Peak/R.E.P.O.の「friendslop」呼称──投資家が異議、「侮蔑的な響き」と「投資家向け資料での頻出」を懸念

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「friendslop」という言葉は、協力型インディーゲームの潮流を指すラベルとして広まる一方で、その根底には“slop(お粗末なもの)”というネガティブな語感がつきまといます。スウェーデンの投資ファンド「Behold Ventures」のBinni Erlingsson氏はLinkedInにて、この呼称が開発者の技能を貶めるだけでなく、ユーザーに対する見下しのニュアンスさえ帯びかねないと指摘しました。さらに同氏は、今後この言葉を「ピッチデックやカンファレンスで頻繁に目にするようになる」との見立てを示しています。

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「friendslop」呼称を投資家が問題視した理由

Steamで協力型インディーゲームが勢いを増すなか、「friendslop」という呼び方をどう評価するかで意見が分かれています。

発端は、スウェーデンの投資ファンドBehold VenturesのPrincipalであるBinni Erlingsson氏のLinkedIn投稿です。Erlingsson氏は、この言葉が今後、投資家向けの企画資料(ピッチデック)やカンファレンスで頻繁に使われるようになると予測したうえで、この呼び方が定着するのを防ぎたいと考えています。

同氏が問題にしているのは、ゲームの内容そのものではなく「slop」という言葉が持つニュアンスです。Erlingsson氏は、この言葉から「雑で、出来が悪く、ジャンク品のようなもの」という印象を受けると説明。開発者の技術を低く見積もるだけでなく、遊ぶユーザーを見下すような響きが含まれていることを危惧しています。

肯定的な受け止め:パブリッシャー側の視点

一方で、この言葉を前向きに捉える動きもあります。The Vergeは、『Peak』のパブリッシャーAggro CrabのコミュニティマネージャーPaige Wilson氏が、friend slopについて「最高の言葉だと思う」と語ったと伝えています。

Wilson氏は、もともとはネガティブな意図で生まれた言葉であることを認めつつも、「安く買えて、いつでも友達と気軽に遊べて、多少の粗さ(jank)も笑いに変えられる」という体験を表現するのに、この言葉は非常に的確だと評価しています。

なぜ「投資資料」での頻出が問題なのか

両者の意見の違いは、その言葉が「どこで使われるか」の違いにあります。パブリッシャーにとっては、話題性を作ったり認知度を高めたりするための便利な道具になります。しかし、投資家にとっては、資金調達の場で使われる「公的な言葉」になってしまうことが懸念材料です。

Erlingsson氏が、あえて「ピッチデック(投資家向けの企画資料)」や「カンファレンス」という言葉を持ち出した点は非常に示唆に富んでいます。もしこの用語が業界の共通語として定着してしまえば、それはゲームの面白さを伝える手段になる一方で、品質の低さや安価な価格帯といった「先入観」を植え付けるラベルとしての役割も果たしてしまうからです。

背景:Z世代/α世代と協力プレイの潮流

Erlingsson氏はさらに、この潮流自体は驚きではないとも述べています。Minecraftのアナリティクスや、Toca Bocaでのユーザー調査・市場調査・分析経験を引き合いに出し、Z世代/α世代がRoblox、Minecraft、Toca Boca Worldなどで「友人と遊び、笑い、創る」体験に親しんできたことを指摘しました。

こうした世代が大人になっても同じような体験を求めるという予測は、投資判断に直結する視点です。加えて、中国のユーザーの間でも「友人グループやパートナーと遊ぶco-op体験」を好む大きな潮流があると述べ、今後10年の鍵になるとしています。

低価格設定が人気の後押しに

価格の安さも、これらのゲームが支持される大きな要因です。Erlingsson氏自身、「レストランの食事やドリンク1杯程度の価格」と表現し、若い層にとってAAAより手が届きやすい点を強調しました。

Kotakuも、GameDiscoverCoによる推計として、2025年のSteam「新作」売上本数推計でPeakが2位、R.E.P.O.が1位に入ったと紹介し、両作の低価格(R.E.P.O.は$9.99、Peakは$7.99)にも言及しています。

ミームから業界の課題へ

この言葉の成り立ちを振り返ると、当初の「冗談」がすでに「業界の論争」へと変わったことがわかります。ネット上の流行をまとめる「Know Your Meme」によれば、friendslopという言葉は2025年3月ごろからX上で広まり始めました。当初は嘲笑されたり反発を招いたりもしましたが、次第に広く知られるようになります。

ミームとして生まれた言葉が投資家の関心事にまでなった事実は、この呼称がコミュニティ内の流行語にとどまらず、業界全体で無視できないテーマになりつつあることを示しています。

脚注(出典)

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