日本ファルコムの近藤季洋社長は、中国・韓国メーカーが「日本のコンテンツにはかなわない」と口を揃える部分があるとの見方を示しました。その領域とは「作家性」と「独自性」だといいます。経営者インタビューサイト「社長名鑑」で語ったもので、効率化よりも「属人性」を重視する同社の方針が明かされています。同社の従業員数は70名弱。企画・開発・販売をほぼ社内で手がける体制を敷いており、創業以来黒字決算を続けています。
「作家性」で巨大資本に挑む
近藤社長は社長名鑑のインタビューで、規模で勝負するのではなく、日本ならではの「作家性」や「独自性」を武器に世界と戦っていきたいと述べています。ゲーム開発の規模が世界的に巨大化するなか、中国・韓国メーカーは同社では太刀打ちできないほどの資本を持っているとの認識です。
一方で近藤社長によれば、そうしたメーカーが「日本のコンテンツにはかなわない」と口を揃える部分があるといいます。
「しかし、彼らが「日本のコンテンツにはかなわない」と口を揃える部分があるのです。それが「作家性」や「独自性」です。」 ——社長名鑑より
近藤社長は、組織全体で合理的につくることも大切だが、個人のセンスや「どうしてもこれを作りたい」という尖った思いが込められた作品には独特の魅力が宿ると述べています。この強みを最大限に活かすことが同社の戦略だと語りました。
こうした戦略を掲げる日本ファルコムは、創業以来黒字決算を続けており、無借金経営で知られています。2025年9月期決算では売上高26億1200万円、営業利益13億4000万円を計上しました。
「属人性」を肯定する組織づくり
効率を追求した分業体制についても、近藤社長は見解を述べています。システム化された分業体制を敷けば失敗は減るものの、画一的なものになりがちだと指摘しました。
そのうえで同社は「属人性」をあえて大切にしているとのこと。
「効率を求めてシステム化された分業体制を敷けば、たしかに失敗は減りますが、どうしても画一的なものになりがちです。だからこそ弊社は、個人のこだわりや、いわゆる「属人性」をあえて大切にしています。」 ——社長名鑑より
個人の感性がぶつかり合う現場では活発な議論が起こり、非効率な面もあると近藤社長は認めています。それでも「システム化してしまえば、私たちの良さは消えてしまう」と述べました。「ものづくりが好き」という人間が集まり、泥臭く工夫を凝らしてつくった作品の「熱」こそがファンの心に届くと語っています。
「素人」を自称する手作りの強み
日本ファルコムの強みについて、近藤社長は「手作り感」を挙げました。創業者がよく口にしていた「うちは素人なんだ」という言葉を紹介し、特定の専門分野に固執せず全員が領域を超えて知恵を絞る組織だと語っています。
「専門家がいないからできない」とは考えず、自分たちにできる範囲で最高のものに見せる方法を徹底的に考え抜く。それが同社の姿勢だといいます。他社のような派手な映像がつくれなくても、一枚絵の演出を工夫することで違った感動を生み出せると近藤社長は述べました。
社内には「時間をかけない、でも手は抜かない」という標語があるとのこと。納期を延ばさず、限られたリソースのなかで品質に妥協しない覚悟を示す言葉です。近藤社長によれば、こうした泥臭い試行錯誤のプロセスが他社製品にはない温かみを生み出しているといいます。
「空の軌跡」に見るやり遂げる覚悟
近藤社長は自身のデビュー作『英雄伝説 空の軌跡FC』での経験にも触れています。同作は「軌跡」シリーズの第一作目ですが、ストーリーが半分の状態で発売されたといいます。
開発開始から3年が経った時点で「半分です」と報告したところ、創業者から「半分でいいからもう出そう」と判断が下されたと近藤社長は明かしました。「前編」と明示せずに発売したため、「物語が終わっていない」「未完成品だ」と厳しい批判を受けたとのことです。
その後、信頼を取り戻すため必死で後編をつくり込み、さらに2年をかけて物語を完結させました。2作揃って完結したとき、「これはすごいタイトルだ」と熱狂的な評価に変わったと振り返っています。
『空の軌跡FC』は2004年6月24日にPC向けに発売されました。2025年9月19日にはフルリメイク版『空の軌跡 the 1st』が登場。近藤社長はこのリメイクについて、「当時の私たちが苦しみながらも『やるべきことをやる』ことにこだわった結果」だと語っています。
※本記事は社長名鑑のインタビューをもとに、関連情報を加えて再構成しています
出典
- 社長名鑑:現場感覚で「熱狂」を生み出す 世界を魅了する独自の創造戦略
- 日本ファルコム公式サイト:業績・財務データ
- 日本ファルコム公式サイト:代表インタビュー



