「棺桶と戦闘不能」——堀井雄二氏と北瀬佳範氏が初めて語り合ったDQとFFの違い

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『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏と『ファイナルファンタジー』の北瀬佳範氏が、ファミ通.comに掲載された対談で語り合いました。堀井氏によれば「ふたりでちゃんと話すのは初めてかもしれない」とのこと。堀井氏はDQを「体験するドラマ」、FFを「観るドラマ」と表現しています。対談では、堀井氏がFFの設計に感心した点や、主人公を喋らせるかどうか、3D化による表現手法の変化といったトピックが語られました。

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棺桶と戦闘不能——演出設計への影響

堀井氏は、FFの設計で「いちばんやられた」と感心した点として「棺桶」と「戦闘不能」の扱いの違いを挙げています。

ボクがいちばんやられたと思ったのは、”ドラゴンクエスト”ってパーティメンバーがチカラ尽きたら棺桶に入ったままなんです。そういうときにイベントシーンが始まると、どうしようってなる。仲間がチカラ尽きている場合とそうでない場合をいろいろ考えなければならなくなるんです。けれど、”FF”の場合は、戦闘不能なので(そこを考えなくていい)。「おお! そうか!」って(笑)。戦闘不能なだけだから、イベントシーンにいてもいい。 ——ファミ通.comより

ドラクエでは仲間が倒れると「棺桶」として視覚的に表示され、その状態はイベントシーンでも維持されます。そのため、イベントを設計する際には「このキャラクターが棺桶状態だったらどうするか」を常に考慮する必要があります。一方、FFでは「戦闘不能」という抽象的なステータスとして処理されるため、イベントシーンではキャラクターが通常通り登場できます。

北瀬氏もこの話題に応じ、「制作コストの面でも」関わってくると触れています。ドラクエの方式ではキャラクターの状態に応じた分岐が増えやすく、FFの方式ではイベント演出に乗せやすい、という違いが生じます。

主人公を喋らせない徹底——北瀬氏が語る「真似できない」理由

ドラクエの主人公は基本的に喋りません。堀井氏は、主人公が喋らないぶん「別に狂言回しを立てたり、まわりがお話を動かしたりしていた」と振り返りました。

北瀬氏も『クロノ・トリガー』で同様のアプローチに挑んだ経験があります。同作の主人公クロノは基本的に喋らず、周囲のキャラクターが物語を牽引する構成でした。しかし北瀬氏は「それを最後まで貫き通せない。やりたいドラマのために、主人公をこちらの都合で動かしたくなってしまう」と語り、堀井氏の徹底ぶりを「すごいな、真似できないな」と評しています。

一方、『ドラゴンクエストVII』ではCD-ROM化で容量に余裕が生まれ、仲間との会話がより充実しました。マリベルもそうした仲間のひとり。堀井氏は「しゃべれるならめちゃくちゃ言われたほうがおもしろいと思った」と、あの気の強くおしゃべりな性格について語っています。

3D化で失われた文法、新たに生まれた遊び

3D化によって、従来のRPGの文法が通用しなくなった——北瀬氏はそう振り返ります。2Dでは「画面の端まで歩いたら、見えていなかった階段や隠し通路が現れる」という探索の楽しみがありました。しかし『FF7』では回転できない固定カメラを採用しており、パースが付いた背景では、画面に見えている範囲がそのまま世界のすべてになります。従来の仕掛けが成立しなくなったのです。

「そこは諦めよう、3Dにして初めて新しく生まれるような遊びを探していこう」みたいな議論をした覚えがあります。——ファミ通.comより

結果として、『FF7』では遠近法を活かした演出など、新しい見せ方が模索されたといいます。

一方、堀井氏は『ドラクエ7』で別のアプローチを取ったと明かしています。「タカのめ」という視点の仕掛けを取り入れ、カメラを引いて上から見ることでマップ全体を把握できるようにしました。いったん構造が頭に入れば、カメラが回っても迷いにくくなる。堀井氏は「それはそれで新しい仕掛けができたので楽しかった」と当時を振り返っています。

マテリア——「スフィア」から変わった理由

『FF7』のマテリアシステムには、命名にまつわるエピソードがあります。北瀬氏が対談の中で明かしました。

もともとプランナーは、丸い物体だったことから「スフィア(球体)」と名付けていたそうです。しかし当時のプロデューサーである坂口博信氏が「スフィアはわかりづらい」と判断し、「マテリア」に変更されました。

スフィアみたいなおしゃれな言いかたじゃなくて、マテリアという4文字で響きのいい形っていうのは、先見の明があって流石だなと思います。——ファミ通.comより

「マテリア」はラテン語由来で「物質・素材」を意味する言葉です。『FF7』の世界では、マテリアは星のエネルギーが凝縮して結晶化したものという設定になっており、魔法やアビリティの源として物語の核心にも関わっています。単に「丸いからスフィア」では、この設定が伝わらない。坂口氏の「わかりづらい」という判断は、そうした意味も含んでいたのかもしれません。

開発チームが凝った名前を付けたがる傾向について、北瀬氏が「”DQ”の開発スタッフからは、おしゃれネームは上がってこないですか?」と尋ねると、堀井氏は「上がってきても『いや、これわかりにくいよ』って」と答えました。わかりやすさへのこだわりは、両シリーズに共通しているようです。

出典

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