ファイナルファンタジーやドラゴンクエストで知られるスクウェア・エニックスが、大株主から「経営改善要求」を受けています。シンガポールの投資ファンド3D Investment Partnersが100ページを超える資料を公開し、同社株14.36%を保有する立場から他の株主にも「率直な意見の共有」を呼びかけています。
なぜ今、大株主が動いたのか
3D Investment Partnersは、企業の経営に積極的に関与する「アクティビスト投資家」として知られています。同ファンドは2025年4月時点でスクウェア・エニックス株の5.47%を保有していることが判明。その後も株式を買い増し、現在は14.36%を保有する大株主となりました。
その後、同ファンドは経営陣への働きかけを試みましたが、期待した成果を得られなかったとされています。こうした経緯を経て、今回の株主への公開呼びかけに至りました。
文書で指摘された3つの経営課題
公開された100ページ超の資料では、主に3つの観点から問題が整理されています。
第一に、業績面の問題です。3D Investment Partnersは、スクウェア・エニックスが「世界水準のフランチャイズを持つ日本を代表するブランド」でありながら、過去3年間にわたり収益成長が停滞し、利益率も低迷していると指摘しています。任天堂、カプコン、バンダイナムコ、コナミといった競合他社と比較して低調であるとの分析です。
第二に、事業構造の問題です。コンソールゲームおよびモバイルゲーム部門の不振に加え、ゲーム開発資産に関する大規模な減損損失を問題視しています。さらに、アーケード事業や出版事業については「シナジーのない事業」であり、企業価値を押し下げていると評価しています。
第三に、中期経営計画への不満です。スクウェア・エニックスが「再起動の3年間」を掲げた中期経営計画(2025年3月期から2027年3月期)について、3D Investment Partnersは「不十分かつ曖昧」と指摘。長期的な回復に向けたビジョンや数値目標が具体性を欠いていると主張しています。
CEOへの提案と企業側の対応
3D Investment Partnersは2025年10月、スクウェア・エニックスのCEOに対してこれらの問題点と改善提案を提出しました。しかし、企業側からは「現行計画が適切」との簡潔な回答のみだったとされています。この対応を受け、同ファンドは他の株主への公開呼びかけという手段に転じました。
3つの批判に共通する論点
3D Investment Partnersが挙げた3つの指摘には、共通する批判軸があります。それは「具体性の欠如」です。業績改善の道筋、事業ポートフォリオの最適化方針、そして中期計画の実行手段のいずれにおいても、明確な計画や数値目標が示されていないという主張です。
今後の焦点
企業がアクティビスト投資家の要求にどう応じるかは、ケースにより異なります。たとえばガンホーは、別のアクティビスト投資家からCEO解任などの株主提案を受けていますが、これを否決しています。スクウェア・エニックスが3D Investment Partnersの働きかけにどう対応するか、今後の株主総会に向けた動向が注目されます。




