Prime Videoが人気アドベンチャーゲーム『Life is Strange』の実写ドラマ化を正式に発表しました。しかし、この発表を受けて原作ゲームのリードライター(主任脚本家)クリスチャン・ディヴァイン氏がSNSで制作プロセスから除外されていることを告発する事態となっています。Prime Videoは『Fallout』などゲーム原作コンテンツの映像化で実績を重ねており、今回の『Life is Strange』もその戦略的展開の重要な一環として位置づけられます。
原作クリエイター除外問題とファンの反応
クリスチャン・ディヴァイン氏の告発
原作ゲームのリードライター(主任脚本家)を務めたクリスチャン・ディヴァイン氏は、実写化発表に対して自身のXアカウントで次のように投稿しました
「The only people not involved are the creators」
(関与していないのはクリエイターだけです)
ディヴァイン氏は2015年にフランスのスタジオDontnod Entertainment(現Don’t Nod)で初作の開発を主導し、2019年の続編『Life is Strange 2』でも脚本を担当していました。
重要な点として、Amazon MGM Studiosの公式プレスリリースでは、原作の人気キャラクターであるマックスとクロエ、舞台となるアルカディア・ベイについて詳細に言及している一方で、これらを創造した開発スタジオDon’t Nodへの言及は見られません。
他の原作クリエイターからの反応
ディヴァイン氏以外の原作開発陣からも間接的な反応が見られています。Don’t Nodのエグゼクティブプロデューサーであるリュック・バガドースト氏は、自身のXアカウントを通じて以下のように投稿しました。
「Seeing the game created by @DONTNOD_Michel, @RaoulBarbet, Jean-Luc Cano, and our @DONTNOD_Ent team becoming a show is an incredible honor!」
この投稿では、原作ゲームの重要なクリエイターを具体的に挙げています。
- Michel Koch氏:Don’t Nodスタジオクリエイティブディレクター
- Raoul Barbet氏:『Life is Strange』ディレクター
- Jean-Luc Cano氏:ディヴァイン氏と共に脚本を担当
バガドースト氏の投稿は表面的には祝福メッセージですが、公式発表で原作クリエイターへの言及が皆無だった状況を受けて、意図的に原作開発陣の貢献を強調したものと解釈されています。なお、タグ付けされたKoch氏とBarbet氏は、現時点で実写化発表に対する公式コメントを発表していません。
ファンコミュニティの反応
Reddit上では、ディヴァイン氏の投稿をきっかけに様々な意見が飛び交っています。
原作者の参加を求める声では、「ストーリー重視のゲームを映像化するなら、原作の開発者が何らかの形で関わるべきだ。脚本を書かなくても、アドバイザーとして参加してほしい」という意見が見られます。
現実的な視点からは、「理想的には原作者と相談すべきだが、ハリウッドでは通常そうしないのが現実。原作者が関わらなくても、必ずしも失敗するとは限らない」との声もあります。
他作品との比較では、「『Fallout』のドラマも原作者は関わっていなかったと思うが、素晴らしい出来だった。同じAmazon MGM Studiosだから期待できるのでは」という楽観的な意見も出ています。
一方で、ファンの特性を分析する声として、「『Life is Strange』は何をやってもファンから批判される。このファンコミュニティは文句を言うのが早く、作品を過保護に扱う傾向がある。少しでもストーリーが変わると反発する」という冷静な指摘もありました。
Don’t Nodとスクウェア・エニックスの複雑な関係
今回の原作クリエイター排除問題の背景には、Don’t NodとSquare Enixの関係変化があります。
スクウェア・エニックスは、2017年の『Before the Storm』でDeck Nine Gamesとの協力を開始し、その後Don’t Nodが開発した『Life is Strange 2』のリリース後、シリーズの継続的な開発をDeck Nine Gamesに委ねるようになりました。
一方でDon’t Nodは、自社IPに注力する方針を選び、スクウェア・エニックスとの協力関係から段階的に離れ、自社出版による新規プロジェクトにシフトしました。
