龍が如くスタジオ代表で制作総指揮を務める横山昌義氏は、日経クロストレンド(日経エンタテインメント! 2026年3月号再構成)のインタビューで、シリーズの演出哲学がジョン・ウー監督の香港ノワール映画に根ざしていると語りました。横山氏はジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』を原体験として挙げ、エンタメにおいて重要なのは「整合性」ではなく「熱量」だと述べています。
同インタビューでは、新作『STRANGER THAN HEAVEN』(ストレンジャー・ザン・ヘブン)の映像表現にも話が及んでいます。実写のような映像美の追求とは異なる、独自の画作りを模索しているとのことです。
香港ノワール映画が育てた「かっこよければ何でもあり」の原体験
横山氏が演出面で多大な影響を受けたのは、ジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』をはじめとする香港ノワール映画だったといいます。冷静に見ると整合性はめちゃくちゃだが、それでも衝撃を受けたと振り返っています。第1作で命を落としたはずのキャラクターが、続編で「実は双子の弟がいた」として再登場するような大胆さを目の当たりにし、「かっこよければ何でもあり」と感じたとのことです。
「細かい理屈よりも、キャラクターが輝いているか、心が震えるか。エンタメにおいて重要なのは『整合性』ではなく『熱量』だと、あの映画たちが教えてくれました」 ——日経クロストレンド(日経エンタテインメント! 2026年3月号再構成)より
そうした演出哲学を軸の一つとして、シリーズは成長を重ねてきました。セガの『龍が如く』シリーズは2005年12月に第1作が発売され、2025年12月に20周年を迎えています。セガ公式サイトによると、シリーズ累計販売本数は2770万本を超えています(フルゲーム合計)。
実写に近づくだけではない——新作『STRANGER THAN HEAVEN』で模索する「龍が如くスタジオの味」
横山氏は、Unreal Engineなどの汎用エンジンによって実写と見まがう映像美が追求されている現状にも触れています。
「究極的にリアルを突き詰めていけば、行き着く先は『実写映像』と区別がつかなくなってしまうんじゃないか、という危惧があるんです。だからこそ、『STRANGER THAN HEAVEN』でも、あえてこれまでの『龍が如く』とも違う、独自の画作りを模索しています」 ——日経クロストレンド(日経エンタテインメント! 2026年3月号再構成)より
横山氏は「龍が如くスタジオにしか出せない味や空気感」を目指しているといいます。アニメが実写にならないからこそ愛されるのと同様に、実写映像と区別がつかなくなる方向とは異なる独自の表現で、「これが『龍が如く』だと一目で分かる世界を作り続けたい」と述べています。
「不器用だけど筋を通す」——キャラクターの普遍性が開いた海外市場
横山氏は海外で支持が広がったきっかけとして、10周年記念作『龍が如く0 誓いの場所』の開発時に初めて本気で海外向けのローカライズに取り組んだことを挙げています。海外ファンが惹かれたのは日本のヤクザ文化ではなく、桐生一馬や真島吾朗といったキャラクターの魅力だったと横山氏は語っています。「不器用だけど筋を通す生きざま」は国境や文化を超えて通じるものだったといいます。
春日一番の人物像が導いたRPGへのジャンル転換
2020年発売の『龍が如く7 光と闇の行方』では、主人公を春日一番に交代させるとともに、ジャンルをアクションからコマンドRPGへ一変させました。横山氏はこの決断について、主人公交代のリスクを抱える中で経営陣にGOサインを得るには抜本的な改革が必要だったと語っています。「ジャンルを変えるので、今までと違う層にも届く可能性があります」と提案したといいます。
ただし、勝算なしの提案ではなかったとも述べています。春日一番は桐生のように一人で何でも解決できるキャラクターではなく、仲間と助け合って進む人物である。そんな彼を描くにはパーティーを組んで戦うRPGが最適だと、確信していたとのことです。
セガによると、2024年1月に全世界同時発売された『龍が如く8』は、発売から1週間でシリーズ最速となる累計100万本を突破しています。
20年の外部環境の変化とコンプライアンスへの姿勢
シリーズが20年を重ねる間に、作品を取り巻く外部環境も変化しています。横山氏はコンプライアンスへの向き合い方についても触れ、シリーズのブランドコンセプトである「大人の悪い男の魅力」を表現するためには「魅力的な悪さと描くべきではない悪さを区別する必要があると思っています」と述べています。
※本記事は日経クロストレンド(日経エンタテインメント! 2026年3月号再構成)のインタビューをもとに、シリーズの販売本数や発売時期などの公開データを加えて再構成しています。



