米俳優組合SAG-AFTRAは2026年3月9日、カプコンの新作『ロックマン: デュアル オーバーライド』(海外タイトル:Mega Man: Dual Override)に対し、組合員に一切の演技業務を差し控えるよう指示する「Do Not Work Order」(以下DNWO)を発令した。カプコンが組合との署名手続き(signatory process)を開始していないことを根拠としている。この措置を受け、前作『ロックマン11 運命の歯車!!』(Mega Man 11)でロックマン(メガマン)役を務めた声優Ben Diskin氏が続投不可となったことを自ら公表している。
カプコン新作『ロックマン』へのDNWO発令と声優降板
SAG-AFTRAが発令対象としたのは、2025年12月11日のThe Game Awards 2025で発表されたシリーズ本編第12作『ロックマン: デュアル オーバーライド』だ。2027年発売予定で、対応プラットフォームはPS5、PS4、Xbox、Nintendo Switch、Switch 2、Steam。
約16万人の俳優・声優らが所属するSAG-AFTRAは公式声明で「『Mega Man: Dual Override』のプロデューサーは署名手続きを開始していない」と指摘し、「組合員は本作品に対する一切の演技業務を、追って通知があるまで差し控えるよう」通告した。
DNWOが発令された作品で組合員が演技業務を行うと、SAG-AFTRAのGlobal Rule Oneに抵触する。この規定は、組合との基本的最低協約を締結していない雇用者のもとで組合員が業務を行うことを禁じている。違反者は懲戒処分の対象となりうる。
Diskin氏はBlueskyで「私はもうメガマンの声優ではなくなった」と発表した。
「書面上のAI保護」と執行可能な保護の構造的な差
Diskin氏によると、カプコンから『ロックマン: デュアル オーバーライド』への復帰を打診されたものの、組合契約の保護なしで働くことが条件だった。
同氏はBlueskyでこう記している。「『声がAI開発に使用されることはないと書面で保証する、完全なAI保護が整っている』と伝えられたが、同時に『このプロジェクトは組合契約にはしないということが、カプコンから確実に伝えられた』」
一方で同氏は、非組合契約のAI保護を執行する現実的な手段がないことを指摘している。「こうした非組合契約を執行する唯一の方法は、カプコンのような巨大企業を個人で相手取り、AIが使用されたと思ったら訴訟を起こすことだ。自分には長期にわたる法的闘争を乗り越える精神的、感情的、経済的な余裕がない」
書面上の保護が存在しても、組合契約を通じた執行の裏付けがなければ個人で大企業を訴える以外に手段がない——これがDiskin氏の判断の核にある構造的問題だ。同氏は低予算の組合契約でも構わないとカプコンに伝えたが、実現しなかったと述べている。なお『ロックマン11 運命の歯車!!』は2024年12月31日時点で200万本を販売し、シリーズ最高売上を記録した作品だ。
Diskin氏が伝えるカプコン側の発言内容は同氏による間接引用であり、カプコンからの公式声明やコメントは2026年3月17日時点で確認されていない。
SAG-AFTRAストライキの経緯とDNWOの位置づけ
SAG-AFTRAはAI技術をめぐる権利保護を主要争点に掲げ、2024年7月末にビデオゲーム業界に対するストライキを開始した。約11か月にわたる争議の末、2025年6月9日に暫定合意へ到達し、6月11日にストライキを停止している。7月9日の組合員投票で合意が批准された。
今回のDNWOはこのストライキとは別の措置にあたる。ストライキが業界全体を対象とした包括的な争議行為だったのに対し、DNWOはカプコンが個別タイトルについて署名手続きを開始していないことへの対応だ。
カプコンは本件について公式コメントを出していない。Kotakuが問い合わせたが回答は得られず、Shacknewsも「カプコンはコメントしていない」と伝えている。
※本記事はEurogamerの報道をもとに、関連情報を加えて再構成しています。
出典
- SAG-AFTRA:Do Not Work Order — Mega Man: Dual Override
- Ben Diskin(Bluesky):投稿
- Eurogamer:SAG-AFTRA issues a Do Not Work Order against Capcom for “failing to initiate the signatory process”