同社は2022年5月31日に「DON’T NOD」へと社名をリブランディングし、「型にはまらず、独自の道を選ぶ」という姿勢を強調しました。さらに2020年にはカナダ・モントリオールに子会社「Don’t Nod Montréal」を設立し、この拠点で『Life is Strange』の精神的後継作とされる『Lost Records: Bloom & Rage』を開発。Tape 1: Bloom が2025年2月18日、Tape 2: Rage が同年4月15日にそれぞれリリースされています。
スクウェア・エニックスは引き続き『Life is Strange』シリーズのIPを保有し、Deck Nine開発による新作を展開してきました。これらの作品は批評面や商業面で評価が分かれており、とりわけ『Double Exposure』(2024年)は「大きな損失」と報じられるなど、必ずしも安定した成果を上げているわけではありません。
このような経緯により、今回の映像化ではスクウェア・エニックスや外部スタジオが制作の中心となり、公式発表では原作開発スタジオの関与は示されていません。
Prime Videoによる正式発表と制作体制
発表概要とPrime Videoの戦略的背景
Prime Videoが『Life is Strange』の実写ドラマ化を正式に発表しました。Prime Videoはゲーム原作の映像化で実績を重ねており、『Fallout』シーズン2の制作が進行中であるほか、『Tomb Raider』の実写シリーズも制作が発表されるなど、ゲーム原作コンテンツのラインナップ拡充を戦略的に進めています。
制作体制と主要スタッフ
プロデュースはAmazon MGMスタジオが担当し、制作には原作ゲームの発売元であるスクウェア・エニックス、Story Kitchen、LuckyChap Entertainment(マーゴット・ロビー氏のプロダクション)、そしてショーランナー兼ヘッドライター(脚本統括)・製作総指揮を務めるチャーリー・コヴェル氏が共同で参加します。
コヴェル氏はドラマ『このサイテーな世界の終わり』(2017年)や『KAOS/カオス』(2024年)などで知られる脚本家です。
Story Kitchenは「Franchise Farming — ビデオゲームや他の『非伝統的』IPを映画やテレビに適応することを専門とする」企業として自らを位置づけており、ゲーム原作コンテンツの映像化に特化した制作会社です。
ゲーム適応特有の課題
選択肢システムの映像化問題
『Life is Strange』の大きな特徴の一つは、プレイヤーの選択によってストーリーが分岐する「choose-your-own-adventure-style」のゲームプレイです。ファンの間では、この要素を実写ドラマでどのように表現するかについて疑問の声が上がっています。
複数エンディングの処理
原作ゲームは複数のエンディングを持つため、実写化においてどのエンディングを採用するか、あるいは新たな結末を創作するかという課題も指摘されています。この点について、制作陣からの具体的な方針は現時点では発表されていません。
ドラマの内容と制作関係者のコメント
ストーリー概要
原作ゲームは2015年に配信され、世界的人気を博しました。実写ドラマは写真を学ぶ学生マックスが主人公で、親友クロエの危機をきっかけに時間を巻き戻す能力を手に入れ、二人で同級生の失踪事件を調査し、町の暗部に迫る物語が描かれます。
制作関係者の期待コメント
チャーリー・コヴェル氏(製作総指揮・脚本): 「Amazon MGMスタジオで『ライフ イズ ストレンジ』を実写ドラマ化できることは大変光栄です。私はこのゲームの大ファンで、すばらしいチームと協業できることを嬉しく思います。ゲームのファン、そして新しくドラマで同作に触れる視聴者の両方に、マックスとクロエの物語をお届けできることが待ち遠しいです」
Story Kitchen(ドミトリM・ジョンソン/マイク・ゴールドバーグ): 「『ライフ イズ ストレンジ』は単なるゲームではなく、”文化の指標”としての価値がある、と当社は信じていました。10年にわたる道のりを経て、すばらしいパートナーと共に、この長く愛されている物語を実写ドラマ化できることを光栄に思います」
スクウェア・エニックス(ジョン・ブルック/リー・シングルトン): 「長年多くのファンから『ライフ イズ ストレンジ』ドラマ化の要望が寄せられていた。Amazon MGMスタジオならば、同作の世界観を忠実かつ魅力的に映像化してくれると確信している」
現在判明している制作情報
- 配信プラットフォーム: Prime Video
- プロデュース: Amazon MGMスタジオ
- 制作参加: スクウェア・エニックス、Story Kitchen、LuckyChap Entertainment、チャーリー・コヴェル
- ショーランナー・ヘッドライター・製作総指揮:チャーリー・コヴェル
- 原作: Life is Strange(開発:Don’t Nod、販売:スクウェア・エニックス)
出典:gamesradar+




