4Gamerが『ゼルダ無双 封印戦記』の開発者インタビューを掲載しています。任天堂とコーエーテクモゲームスから計5名のキーパーソンが登場し、企画成立から設定共有、キャラクター創出までの舞台裏を語りました。なお、インタビューは2025年12月1日にオンラインで実施されたものです。
「創れ」と感じた週末——企画が動き出した瞬間
『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、TotK)の発売直後、両社はそれぞれのタイミングで動き出していました。
コーエーテクモ副社長の早矢仕氏は「TotKは発売直後の週末に遊んでいた。そのうちに『これは、また我々に封印戦争の時代のゼルダ無双を創れと言っているのでは?』とタイトル自体から明確なメッセージを感じた」と振り返ります。早矢仕氏は週明けに『封印戦記』プロデューサーの松下氏へ声をかけ、企画書に着手しました。松下氏もまた、「それを言われる前から提案をまとめていた」と明かしています。
任天堂側でも動きがありました。TotKのディレクターを務めた藤林氏が完成後、ゼルダシリーズ総合プロデューサーの青沼氏に「今回もコーエーテクモさんにお願いできないでしょうか」と相談したところ、「まず先方の意向を待ちなさい」と返されたそうです。その矢先、コーエーテクモから連絡が入りました。
任天堂がコーエーテクモの意向を待つ方針だったところに、コーエーテクモから企画が持ち込まれ、プロジェクトが動き出しました。
仮面の奥に隠した賢者たち——TotKの「余白」を埋める
なぜ封印戦争は無双で描かれることになったのか。その背景には、TotKでの意図的な省略がありました。
藤林氏は「TotKの本編では描くべき軸があり、賢者たちは名前も伏せ、仮面の奥に顔を隠す形で登場します。人物像や素顔まで描くと、どうしても物語が膨らみすぎてしまうので抑えた部分が多かった」と説明します。
その余白を、封印戦記では「しっかり拾っていただき、本当に嬉しく思っています」と藤林氏は語ります。コーエーテクモ側が展開を出し、任天堂が設定や情報を渡して一緒に形にしていく。「ひとつ伝えると3つ戻ってくる」ようなやりとりを何度も繰り返したそうです。
ラナリアは、TotKの時点で設定上は存在していたキャラクターです。藤林氏によると「無双があれば絶対入れてほしいと思っていた」とのこと。4Gamerの注釈によれば、TotKのエピソードチャレンジ「古代からのメッセージ」で過去の時代を記録していた侍女が、ラナリアにあたるようです。
“平城”のハイラル城——任天堂のこだわりに即応したコーエーテクモ
協働の象徴的なエピソードがあります。
藤林氏は「太古のハイラル城は質実剛健な平城。天守閣はない」というこだわりを伝えました。やりとりは「イメージは躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた、武田信玄の居館)です」「ああ、分かりました」という1ターンで終わったと松下氏は振り返り、「阿吽の呼吸でしたね」と語っています。歴史ゲームを手がけてきたコーエーテクモの知見が、一瞬で噛み合った瞬間でした。
オリジナルキャラクターの創出にも苦労がありました。藤林氏は「やっぱり謎のゴーレムですね。生みの苦しみを味わった」と語り、一番思い入れの強いキャラクターだと明かしています。
青沼氏も「カラモ」に思い入れがあり、「ハットを被せたらどうですか」とアドバイスしたそうです。松下氏によると、カラモの名前は100個の候補から決まりました。
空を飛び、手を取り合う——封印戦争のバトル
バトル面でも協働の成果が見えます。
『封印戦記』ディレクターの青柳氏は「空で無双するなら?」という発想から、謎のゴーレムの変形による空中戦闘が生まれたと説明します。藤林氏も「変形シークエンスにはこだわった」と述べ、ビルドから「『これでどや?』という顔が想像できた」と振り返ります。
味方との協力技「シンクストライク」は、TotKの「手と手」というキーワードから着想されました。
青沼氏が語る「初」の裏側と次への刺激
封印戦記はNintendo Switch 2における初のゼルダタイトルとなりました。
青沼氏は「本当は僕らが初を出したかったんですが」と笑いながら語りつつ、「こうしたコーエーテクモさんとのコラボから受けた刺激は、我々が創るゼルダに反映されるかもしれません。封印戦記を遊びながら、そんなところも想像していただいて、我々のゼルダにも期待して待っていてください」と結んでいます。
任天堂が創るゼルダに、協業で受けた刺激がどう反映されるのか。その答えは、まだ先の話です。



