同時に8つしか音を鳴らせないSFCで、植松伸夫氏は5つをピアノに使った――『FF6』冒頭曲「予兆」の制作秘話

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GAME Watchのイベントレポートによると、作曲家の植松伸夫氏は『ファイナルファンタジーVI』(以下『FF6』)の冒頭曲「予兆」について、スーパーファミコン(SFC)の同時発音数8音のうち5トラックをピアノの残響表現のためだけに使ったと語りました。2026年1月27日と1月31日に開催されたトークイベント「ff(フォルテッシモ)」vol.5およびvol.6で、植松氏は1994年発売の同作における楽曲制作の技術的な工夫や、名曲に対する自身の率直な評価を伝えています。本文では技術面の工夫に加え、完成した楽曲に対する植松氏自身の評価も取り上げます。

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SFC8音中5トラックをピアノに投入——「予兆」の残響を支えた力技

SFCの音源チップは同時発音数が最大8チャンネルであり、効果音にもチャンネルを割く必要があるため、BGMに使える音数はさらに限られるのが通例でした。同レポートによると、「予兆」ではその8音のうち5トラックがピアノのためだけに使われていました。

ひとつのトラックで演奏すると前の音が途切れ、ピアノ特有の残響が消えてしまいます。そこで1音ごとに別のトラックを割り振ることで音を重ね合わせ、余韻を残す仕組みにしたと同レポートは伝えています。この方式では残り3トラックで他のすべてのパートをまかなう計算になり、大胆な配分であったことを示しています。

SFCの限られた音数の中では、音色の選び方や過去の楽曲の再活用にも独自の判断が求められました。

民族楽器の音色選択とボツ曲の復活——制約が生んだ別の工夫

同レポートによると、「ティナのテーマ」には「チャランゴ」という南米アンデス地方の民族楽器の音色が使われています。植松氏はフォルクローレの持つ哀愁が日本人の感性に合うと述べており、異国情緒と懐かしさを両立させる音色を意図的に選んだとのことです。

もうひとつの例として同レポートが紹介しているのが「からくり屋敷」です。この曲は初代『ファイナルファンタジー』の開発時にボツになっていた楽曲で、約7年を経て『FF6』のアウザーの屋敷で復活しました。植松氏は「面白い曲だからどこかで使いたいと虎視眈々と狙っていた」と話しています。

技術面の工夫に加え、完成した楽曲に対する植松氏自身の評価もイベントの話題となりました。

人気曲への「恥ずかしさ」と名曲に残る未練——植松氏の自己評価

同レポートによると、ファンから人気の高い「仲間を求めて」について手応えを聞かれた植松氏は、次のように答えています。

「人気は高いけれど、自分の手癖みたいな曲で、あんまり触れられたくない恥ずかしさはある」 ——GAME Watch(イベントレポート)より

一方で、「ゲームでこの曲がかかる場面と音楽が素晴らしく融合している」というファンの感想に対しては「それが最高の褒め言葉」と感謝を述べたと同レポートは伝えています。

ラストバトル曲「妖星乱舞」についても、植松氏が第4楽章のベースとドラムのアタック音にズレがあると指摘した旨が報じられました。「なんでOKにしちゃったのかわからない」とも語ったとされており、名曲として広く知られる楽曲に対しても作り手としての未練が残っていることが伝えられています。

※本記事はGAME Watchのイベントレポートをもとに、確認可能な関連情報を補って再構成しています。

出典

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