Sony Interactive Entertainmentは2026年2月5日、「Asset Streaming System and Method(アセット・ストリーミング・システム・アンド・メソッド)」という特許を公開しました。これは、ゲームをプレイするために最初にダウンロードしなければならないデータの量を大幅に減らす仕組みの提案です。
この特許によると、最初にダウンロードするデータは「たとえば100MB程度」まで小さくできる可能性があるとのこと。現在の大作ゲームは10GB〜100GBのダウンロードが当たり前なので、文字どおり桁違いの小ささです。ただし、この仕組みには高速なインターネット接続が必要であることや、回線の状況によって映像の質が下がる場合があることなど、いくつかの制約も書かれています。
どんな仕組みなのか? ――ゲーム本体だけ手元に置き、映像や音声はネットから届ける
この特許が提案しているのは、ざっくり言うと「ゲームの頭脳だけを手元の機器にダウンロードして、見た目や音のデータはインターネット経由でその都度届ける」という考え方です。
もう少し具体的に説明します。まず、ゲームを動かすためのプログラム本体(実行ファイル)と、メニュー画面や起動画面など最低限の素材(これを「コアアセット」と呼びます)だけを手元の機器にダウンロードします。これが約100MBという小さなパッケージです。
一方、ゲーム中に表示される高画質なテクスチャ(物体の表面の模様や質感)や高音質なオーディオ(音声・効果音・BGMなど)は、プレイしながらサーバー(インターネット上のコンピュータ)からリアルタイムで受け取ります。
特許にはこう書かれています。
「このようなパッケージは、大規模ゲームで一般的な10GBや100GBの規模ではなく、たとえば100MB程度の規模になりうる」 ——特許文書「Asset Streaming System and Method」(US Publication No. 20260034441)より(筆者訳)
ここで「それってクラウドゲーミング(ゲームの処理をすべてサーバー側で行い、映像だけを手元に送る仕組み)と同じでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、この方式ではゲームの処理そのものは手元の機器で行います。サーバーから届くのは映像・音声の”素材データ”だけです。そのため、クラウドゲーミングでよく問題になる「ボタンを押してから画面に反映されるまでの遅れ(入力遅延)」は起きないと特許では説明されています。
プレイ中は、画面に映っているものの大きさや重要度に応じて、必要な品質の素材がサーバーから届きます。使い終わった素材は手元の機器から自動的に削除されるので、ストレージ(保存容量)を圧迫しません。
なお、この特許では対象となる機器を「ゲーム機」「パソコン」「スマートフォン」「テレビ」「ノートパソコン」など幅広く挙げており、「PlayStation」「PS5」「PS6」といった具体的な製品名は出てきません。
ネット環境が悪いとどうなるのか
この仕組みにはメリットだけでなく、弱点もあります。特許自身がそれを率直に書いています。
「クラウドベースのゲーミングには独自の問題が生じうる。たとえば、ユーザーのインターネット接続が限定的(モバイルネットワーク接続など)であれば、大きなレイテンシが発生する可能性がある」 ——同特許文書より(筆者訳)
ゲームの処理自体は手元で動いているので、操作の遅延は起きません。しかし、高画質な映像素材や高音質な音声素材はインターネット経由で届くため、回線が不安定だとこれらの取得が遅れます。その場合は、あらかじめダウンロードしてある低画質・低音質の素材で一時的に代用されます。特許にはその処理の流れも書かれており、「まず手元にある品質の素材で今のフレーム(映像の1コマ)を表示し、高品質な素材が届いたら後続のフレームから差し替える」という段階的な方法が取られます。
インターネットにまったく接続できない場合は、最初にダウンロードした低品質の素材だけでゲームが動きます。遊べはしますが、映像や機能の面で制限が生じます。
これまでにもSonyは似た特許を出している――ただし製品化されるとは限らない
実は、Sonyがゲームのデータ容量を減らす技術に関する特許を公開したのは今回が2回目です。Tech4Gamersの報道によると、Sonyは2025年7月に「IMAGE RENDERING SYSTEM AND METHOD」と題した特許を出願しており、SVGなどの圧縮フォーマットによる中間ファイルを経由してテクスチャ(映像素材)を取得・生成する方式を提案していました。今回の「Asset Streaming System and Method」はそれとは異なり、素材をサーバーからストリーミング(逐次配信)するというアプローチです。
ただし、ここで重要な注意点があります。特許を出願・公開したからといって、その技術が実際の製品やサービスに使われるとは限りません。特許の出願は「この技術のアイデアは自分たちのものです」と権利を確保するための手続きです。ゲーム業界の大手企業は日常的に大量の特許を出願しており、そのまま製品化されないものも数多くあります。
※本記事は公開された特許文書の内容に基づいています。この技術が実際に製品化・実装されることを保証するものではありません。 ※本記事はTech4Gamers、Notebookcheckの報道をもとに、関連情報を加えて再構成しています。
出典
- Sony Interactive Entertainment:ASSET STREAMING SYSTEM AND METHOD(US Publication No. 20260034441)
- Tech4Gamers:Sony Patents To Shrink Size Of 100GB AAA Games To Only ~100MB By Streaming Assets
- Tech4Gamers:New Sony Patent Could Drastically Reduce Size of AAA Games
- Notebookcheck:Sony patent could dramatically downsize PS5 and PS6 games, addressing high SSD prices



