ソニーの技術責任者マーク・サーニー氏が、将来のゲームコンソールに搭載予定の新しいグラフィックス技術について語り、PS6の発売時期に関する憶測を呼んでいます。IGNが2025年10月9日に報じたところによれば、サーニー氏はプレイステーションの公式YouTubeチャンネルで公開された約9分間の動画「From Project Amethyst to the Future of Play: AMD and Sony Interactive Entertainment’s Shared Vision」の中で、ソニーとAMDが過去2年間取り組んできたグラフィックス技術の進歩について説明しました。
「数年後の将来のコンソール」への言及が注目を集める
動画の終盤で、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのマーク・サーニー氏は、「これらの技術はまだシミュレーション段階ですが、結果は有望で、数年後の次世代コンソールに搭載するのが楽しみです」と述べました。この「数年後の次世代コンソール」が、PlayStation 6(PS6)の2028年後半発売を示唆しているとして、注目を集めています。
この推測の根拠は、まず、PlayStationの発売サイクルが通常6〜7年(PS4:2013年→PS5:2020年)で、PS5発売から7〜8年後の2028年が妥当な時期と考えられる点です。また、2022年のMicrosoftの裁判資料で、ソニーがPS6を2027年以降に計画していると示唆されました。さらに、2025年6月のソニーCEO・西野秀明氏のインタビューで、次世代コンソールの開発が優先事項と確認されています。サーニー氏が語った「Project Amethyst」(AMDとの新グラフィックス技術)は、2026年頃の技術成熟を待つため、2028年後半が現実的な目標と見られています。
ただし、ソニーはPS6の発売時期を公式に発表しておらず、開発状況や市場次第で2027年末や2029年に変更される可能性もあります。それでも、過去の傾向や現在の情報から、2028年後半がPS6の有力な発売時期と考えられています。
3つの革新的なグラフィックス技術が明らかに
動画では、AMDのCEOジャック・ヒュン氏とサーニー氏が、次世代ゲーム体験を形作る3つの重要な技術革新について対談しました。スー氏が説明するところでは、「Project Amethystから共有ビジョンへ、私は良き友人であり仲間のゲーマーであるサーニー氏をオースティンに迎え、AMDとプレイステーションが共に形作る未来について振り返りました」としています。両氏は、ハードウェア設計の進化、機械学習を活用した新しいゲーム体験、そして今後10年のゲーム業界を形作る技術革新について意見を交わしました。
まず、最初の技術は「ニューラルアレイ」です。これは、GPU内の複数の処理ユニットを連携させ、一つの強力なAIエンジンのように機能させる技術です。従来は個別に動いていた処理ユニットが、データを共有しながらチームとして協力することで、AIを活用した高度なグラフィックス処理を効率的に実現します。これにより、より大規模な機械学習モデルを低負荷で処理でき、ゲームの画面がより美しく、動きも滑らかになります。
2つ目は「レイディアンスコア」と呼ばれる、光の表現を専門に扱う新しいハードウェアです。この技術は、ゲーム内の光や影をリアルタイムで計算する「レイトレーシング」や「パス・トレーシング」を高速化します。光の計算を専用ハードウェアに任せることで、GPUは色や質感の表現に集中できます。その結果、よりリアルで美しい光の表現を、迅速かつ効率的に実現できます。
3つ目の技術は「ユニバーサルコンプレッション」です。これは、メモリに送られるすべてのデータを評価し、自動的に圧縮して必要最小限のデータだけを送る技術です。従来はテクスチャ(物体の表面模様)だけを圧縮していましたが、この技術ではあらゆる種類のデータを圧縮します。データ量が減ることで、GPUはより詳細な表現、滑らかな動き、そして高い効率性を提供できます。
過去にもソニー幹部が次世代機について言及
ソニーの幹部が将来のプレイステーションコンソールについて曖昧な形で語るのは今回が初めてではありません。2025年6月、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのCEO兼社長である西野秀明氏は、ソニーの企業ウェブサイトに掲載された投資家向けインタビューで、クラウドゲーミング(ネット上でゲームを実行する技術)が普及する中でも次世代コンソールが必要かどうか、そしてSIEが開発中かどうかを直接問われました。
西野氏は、ソニーが11年以上にわたってクラウドゲーミングに取り組んできたことを説明しました。「PS3、PS4、PS5世代をサポートするクラウドゲーミングサービスを展開し、提供してきた品質を本当に誇りに思っています」と述べ、PS Plus PremiumやPS Portalでのクラウドストリーミングベータ版を例に挙げました。しかし、「クラウドゲーミングのビジネスモデルは、長期的に成長を続けるために採算が取れる形でなければなりません。技術面では順調に進んでいますが、インターネット回線の安定性は私たちがコントロールできる範囲外です」と課題も指摘しています。
さらに西野氏は、「クラウドゲーミングはプレイヤーがゲームにアクセスする新しい選択肢を提供していますが、大多数のプレイヤーはインターネット環境に左右されない、本体で直接ゲームを動かすプレイ体験を求め続けると考えています。PS5とPS5 Proがその考えを証明していると信じています」と述べました。
新しいコンソールが実際に開発中かという質問に対し、西野氏は「次世代コンソール戦略には大きな関心が寄せられています。現段階では詳細をお伝えできませんが、プラットフォームの将来は最優先事項です。プレイヤーがコンテンツやサービスに関わる新しい、より良い方法を探求することに力を注いでいます」と述べるにとどまりました。
次世代機の開発は既に進行中か
記事は、コンソールメーカーが現行機をリリースした直後に次世代機の開発を開始することは珍しくないと説明しています。実際、ソニーはPS4が2013年11月に発売された直後にPS5の開発を開始しました。この前例に従えば、PS6は既に5年以上開発が進められている可能性があります。さらに、2025年8月にはPS6がハンドヘルド型になり、ドッキング可能になるという噂が広まりました。IGNはPS Portalの進化を見ると、ソニーが明らかにハンドヘルド方向に舵を切っていると指摘しています。
西野氏は投資家向けインタビューで、PS Portalに関するソニーの戦略や、ハンドヘルドが次世代戦略の一部かどうかについても質問されましたが、明確な回答は避けました。
一方、スー氏は技術革新の動画の締めくくりで「これは単なる技術の話ではありません。これはパートナーシップ、友情、そして何か特別なものに向けた共有の旅についてです。信頼、友情、そして私たちが共に構築している革新的な未来に感謝しています」と語りました。PS5は2020年11月の発売から既にライフサイクルの半ばを過ぎており、マイクロソフトがXboxブランドのハンドヘルドをリリースする中、ゲーム業界は次の変化を迎えようとしています。




