Ubisoftが開発中だった『アサシン クリード』シリーズの新作を、米国の政治情勢への懸念を理由に2024年7月に中止していたことが報じられました。Game FileのStephen Totilo氏が10月9日に報じたもので、現役・元社員5人への匿名取材に基づいています。中止の背景には、『アサシン クリード シャドウズ』に登場する黒人侍・弥助が2024年春に発表されたことへのオンライン上の批判も影響したとされています。
南北戦争後の再建期を描く物語
中止されたゲームは、1860年代から1870年代にかけての南北戦争後の再建期を舞台にする予定でした。主人公は南部で奴隷として生きていた黒人男性で、西部へ移住して新たな人生を始めた人物として描かれる計画だったとのことです。
物語では、主人公がシリーズの暗殺者組織にスカウトされ、南部へ戻って正義のために戦う展開が予定されていました。取材によれば、主人公は当時台頭していたクー・クラックス・クラン(KKK)と対峙する場面も含まれていたといいます。
『シャドウズ』の批判と米国の政治情勢が影響
取材した社員のうち3人は、ゲームが2024年7月にパリのUbisoft経営陣によって中止された理由として2つの要因を挙げています。1つ目は、『アサシン クリード シャドウズ』で、2024年春に歴史上の人物を基にした黒人侍・弥助が主人公の一人として登場することが発表されたことへのオンライン上の批判。2つ目は、米国の政治情勢がますます緊迫化しているという懸念でした。
プロジェクトとその中止の詳細を知る情報提供者は、Game Fileに対し「要するに、不安定な国であまりにも政治的すぎた」と語っています。別の情報提供者は、「経営陣には失望したが、驚きはなかった」と述べ、「彼らは政治的な『現状維持』を優先し、立場を明確にせず、リスクを避け、クリエイティブな挑戦すらしなくなっている」と指摘しています。
取材によれば、ゲームの中止自体は珍しくないものの、このような理由での中止は異例だったとのことです。また、プロジェクトは初期段階にあったことも明らかになっています。取材に応じた社員たちはゲームに熱意を持っていましたが、中止決定には不満を抱いており、Ubisoftが論争を避けたと受け止めています。
新子会社の業務開始
なお、Ubisoftは先週、Tencentが出資する新子会社の正式な業務を開始しました。VGCの取材によれば、Ubisoftは水曜日にスタッフへ、新子会社が「Vantage Studios」と名付けられ、共同CEOのChristophe DerennesとCharlie Guillemotの指揮の下で業務を開始したことを通知したとのことです。




