『メタルギア』や『デス・ストランディング』を生み出した世界的なゲームクリエイターの小島秀夫監督は、海外メディアSSENSEとのインタビューで、SFや中世モンスターを題材にした大作ゲームばかりが並ぶ現状を「ほとんど同じで退屈だ」と嘆きました。業界の創造性への懸念を率直に語り、革新の必要性を訴えています。
Summer Games Festを見て感じた「似たようなゲームばかり」
小島秀夫監督は、ゲーマー向けのイベント「Summer Games Fest」を視聴した際の印象について、「多くのトレーラーが、エイリアンの怪物や中世の怪物との戦いを含んでいるように感じた」と発言。
さらに小島氏は「ビジュアルやシステムでさえもほとんど同じ」と指摘し、「多くの人がこれを楽しんでいることは理解しているが、業界にとって本当に新しい何かを投入することが重要だ」と語りました。
大予算スタジオの「安全で退屈」な現状
小島氏は現在のゲーム業界について、他のクリエイティブ分野と同様に、最も興味深い作品はインディー開発者たちによって生み出されている一方で、大予算スタジオは「安全で非常に退屈なもの」を次々と生み出していると考えていると明かしました。
また、スタジオが次々と閉鎖され、肥大化し過ぎて高額になったブロックバスターゲームを制作している業界の状況についても懸念を示しています。
独立後の責任とビジネス視点
こうした見解は、小島監督のスタジオ運営にも影響を与えています。現在、自身のスタジオ「コジマプロダクション」を率いる小島氏は、コナミ時代との違いについても言及。「コナミ時代なら、失敗すれば会社を辞めれば済んだ。しかし今回は背後にスタジオ全体とスタッフがいるため、より大きな責任を感じている」と語っています。
なお、コナミは2025年8月28日、『メタルギア ソリッド3』のリメイク版『メタルギアソリッドΔ スネークイーター』をリリース予定ですが、同作をプレイするかという質問に対し、小島監督は笑いながら「いえ、プレイしません」と答えました。
“すべてを自分の中で”──小島秀夫のゲーム制作と作家性
小島監督は、自身のゲーム制作プロセスにも言及。多くのスタジオでは、シナリオライター、ゲームデザイナー、ディレクターが分業するのが一般的ですが、小島監督は「すべてを同時進行で自分の頭の中で処理する」と明かします。
「映画のように脚本→撮影→編集ではなく、ゲームはすべてが並列で動く。だからこそ、すべてを自分で考える人間じゃないと難しい」と述べ、このアプローチが一貫した世界観やトーンを生み出すと説明しました。
エゴ批判への視点──作家性の現れ
『メタルギアソリッドV』では、各章の冒頭に「Directed by Hideo Kojima」「Created by Hideo Kojima」といったクレジットが繰り返され、小島監督本人を救出するミッションも話題に。これらの演出が「エゴイスト」と一部で批判されましたが、小島監督は自身の成功は一貫したアイデアのおかげと考え、こうした演出も創作の一部だと話しています。
ミリタリーゲームへの助言経験──「銃の扱いを知らずに作るのは悲しい」
また小島監督は、ある新作ステルスゲームの助言で大手スタジオを訪れた際に、「ミリタリーゲームを作っている人たちが、おそらく銃の解体や射撃の方法を知らない」と感じたそうで、「それはちょっと残念だ」と述べました。
一方、小島氏は自身が武器の解体訓練を受けた経験を持ち、「人の殺し方も学んだ」と明かしましたが、詳細は語りませんでした。こうしたリアリティへのこだわりが、彼のクリエイティブな姿勢を支えているようです。
大作偏重への問題提起と、小島秀夫の現在地
監督の発言の数々からは、単なる業界批判ではなく、「ゲームをもっと面白くするためには何が必要か?」という根本的な問いかけが読み取れます。小島監督自身も『メタルギアソリッド』や『デス・ストランディング』といった大規模作品を手がけてきましたが、その中で常に「未知」や「異質」への挑戦を組み込み、他と一線を画す表現にこだわり続けてきました。
だからこそ、現在のゲーム業界における「安全で退屈な大作」ばかりという傾向に対し、小島監督は一定の危機感を抱いており、より創造的な方向性を模索する姿勢がうかがえます。
小島監督が手がける『デス・ストランディング』シリーズが賛否を巻き起こしながらも独自の地位を築いたように、今後もその試みは、ゲームというメディアの表現を押し広げていく存在であり続けるでしょう。
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