ポケモン特許、異例の再審査へ。専門家が「世論が後押しした可能性」に言及

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任天堂と株式会社ポケモンが保有するゲーム関連の特許が、米国特許商標庁(USPTO)によって再審査されるという異例の事態となっています。この特許を巡っては、人気ゲーム『パルワールド』との関連も含め大きな議論が起きていました。専門家は、この決定について「世論の動きが当局の注目を集める一因になった可能性がある」とコメントしていますが、これはあくまで推測の域を出ず、公式文書で言及されたものではありません。

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ポケモン関連特許、異例の再審査へ

今回、再審査の対象となっているのは、任天堂と株式会社ポケモンが保有する米国特許第12,403,397号です。この特許は、プレイヤーキャラクターが「サブキャラクター」を召喚し、状況に応じて自動または手動で戦闘を行うといったバトルシステムを含む発明をカバーしています。実際のクレームは、キャラクター同士の位置関係や操作方法など、より具体的な条件を細かく定めていますが、その内容から、ゲーム特許の専門家からは「数百本規模のゲームに影響しうる」との懸念も示されていました。

今回、USPTO長官は、この特許のクレームに対し「特許性に関する実質的な新たな疑義(substantial new question of patentability)」が生じたとして、自ら再審査を命令しました。これは、新たに重視された先行技術との関係を踏まえ、クレームの新規性や進歩性(非自明性)などを改めて審査し直す手続きが始まったことを意味します。

日本の訴訟とは別の問題

ここで明確にしておきたいのは、今回の米国での特許再審査と、日本国内で進行している『パルワールド』関連の訴訟は、対象特許も管轄も異なる別の手続きだという点です。任天堂らは日本国内で、ポケットペア社を相手取り、複数の日本特許の侵害を主張して訴訟を提起しています。ただし、これら一連の動きが任天堂の特許戦略全体への注目度を高め、結果として米国でも監視の目が厳しくなっている可能性は、Aftermathなどの海外メディアによって指摘されています。

専門家が指摘する「世論」の影響

知的財産を専門とする法律事務所MBHBのパートナー弁護士、アンドリュー・H・ヴェルゼン氏は、今回の異例の措置について海外メディアの取材に応じ、専門的な見解を述べています。ヴェルゼン氏は、これはあくまで推測に過ぎないと断った上で、直近で任天堂関連の特許に対する報道やオンラインでの議論が急増している状況を指摘。『パルワールド』を巡る議論の活発化が、少なくとも今回の特許を長官の目に留まらせる「きっかけ」になった可能性はある、との見方を示しました。 

長官自らが動く「1%」の異例措置

ヴェルゼン氏が特に強調しているのが、「再審査を長官自らが開始した」という点です。通常、特許の再審査は特許権者や第三者の請求によって開始されます。海外メディアAftermathの報道によると、1981年の制度導入以来、約15,000件のリクエストがあった中で長官自らが開始したものは175件程度とされ、ヴェルゼン氏も「全体の約1%しかない」とコメントしています。この数値からも、今回の措置がいかに稀であるかがうかがえます。 

ネットの声は「諸刃の剣」か

ヴェルゼン氏は、今回のようにネット上の議論が特許庁の動きに影響を与えうることについて、「プラスとマイナスの両面がある」と分析しています。一方では、ゲーマーや開発者が不適切な特許を指摘することで、見過ごされたかもしれない問題を可視化し、審査を補助する健全な機能として働く可能性があります。しかし同時に、一部の大きな声が、正当な研究開発の成果であるイノベーションまでも標的にしてしまう危険性もあると同氏は警鐘を鳴らしています。

今回の出来事の経緯まとめ(2025年11月時点)

今回の一連の出来事を時系列で整理すると、おおよそ次のようになります。

  • 2024年初頭: 『パルワールド』が世界的にヒット。その内容を巡り大きな議論が巻き起こる。
  • 2024年9月: 任天堂と株式会社ポケモンが、日本国内でポケットペア社を相手取り特許侵害訴訟を提起。
  • 2025年9月2日: USPTOが、米国特許第12,403,397号を任天堂らに付与。その内容を巡り懸念の声が上がる。
  • 2025年11月: USPTO長官が、同特許に対して異例の再審査を命令。(←イマココ)

(補足)特許における「先行技術」とは

本記事で触れた「先行技術(prior art)」とは、ある発明が特許として出願されるよりも前に、すでに世の中に存在していた技術やアイデアを示す情報(特許文献、論文、製品、ウェブ上の公開情報など)の総称です。

特許が認められるには、その発明が新しく(新規性)、既存の技術から容易に思いつけない(進歩性・非自明性)ものである必要があります。

今回の「再審査(re-examination)」は、一度は認められた特許について、新たに重視される先行技術などを踏まえ、特許性に「実質的な新たな疑義」が生じた場合に行われる手続きです。結論として特許が維持される可能性もあれば、一部のクレームが修正・削除されたり、全体が無効と判断される可能性もあります。

出典

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