモは、自然言語処理を活用した「会話しながら進める捜査」の可能性を示した一方で、多くの課題も浮き彫りになりました。安全性への配慮から、当初想定されていた自然言語生成(NLG)による雑談会話機能は公開版では削除されており、その結果としてプレイヤーの入力にうまく反応できず、不自然で定型的な返答が目立つといった評価も見られます。

今回の堀井氏の「AI捜査パートナー」という発言は、こうした先行事例を踏まえたうえで、単なる対話インターフェースにとどまらず、プレイヤーの意図を汲み取りつつキャラクター性も備えた「相棒」として機能するAIを目指す、次なるステップを示唆していると解釈できます。

ゲーム開発者初の「旭日小綬章」受章にも言及

講演では、堀井氏が先日、日本のゲーム開発者として初めて「旭日小綬章(きょくじつしょうじゅしょう)」を受章したことについても触れられました。旭日章は、国家または公共に対し功労のあった者に授与される日本の勲章です。この受章は、日本のゲームカルチャーが社会的に認められた象徴的な出来事として、大きな話題となりました。

堀井氏は受章について、「かつてゲームは世間から冷たい視線を向けられることもあったが、ゲームデザイナーとして国から表彰され、感無量です」と心境を語りました。また、講演の最後には、韓国のゲーム開発者を目指す若者たちに向けてメッセージを送りました。「頭の中のアイデアは誰でも傑作。それを外に出して形にすることが重要です。小さなことから始めて、少しずつ世界を広げていってほしい」と、自身の経験を交えながら温かいエールを送りました。

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