任天堂がバンダイナムコのシンガポール開発拠点を子会社化へ スプラ3協力スタジオ取得でシンガポール二拠点体制・開発力を強化

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任天堂は2025年11月27日、バンダイナムコスタジオからシンガポールの開発会社Bandai Namco Studios Singapore(BNSS)の株式を取得すると発表しました。2026年4月1日に株式の80%を取得し、子会社化する予定です。取得後は商号を「Nintendo Studios Singapore Pte. Ltd.」に変更し、開発業務を継続します。

同社は『スプラトゥーン3』のアート制作にも参加しており、スプラトゥーンシリーズでの協力関係が、今回のニュースを語るうえでの大きなポイントになっています。

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任天堂がBNSSを子会社化、2026年4月に80%取得

任天堂とバンダイナムコスタジオは、BNSS株式の譲渡契約を締結しました。諸条件の充足を前提に、2026年4月1日にBNSS株式の80%を任天堂が取得し、同社は任天堂の子会社となります。

残り20%の株式については、子会社としての企業運営が安定した一定期間を経た後に取得する方針が示されています。

子会社化後、BNSSは「Nintendo Studios Singapore Pte. Ltd.」へ商号を変更し、ゲーム開発業務をそのまま継続する予定です。また任天堂は、本件が当期(2026年3月期)の業績に与える影響について「軽微」であると説明しています。

スプラトゥーン3のアート制作を担ったスタジオ

BNSSは、バンダイナムコグループの海外拠点のひとつとして設立された開発会社で、ゲーム内のアート素材制作に強みを持つと説明されています。

任天堂の英語リリースでは、同社が「in-game art assets」の制作に強みを持ち、『スプラトゥーン』シリーズを含む任天堂タイトルの開発に貢献してきたことが明記されています。

具体的なタイトルとしては、『スプラトゥーン3』の開発クレジットにおいて、Nintendo EPDによる開発に加え、SRDやMonolith Softと並んで「Bandai Namco Studios Singapore & Malaysia」が追加作業を担当したと記載されています。

さらに海外メディアのまとめによれば、同スタジオは公式サイト上で『スプラトゥーン3』について「コンセプトアート、キャラクターモデリング、背景モデリング、アニメーション」を担当したと紹介していたとされています。

こうした経緯から、BNSSはスプラトゥーン3のビジュアル面にも関わってきた協力スタジオとして位置付けることができ、そのまま任天堂グループ入りするかたちになります。

シンガポールで「ビジネス+開発」の二拠点体制へ

任天堂は2025年9月26日付で、シンガポールに現地法人「Nintendo Singapore Pte. Ltd.」を設立しており、公式リリースでは「東南アジアにおけるビジネスの加速」を目的としたローカル法人であると説明しています。

今回のBNSS子会社化により、シンガポールには

という二つの任天堂グループ拠点が並び立つ形になります。公開されている情報をもとに整理すると、前者が東南アジア市場に向けた事業推進を担うビジネス拠点、後者がゲーム開発とくにアート制作に特化した開発拠点として機能する体制と見ることができます(この部分は公開情報に基づく整理であり、任天堂の公式見解ではありません)。

シンガポールは、ゲーム企業が東南アジアやグローバル市場向けの拠点を置くハブ都市としても知られています。任天堂が同地でビジネスと開発の両面に拠点を構えることは、東南アジア向けの事業展開とゲーム開発力の強化を結び付ける一手として整理することもできます。

任天堂の投資方針の中で見るBNSS買収

任天堂は2025年11月5日の「2026年3月期 第2四半期決算説明会/経営方針説明会(オンライン)」プレゼンテーション資料の中で、事業基盤を強化するための投資分野として、ゲーム開発力を高めるための「開発会社の子会社化や第二開発棟などによる投資」、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の成功も踏まえた映像など「ゲーム以外のソフトウェア資産」への投資、そしてニンテンドーアカウントを軸とした「お客様との関係性を維持・拡大するための基盤整備」という三つを挙げています。

過去を振り返ると、任天堂は2007年にモノリスソフトの株式の大半をバンダイナムコ側から取得して子会社化し、その際にはバンダイナムコが保有していた持分のうち80%を任天堂が取得したと伝えられています。

また、2022年にはCG制作会社ダイナモピクチャーズの全株式を取得し、商号を「Nintendo Pictures Co., Ltd.」に変更するとともに、任天堂IPを活用した映像コンテンツ制作体制を強化する方針を示しました。

こうした過去事例と今回のBNSS子会社化はいずれも、特定分野に強みを持つ外部スタジオをグループ内に取り込み、開発・制作体制を厚くしていく動きとして整理できます。公開情報をもとに位置付けると、BNSS買収も、開発会社の取得を通じてグループ全体の開発構造を強化するという、最近示された投資方針を具体化する一例とみることができます。

アート制作リソースの強化と、今後の注目ポイント

任天堂の公式リリースでは、BNSSについて「ゲーム内アートアセットの制作に強みを有する開発会社」であり、『スプラトゥーン』シリーズを含む任天堂タイトルの開発に貢献してきたと説明したうえで、その継続的なビジネス実績を踏まえて株式取得を決定したとしています。

このことから、BNSSのグループ入りは、単に海外拠点を増やすというよりも、アート制作リソースをグループ内で安定的に確保・活用する狙いがあると整理できます。すでに任天堂は、映像制作分野ではNintendo Picturesを、ゲーム開発分野ではモノリスソフトやNext Level Gamesなど複数の子会社スタジオを抱えており、そこに「アート制作特化の海外開発拠点」が加わる格好です。

今後の注目ポイントとしては、公開情報の範囲から次のような論点が挙げられます(いずれも現時点で個別タイトル名などが公表されているわけではなく、一般的な論点の整理です)。

  • スプラトゥーンシリーズを含む今後の任天堂タイトルで、Nintendo Studios Singaporeがどのようなクレジットで関わっていくのか
  • Nintendo Singapore(ビジネス拠点)とNintendo Studios Singapore(開発拠点)の役割分担や連携のあり方が、東南アジア市場向けの展開にどのように結び付いていくのか
  • バンダイナムコスタジオ側が、今後も任天堂タイトルや自社タイトルにおいて、新たな商号のスタジオとどのような形で協業していくのか

BNSS買収は、スプラトゥーンシリーズのアート制作に携わってきた協力スタジオを任天堂グループに組み込む動きであると同時に、シンガポールにビジネス拠点と開発拠点の二つを置き、アート制作リソースを含む開発体制を強化する取り組みとして位置付けられます。今後数年の任天堂タイトルや東南アジア向けの展開の中で、こうした二拠点体制がどのような形で表に現れてくるのかが、引き続き注目されそうです。

出典

任天堂:開発体制強化を目的としたシンガポール法人の株式取得について

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