ゲームクリエイターの桜井政博氏が、共同通信のインタビューで自身の創作動機について語っています。「星のカービィ」「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの生みの親として知られる桜井氏は、作りたいゲームがあるかと問われ、一般的なイメージとは異なる回答をしました。この発言の背景を見ていきます。
内発的動機だけがクリエイターの道ではない
クリエイターの動機といえば、どうしても作りたいものがあるという内なる衝動が語られがちです。しかし桜井氏は、記者から「これからどんなゲームを作ってみたいですか」と問われ、次のように答えています。
「基本的にありません」 ——共同通信インタビュー(47NEWS)より
依頼に応じてゲームを考え、作るスタイルだと桜井氏は説明しています。自分から作りたいとはあまり思わず、ゲームは遊んでいるのが一番楽しいとも述べました。依頼がなければ作らないかもしれない、とさえ語っています。
この発言は、30年以上にわたり世界的ヒット作を生み出してきた人物の言葉として注目に値します。企画の起点を需要や依頼に置く姿勢でも、第一線で活躍し続けられることを示す一例といえます。
冷めているのではなく、起点が異なる
誤解してはならないのは、桜井氏が創作に無関心なわけではないという点です。インタビューでは、興味がないわけでも冷めているわけでも一生懸命作らないわけでもないと、明確に補足しています。自身の姿勢をドライだと表現しつつも、情熱の欠如ではなく、情熱の起点が異なることを示しています。
自分の内側から湧き上がる衝動を出発点とするか、外部からの依頼や需要を出発点とするか――その違いであって、注ぐ力の総量が劣るわけではない。桜井氏の説明からは、そうした姿勢が読み取れます。
需要起点のプロフェッショナリズム
桜井氏は自身の動機を、次のように表現しています。
「需要があってそれを頑張って満たすというようなものに動機は近いと思います」 ——共同通信インタビュー(47NEWS)より
この言葉は、創作を自己表現ではなく課題解決として捉える視点を示唆しています。依頼があり、需要がある。それに応えることで価値を生む。フリーランスや受託制作に携わるクリエイターにとって、むしろ共感しやすい姿勢かもしれません。
きっかけは自分よりも人がどう思うかだ、とも桜井氏は語っています。他者の期待や需要を起点とし、そこに全力を注ぐ。この考え方は、作りたいものがなければクリエイター失格だという固定観念に対し、別の道筋を提示しているといえます。
幸福と動機のかたち
桜井氏は自身の人生について、ほとんどゲームとゲーム制作にささげたと振り返りつつ、自分は幸せだと思っていると述べています。
作りたいものがないことと、幸福に仕事を続けられることは矛盾しない――桜井氏の言葉は、動機のかたちが一つではないことを示唆しています。需要に応えるという姿勢もまた、充実したキャリアにつながりうる。30年以上の実績に裏打ちされた、説得力ある言葉です。
本稿で取り上げた発言は、学習漫画『まんがで知る人と仕事 桜井政博 ゲームで世界をもっと楽しく』(イースト・プレス刊)の刊行にあわせた共同通信のインタビューで語られたものです。桜井氏の仕事観やゲーム制作の裏側についてより詳しく知りたい方は、ぜひ元記事をご覧ください。



