アクアプラスの下川直哉代表取締役は、電ファミニコゲーマーのインタビューで『ToHeart』の続編企画が途中まで進みながら中断した経緯を明かした。2025年8月にユークスの子会社となったアクアプラスが、自社作品の質にどう向き合ってきたのかを、3つの具体的なエピソードで語っている。同インタビューにはユークスの谷口行規代表取締役社長も同席し、両社の協業がもたらす技術面での変化にも触れた。
「面白くなる?」——『ToHeart』続編が止まった理由
『ToHeart』続編を望むファンの声に応えようと、企画は途中まで進んでいた。しかし下川氏の中に「これ、面白くなる?」という疑問が浮かび、一度中断したという。
「確かに、『ToHeart』の続編についての要望はあります。そういった声にお応えしたくて、途中まで企画が進んだこともあったんですよ。でもそこで「これ、面白くなる?」という疑問が浮かび一度中断しました。」 ——下川直哉、アクアプラス代表取締役 / 電ファミニコゲーマーより
『ToHeart』は『1』と『2』で多くのキャラクターを送り出してきた。続編を作るなら、過去作とネタが被らず妥協のない面白さを新キャラの人数分そろえる必要がある。制服の色がピンクという作品特有の縛りもあり、ビジュアル面での差別化も難しいと下川氏は説明している。ただし、やりたい気持ちはあるとも述べており、完全な打ち切りではない。
シナリオに2〜3年——『偽りの仮面』から続く制作体制
アクアプラスがシナリオにかける時間は長い。複数のライターが2〜3年をかけて1本の作品を仕上げる体制をとっている。
「ひとつの作品のシナリオが出来上がるまでに1年ではすまなくて、2年~3年ほどかかることもあります。それを無駄とは思っていないですし、シナリオを会社の武器とするためには必要なことなんです。」 ——下川直哉、アクアプラス代表取締役 / 電ファミニコゲーマーより
毎週ミーティングを開き、書いたシナリオを読み上げて、分かりにくくないか、説明が多すぎないかを確認する。この方式は『うたわれるもの 偽りの仮面』から始まった。
下川氏は自社のRPG設計への反省にも触れている。『モノクロームメビウス』を出した際、「僕らの時代の面白かったRPG」と「今のRPG」のズレを痛感したという。「街に帰って補給する」システムは古いのかもしれない、装備変更時にダイアログで確認するくらいの親切さが必要なのかもしれない、といった気づきがあったと語った。
ユークスの技術で広がる選択肢——Switch 2対応から過去作移植まで
協業の成果はすでに形になり始めている。『うたわれるもの 白への道標』(2026年5月28日発売予定)は、当初Nintendo Switch 2への対応を予定していなかったが、ユークスに相談したことで実現にこぎつけた。シリーズ最新作にしてプロジェクトの最終作だ。
2015年に制作中止となり、2024年11月に開発再開が発表された『ジャスミン』も順調に進んでいる。シナリオは完成に近づいており、ノベルゲームのためパーツが揃えば組み上がりは早いと下川氏は述べている。
過去作の移植も検討されている。『ダンジョントラベラーズ』シリーズや『Routes -ルーツ-』、PS3版『ティアーズ・トゥ・ティアラ』の名前が挙がったが、具体的なタイトルや時期はまだ何も決まっていないという。谷口氏はノベルゲーム向けの新エンジンをユークスで開発する意向も示している。早いタイミングで作りたいとのことで、意向の段階ではあるが、制作費と効率の両面で助けになるという。
「完全に妄想」の新作構想と、その先
下川氏はシミュレーションRPG(SRPG)や『AQUAPAZZA』を発展させた格闘ゲームといった完全新作の構想にも触れたが、まだ相談もしておらず完全に妄想だと留保をつけている。AAAタイトルへの挑戦は谷口氏が目標として語ったものの、大きなパブリッシャーとの協力が必要だとしており、確定した計画ではない。
両社に共通しているのは、相手の持ち味を変えようとしない姿勢だ。谷口氏はインタビューで、ものづくりに関して強制をしないのがユークス創業からの方針だと述べている。技術のユークスとシナリオ・キャラクター・音楽のアクアプラスが、それぞれの強みを持ち寄る形で今後の展開が進む。
※本記事は電ファミニコゲーマーの報道をもとに、関連情報を加えて再構成しています。



