AIでGTAレベルのゲームは作れない──テイクツー社長が語る創造性の限界

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『グランド・セフト・オート』(GTA)シリーズで知られるテイクツー・インタラクティブのトップが、AIによるゲーム開発について興味深い見解を示しました。

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開発スピードは上がるのか?

テイクツー社のストラウス・ゼルニックCEOは、10月29日に開催されたCNBCの技術経営者向けサミットで、AIがゲーム開発のスピードアップに貢献できるかという質問を受けました。

ゼルニックCEOは自身を「否定論者ではない」としながらも、AIがゲーム制作に与える影響は現時点で「限定的」だと答えています。

AIでGTAレベルのゲームは作れない

その理由として、彼はまず知的財産権の問題を挙げました。そして、より大きなハードルとして、AIが本質的に「後ろ向き」であることを指摘します。AIは過去の大量データに紐づいているため、この性質から逃れられないというのです。

ゼルニックCEOは、仮定の質問を投げかけます。

「AIに制約が何もなかったとしましょう。明日ボタンを押すだけで、GTAに匹敵するゲームとマーケティング計画を作り出せるでしょうか?」

答えはノーです。彼は二つの理由を挙げます。

「A:まだそれはできません。そしてB:私の見解では、仮にできたとしても、あまり良いものにはならないでしょう。かなり既存作品の焼き直しのような内容になってしまいます」

「過去しか見られない」AIの本質的問題

ゼルニックCEOは、AIの仕組みそのものに創造性の壁があると説明します。

「シリコンバレーの人たちは聞きたくないかもしれませんが、AIとは大量のデータセット、膨大な計算処理、そして大規模言語モデルの組み合わせです。データセットとは、定義上、過去を振り返るものなのです」

現在のAI技術は、過去に蓄積された大量のデータを学習して動いています。つまり、AIが参考にできるのは「すでに存在するもの」だけ。

「後ろ向きのデータに基づく計算処理とLLMが関わるもの、AIはそういう作業では本当に優れています。テイクツーでも多くの業務でそれは当てはまります」

しかし、それ以外の領域では話が違います。

「それに該当しない作業では、AIは本当に、本当に苦手です。定義上、AIモデルには創造性が存在し得ません。なぜならデータに基づいているからです」

ロックスター・ゲームズが目指す「完璧」

ゼルニックCEOは、GTAシリーズを手がけるロックスター・ゲームズの姿勢についても語りました。

「私たちは永続的なフランチャイズを作ることを目指しています」。その最たる例がGTAシリーズです。2026年5月26日に発売予定の待望の『GTA VI』についても触れています。

「チームの創造性は並外れたものです。ロックスター・ゲームズが挑戦し続け、これまで何度も実現してきたこと、それは完璧に近いものを創り出すことなのです」

AIは道具、創造性は人間のもの

テイクツーは、GTAシリーズのほかにも『ボーダーランズ』『NBA 2K』『バイオショック』など、人気タイトルを多数抱える大手パブリッシャーです。

ゼルニックCEOの発言は、業界リーダーとしてのバランスの取れた視点を示しています。AIを全否定するのではなく、得意な分野と不得意な分野を見極める重要性を説いているのです。

後ろ向きのデータに基づく計算処理やLLMが関わる作業では、AIは非常に有効です。しかし、プレイヤーを魅了する「新しい体験」を生み出すには、やはり人間のクリエイターの創造性が欠かせません。

技術の進歩でゲーム開発は変化していきますが、本当に素晴らしいゲームを作るには、人間ならではの創造力が今後も中心であり続けるでしょう。

出典

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