『メタルギアソリッド デルタ』PS5 Proで”逆転現象”発生 美麗UE5リメイクでPS5が最大7fps優位という検証結果

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リメイクとしての完成度は高水準、だが最適化に課題

コナミによる『MGS3』リメイク作品『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER(以下、MGS Δ)』について、Digital FoundryはPS5/PS5 Pro技術分析動画を公開しました。

動画によると、カットシーンは原作と同一のモーションキャプチャーデータを使用して再構築され、ジャングルの地形も忠実に再現されています。キャラクターモデル、エフェクト、マテリアル、ライティングが最新技術で刷新され、グローバルイルミネーション(GI)システムも導入されており、「UE5のソフトウェアベースLumenである可能性が高い」と分析されています。

しかし、両機種ともにパフォーマンス面で重要な課題が明らかになっており、特にフレームレートの不安定さが指摘されています。

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PS5:パフォーマンス/クオリティモードの違いと問題点

PS5では60fpsを狙う「パフォーマンスモード」と、30fpsで高画質な「クオリティモード」の2種類が用意されています。

パフォーマンスモードでは解像度が720p〜1080pと可変で、最終的には4Kへアップスケーリングされます。Digital Foundryの検証では、初期の着地エリアや沼、橋などで「48〜60fps」で推移し、上限付近に張り付きやすいとされています。しかし、特定エリアでの大幅な低下が問題となっており、戦闘エリアのRasvetでは敵数や爆発の影響で「30〜50fps」まで低下し、「PS5のVRRウィンドウを外れる」場面が発生します。水中では「40fps前後、時にそれ未満」まで低下することが確認されています。

クオリティモードは1080p〜1584pの範囲で描画され、「メニュー上の上限1440p表示を上回る」ケースが確認されています。このモードでは小物オブジェクトの描画距離、影のLOD、屋外のGI設定が強化されますが、30fps固定にもかかわらず爆発などの負荷が高い場面で30fpsを下回るケースがあります。さらに、「フレームペーシングが不均等」でモーションに「カクつき(ジャダー)」をもたらしています。

両モードともに、カットシーンは30fps固定(不均等フレームペーシング)で統一されており、視覚的な向上は見られるもののフレームの不安定さが目立つ状況です。

PS5 Pro:統合モードの利点と予想外の欠点

PS5 Proではモードの切替が存在せず、「60fps狙い+高画質設定を統合した単一モード」が採用されています。この構成は理論上、パフォーマンスとクオリティの”いいとこ取り”を目指していますが、実際の動作は期待に反する結果となっています。

アップスケーリングにはソニー独自のPSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)を使用し、ネイティブ解像度は756p〜1152pに設定されています。PSSRは動きの中で「髭・髪や細かいメッシュ、遮蔽時のテンポラル破綻に対し、粗い点滅のアーティファクトをよりうまく抑える」利点があります。

しかし、静止時の解像感では課題があり、Digital Foundryは「遠景の草などが甘く見える」ケースを確認しています。同一フレーム比較では、PS5パフォーマンス864p、PS5クオリティ1412p、PS5 Pro 756pという例が示されており、「PS5 Proは平均的により低いネイティブ解像度で動作している」ことが要因とされています。

最も深刻な問題として、屋外エリアでの平均フレームレートがPS5を下回る現象が確認されています。Digital Foundryは「同一ルート比較でPS5が最大+7fps有利」と報告しており、初期着地エリアでは「PS5 Proは早い段階から60fps未満に落ちる一方、PS5は同区間で落ち込みが見られない」という結果が示されています。

さらに、PSSRは「グローバルイルミネーションや室内壁のシェーディング、屋外の草陰などでテンポラルなちらつきを強調する傾向」があり、「両機種ともGIのちらつき問題があるが、PSSRがそれを増幅する場面がある」と指摘されています。

フレームレート比較とVRR適性

Digital Foundryによる主要エリアでの両機種のフレームレート比較は以下の通りです。

初期のジャングル地帯:PS5はおおむね48〜60fpsで安定していますが、PS5 Proでは60fps未満への低下が頻発し、同区間でPS5より平均的に低いパフォーマンスを示しています。

戦闘エリア(Rasvet):PS5では30〜50fps、PS5 Proでは30〜60fpsで推移しますが、平均フレームレートはPS5の方が高い傾向にあります。VRR(可変リフレッシュレート)対応ディスプレイがあれば視覚的な滑らかさは保たれますが、限界があります。

水中セクション:潜水時にはPS5で40fps前後まで低下することが確認されています。

室内エリア:一部の室内(研究所など)ではPS5 Proが「60fpsにより張り付きやすい」場面があり、PS5は同所で50fps程度に留まる比較が示されています。

カットシーン:PS5 Proでは「60fps上限の可変」(40〜60fps)となり、PS5の30fps固定と挙動が異なります。30fps固定特有の不均等なフレームペーシングは発生しませんが、目標未達の可変になる場面があります。

総合評価:美しさと忠実さの裏でパフォーマンスが足を引っ張る

Digital Foundryは『MGS Δ』について、原作へのリスペクトと現代的なグラフィックの融合が高く評価されるべきリメイク作品であると評価しています。「カットシーンの再現度、環境の密度、最新技術の導入」など、視覚面では申し分ない仕上がりを見せています。

一方で、PS5およびPS5 Proの両機種において「パフォーマンスの不安定さ、明確な最適化不足」といった課題が残っています。特にPS5 Proについては「PS5 Pro Edition being the most in need of attention(PS5 Pro版が最も改善を必要としている)」と総括し、「PS5 Proはユーザー側でモードやアップスケーラーの選択ができない」制限も問題として指摘されています。

Digital Foundryはライセンス表記内に「AMD FSR3の記載がある」ことも確認していますが、「PC版への言及の可能性がある」としています。

なお、この分析はバージョン1.1.1に基づいた内容であり、今後のアップデートによる改善が期待されます。発売日までの残りわずかな期間で、コナミがどこまで最適化を進められるかが注目されるところです。

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