人気ゲーム『Among Us』を手がけたInnerslothは、インディーゲームの開発資金を支援する部門「Outersloth」を運営している。このOuterslothが、ゲーム開発者向けカンファレンスGDC 2026の講演で、開発者と結んでいる契約の全文を公開した。あわせて、それぞれの条件がなぜそのように設計されているのか、その理由も説明された。
契約の中心にあるのは、売上をどう分け合うか(レベニューシェア)というルールだ。投資した資金を回収する(リクープする)までの期間は、Outerslothと開発者で売上を50対50に分ける。投資額を回収し終えたあとは、Outerslothの取り分は15%に下がる。また、契約はゲームの発売から7年で終了する固定制となっている。CEOのForest Willard氏は、50%という数字について「自分たちはサービスを提供しないのでマージンを上乗せする意味がない」という考え方にもとづいて決めたと明かしている。
「サービスを提供しないから、マージンを上乗せする意味がない」
Outerslothは一般的なパブリッシャーとは異なる。マーケティングや品質管理といったサービスの提供は契約に含まれていない。サービスを提供しない以上、その対価としての上乗せ分(マージン)を取る理由がない——というのがOuterslothの考え方だ。Willard氏はリクープ前50%の設計根拠について、次のように説明している。
「自分たちはサービスを提供していないので、マージンを上乗せする意味がない。『あなたにリスクを取っている』と言うとき、双方が何を賭けているかを分かっている。あなたがいなければゲームは作れない。私たちがいなければゲームは作れない。だから一緒にやるのであって、双方が同じ結果を望むべきなのだ」 ——Forest Willard氏(Outersloth CEO)、Game Developer報道より
つまり、Outerslothはお金を出し、開発者はゲームを作る。どちらが欠けてもゲームは完成しない対等な関係だからこそ、売上も半々に分けるという発想だ。
投資額を回収し終えたあとのレベニューシェアは15%に下がる。Willard氏はまた、業界全体に向けた提言として、パブリッシャーと開発者の間にあるリスクの偏りについても指摘している。
「パブリッシャーはポートフォリオ全体でリスクを分散できるが、開発者にはその1本しかない。それは重大なことだ。パブリッシャー側もそれを理解すべきだ」 ——Forest Willard氏、同講演より
パブリッシャーは複数のゲームに投資しているため、1本が失敗しても他の成功で補える。しかし開発者にとっては、そのゲームが唯一の収入源であることが多い。こうしたリスクの非対称性も、Outerslothが回収後の取り分を大きく引き下げている背景にあるとみられる。
契約期限は7年固定——「誰も他人の収入への永続的権利を持つべきではない」
Outerslothが設ける契約期限は、ゲームの発売から7年で終了する。Willard氏は「誰も他人の収入への永続的権利を持つべきではない」と述べており、この期限はタイトルが大ヒットした場合でも、売上が振るわなかった場合でも変わらないという。
Outerslothは特定のプラットフォーム(たとえばPC版)に対して資金を提供する場合であっても、すべてのプラットフォームを対象に含む契約を結ぶ。つまり、開発者が資金提供の対象ではないプラットフォーム(たとえば家庭用ゲーム機版)でもリリースした場合、Outerslothはそちらの売上からもレベニューシェアを受け取る仕組みになっている。また、パートナーとなった開発スタジオには、毎月の売上報告が義務づけられている。
一方で、開発に関するアドバイスや業界関係者の紹介、IndieBIといった支援サービスは、提供できる場合に任意で行うものであり、契約上の義務ではないとWillard氏は説明している。
設立以来の投資は24タイトル——損益分岐が持続の条件
Outerslothは2022年の設立以来、24のプロジェクトに対して合計19,161,040ドル(約29億円)を投資してきた。立ち上げ時に設定された予算は、5年間で2,500万ドル(約38億円)。応募に対する採択率は約1.4%で、業界平均をわずかに上回る水準とされる。
コミュニケーションディレクターのVictoria Tran氏によると、収支がプラスマイナスゼロ(損益分岐)を維持できれば、Outerslothは2027年以降もゲームへの資金提供を続ける意思があるという。ただし、これは無条件に続けるという宣言ではなく、あくまで損益分岐の維持が前提条件だ。
契約の全文を公開したこと自体にも、明確な狙いがある。Innerslothの公式ブログでは「業界の現状はしばしば、公開されている情報に基づいて形成される。だからこそ私たちの契約を公の場に投じることで、今後の議論を形づくる一助になればと考えている。透明性こそが鍵だ」と記されている。パブリッシング契約の全文を公開した例は業界でもきわめてまれで、GamesIndustry.bizは同様の先例として、2020年12月にインディーパブリッシャーRaw Furyが行った契約公開のみを挙げている。
※本記事はGame Developerの報道をもとに、関連情報を加えて再構成しています
出典
- Innersloth:The Outersloth Contract
- Game Developer:Outersloth shares contract terms and game funding lessons for sickos
- GamesIndustry.biz:Outersloth reveals its game funding agreement with developers




