神谷英樹が語る『大神2』開発の舞台裏:『ベヨネッタ3』の経験と独立スタジオの挑戦

https://gamestalk.net/神谷英樹が明かす大神2開発秘話ベヨネッタ3の教訓が生んだ新アプローチ

あの美しい和の世界で多くのゲーマーを魅了した『大神』の完全新作(以降『大神2』と表記)が、2024年に正式発表され、現在開発が進行中です。開発を指揮するのは、『バイオハザード2』『デビル メイ クライ』『ベヨネッタ』を生み出した伝説のクリエイター・神谷英樹氏です。

VGCの最新インタビューで、神谷氏は『ベヨネッタ3』の経験から生まれたファン期待とクリエイター意図を調和させる新たな制作アプローチについて語りました。自身初の続編監督作品となる『大神2』で、神谷氏はどんな新しいアプローチを見せるのでしょうか。

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『ベヨネッタ3』の教訓が変えた続編制作への姿勢

ファンとクリエイターの間に生まれたギャップ

神谷氏は『ベヨネッタ2』『ベヨネッタ3』『ベヨネッタ オリジンズ』でシリーズ総監修を務めました。この経験から、重要な気づきを得たと語ります。

「各作品がリリースされるたび、ファンの『ベヨネッタとは何か』『続編はどうあるべきか』という考えが強くなっていきました」

シリーズが進むにつれ、ファンの中で「続編はこうあるべき」というイメージが固まっていったのです。その結果、プラチナゲームズが描く方向性と、ファンが求めるものの間にギャップが生まれました。

神谷氏は率直に語ります。「『ベヨネッタ3』がリリースされた時のファンの反応を見て、少し困惑しました」

『大神2』で実践する新たなアプローチ

この経験が『大神2』の開発姿勢に直接影響を与えています。神谷氏は「新しい『大神』でファンと戦うつもりはありませんが、アプローチをより深く考えるようになりました」と説明します。

この発言から推測されるのは、ファンとの融和的なバランス感覚を重視する姿勢です。単純にファンの要求に従うのでもなく、完全に無視するのでもない方向性が見えてきます。

また、神谷氏は「初代『大神』が提供したものを超える、より良いものを作ることが私の任務であり、それが達成したいこと」と語り、明確な目標を示しています。「それができれば真の成功と考える」とも述べ、高い志を掲げています。

「『大神2』の制作は極めて楽しい」「オフィスの雰囲気からもチーム全体の充実感が伝わる」という発言からは、チーム一体感を重視した制作環境の構築も新たな取り組みの一つと考えられます。

独立スタジオCLOVERS:完全自立で挑む新体制

2023年10月にプラチナゲームズを退社した神谷氏は、新スタジオCLOVERSを設立しました。現在は大阪と東京の二拠点で運営され、完全に独立した資本構造を持ちます。

神谷氏は明確に述べています。「我々の会社は完全に自己資本で設立されており、カプコンからの資本参加はありません」

この独立性により、将来的な選択肢が広がります。他のパブリッシャーとの協業や自社パブリッシングも視野に入れているとのことです。

CLOVERSのチーム構成は戦略的です。代表取締役社長の小山兼人氏によると、スタッフの約80%が経験豊富な開発者で構成されています。採用は新卒採用ではなく、同僚の推薦を基軸とした「同じマインドセット」重視で行っています。

神谷氏は「技術力も重要ですが、それ以上に同じクリエイティブへのアプローチを持つことが大切です」と語ります。

開発環境の構築では、旧プラチナゲームズCEOの三並達也氏が共同設立したM-TwoやMachine Head Worksとの協業が大きな推進力となり、環境整備を大幅に前倒しできたそうです。

カプコンとの協力関係:独立性を保った協力関係

The Game Awardsでの感動的な発表

2024年のThe Game Awardsでの『大神2』発表は、和太鼓の演出とともに大きな注目を集めました。司会のGeoff Keighley氏が感情を込めて紹介したこの瞬間について、神谷氏は深く感謝しています。

「単なる新作の紹介ではありませんでした。誰が作っているのか、どんなチームなのかを丁寧に紹介してくれました」

版権を持つカプコンからのサポートは「非常に有益」だと神谷氏は強調します。特にカプコンのRE ENGINEの活用は、少人数スタジオにとって大きなアドバンテージとなっています。

将来への多様な可能性

この協力関係は資本的な結びつきではなく、CLOVERSは独立性を保った協力関係を築いています。神谷氏は将来への展望を語ります。

「規模が大きくなれば、次の『大神』ゲーム、新規IP、他のカプコンIPなど、どの可能性も嬉しいです」

日本と海外の開発文化:創造性を支える土壌の違い

神谷氏は興味深い文化比較を行っています。「ゲーム開発は一種の発明だと考えています」と語る彼は、常にユニークなメカニクスを追求してきました。

『ベヨネッタ』のウィッチタイム、『The Wonderful 101』のユナイト・モーフ、『大神』の筆しらべなど、「そのゲームにしかない仕組み」を作ることが神谷氏の信念です。

日本のパブリッシャーについて、神谷氏は高く評価します。「新しいものを生み出す発明の過程を理解し、忍耐強く見守ってくれる傾向があります」

一方、海外企業では「まだ形になっていないものに対して、より早く完成形を見せることへのプレッシャーを感じることがある」と対比的に語っています。

この文化的違いは、開発中止となった『Scalebound』の経験にも関連します。人間とドラゴンを同時操作する新機軸は前例が少なく、理解を得るのが困難でした。

残念ながら2017年に開発中止が発表された、神谷英樹氏がディレクターを担当していた『Scalebound』

神谷氏は振り返ります。「もし日本のパブリッシャーであれば、プロセス自体が異なっていたかもしれません」

ただし、「最終的な責任はプラチナゲームズと私自身にあります」と謙虚に受け止めています。この経験から、海外パブリッシャーとの協業でも双方の強みを活かす方法を見つけたいと語っています。

『大神2』に込める想い:初代を超える挑戦

神谷氏にとって『大神2』は、自身が監督した作品の直接続編を手がける初めての経験です。この特別な意味について、彼は明確な目標を掲げています。

「初代『大神』が提供したものを超える何かを作り出すことができれば、それを真の成功と考えます」

初代『大神』は批評的には高く評価されましたが、商業的成功は限定的でした。今回はカプコンの信頼に応える大ヒット作を目指すと同時に、クリエイティブ面でも初代を超える体験の提供を目標としています。

現在の開発状況について、神谷氏は手応えを示しています。「極めて楽しい。オフィスの雰囲気を見ても、全員が同じように感じているのが分かります」

まとめ:日本のゲーム開発が示す新たな可能性

『大神2』は、経験豊富なクリエイターが新しいスタジオで手がける注目のプロジェクトです。神谷氏が『ベヨネッタ3』から学んだ「ファンとの向き合い方」は、他の続編作りにも大きなヒントを与えそうです。

ファンが望むものをそのまま作るのではなく、ゲームの良さを大切にしながら新しい魅力も加える。この絶妙なバランス感覚こそが、日本のゲーム作りの成長を表しています。

神谷氏が『ベヨネッタ3』から学んだ「ファン期待とクリエイター創造性の調和」という新アプローチが、『大神2』でどう実現されるのか注目です。そして日本のゲーム業界にどんな影響を与えるのか。続報への期待が高まっています。


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