2024年8月13日、韓国ゲーム大手パールアビスは第2四半期決算説明会で、期待作『紅の砂漠(Crimson Desert)』の発売を2026年第1四半期に再延期することを公表しました。これは7年間で6度目の延期であり、同社の経営や市場評価に深刻な影響を及ぼしています(出典:알파경제)。
株価急落と市場の動揺
発表当日、同社株価は前日比24.17%安の29,650ウォンで取引を終え、時価総額は一日で数千億ウォン規模が消失しました。年初来高値である46,150ウォンから見ると、下落幅は35%を超えています(出典:알파경제)。
証券アナリストからは「来年第1四半期発売は本当に信頼できるのか」という質問が公の場で飛び出し(NH投資証券・アン・ジェミン氏)、株主の不信感はさらに高まりました。
一部の株主は国民請願を通じて経営陣の説明責任を追及。「株主を長年欺いている」と批判し、韓国の上場企業制度そのものの問題を指摘する声も出ています。
延期理由の変遷と開発現場の課題
『紅の砂漠』は2018年に開発が始まり、当初は2021年第4四半期発売予定でした(出典:알파경제)。最初の延期(2020年)はコロナ禍を理由としており、市場も理解を示しました。
しかしその後は「完成度向上」を理由に2022~2023年を通じて再延期が続き、スケジュールは発表されるたびに後ろ倒しになっていきました。
今回(6度目)の延期理由として挙げられたのは「ボイス収録」「コンソール認証」「外部パートナーとのスケジュール調整」。これらはAAAゲーム開発において終盤で必ず発生する工程であり、直前になって延期理由とすることは計画管理の甘さを示すものと業界内では受け止められています(出典:알파경제)。
ゲーム体験に関する根本的懸念
延期の背景には、公式説明以上に深刻な要因があるとの見方もあります。
2024年の国際ゲームイベントで試遊したメディアやインフルエンサーの多くが、「操作体系が複雑で直感的でない」と指摘しました(出典:알파경제)。
こうした操作感は、『黒い砂漠』に慣れた熟練プレイヤーには好まれる一方、世界的なコンソール市場においては参入障壁となりかねません。
最近ヒットした韓国産タイトル『Lies of P』や『First Berserker: Khazan』が操作の分かりやすさを重視していたことと比較すると、方向性の差は明らかです。
大幅な操作改善にはUIやアニメーション、ゲームバランス全体の再調整が必要で、開発期間の延長は不可避とみられます。
売上構造と経営リスク
パールアビスの売上の大部分(約78%)は、10年以上続くオンラインRPG『黒い砂漠』IPに依存しています(出典:알파경제)。
2024年第2四半期の業績は売上796億ウォン、営業損失118億ウォンと赤字幅が前期の倍以上に拡大。『黒い砂漠』の売上も前年同期比8.5%減の549億ウォンにとどまりました。
さらに、発売前の『紅の砂漠』に関連するマーケティング費用は前年同期比43.9%増の105億ウォンと急増しており、資金の消耗が懸念されています。Steamのウィッシュリスト順位は44位と、グローバルでの注目度も伸び悩んでいます(出典:알파경제)。
子会社CCP Gamesの売却検討報道もあり、資金繰り目的の動きと見る向きが強いです。
今後の展望と最大の課題
繰り返される延期により、同社は市場からの信頼を大きく損ないました。もし2026年第1四半期の発売すら守れない場合、ブランド価値や経営基盤へのダメージは回復困難となる可能性があります(出典:알파경제)。
必要なのは技術的完成度の向上だけではなく、現実的なスケジュール設定と透明な情報開示による信頼回復です。『紅の砂漠』の行方は、単なる一タイトルの成否を超え、パールアビスという企業の将来を左右する局面に入っています。




