小島監督は香港で開催されたDisney Asia Pacific Showcaseで、CNNのインタビューに応じました。話題に挙がったのは『Death Stranding 2: On the Beach』(以下、Death Stranding 2)です。
ポストアポカリプスの世界で荷物を運ぶこの作品は、スローペースで癒やしのあるゲームとして知られています。その一方で小島監督は、快適さを高めるだけでは体験が長く残りにくいと語りました。
記憶に残るゲーム体験とは何か。その鍵として示されたのが、「違和感」や「摩擦」をあえて残すという発想です。
「快適すぎると残らない」——摩擦設計の核心
小島監督はインタビューで、ゲーム体験が記憶に残る条件として「違和感」や「摩擦」に言及しました。
「10年後、20年後も忘れないものは、少しの違和感や摩擦を残すもの」「快適すぎるものはプレイヤーの中に残らない」——。この考えについて、小島監督は食べ物を引き合いに出し、「少し消化しにくいものが体の中に残り、何度も反芻しながら、徐々に理解していく」と説明しています。
さらに、「何度も噛まなければすべてを理解できない」よう、意図的に設計しているとも語りました。
『Death Stranding 2』は社内データとして、発売後1カ月時点でクリア率79%が示されています。CNNは比較として、他の人気オープンワールド作品のクリア率は、通常その半分程度か、それ以下にとどまるケースが多いとも伝えています。ただし、クリア率の高さと「摩擦」を残す設計思想との因果関係まで、この記事だけで断定することはできません。
「飽きないプロジェクト」が最優先——創作スタンス
CNNは、小島監督の創作姿勢として「まず自分が飽きないプロジェクトを見つけることが第一」であり、プレイヤーの楽しさは時系列で見ると後回しになり得る、と紹介しています。小島監督は、ゲーム開発には4〜5年かかり、24時間体制で膨大なエネルギーが必要になるため、「心から愛せるものでなければ耐えられない」とCNNに語ったといいます。
映画的手法とカットシーン——27分に及ぶ長尺演出
小島監督の作品は、映画的なカットシーンを多用する点でも知られています。
IGNによる推計では、『Death Stranding 2』において、総プレイ時間のおよそ15%がカットシーンに割かれているとのことです。
CNNは、同じ計算方法を用いた場合、『Metal Gear Solid 4』ではその割合が40%に達していたと伝えています。同作には1本で27分に及ぶカットシーンがあり、CNNはこれを最長のビデオゲーム用カットシーンとして、ギネス世界記録に認定されていると伝えています。
ゲームは「残る」メディアになれるのか
映画や小説が何十年も心に残るのなら、ゲームも同じように残り得るのではないか。CNNは、そうした問いを記事全体の軸に据えています。その視点から、小島監督の発言や作品づくりの姿勢が紹介されました。
コジマプロダクションは現在、Disney+向けのアニメシリーズと、A24による実写映画プロジェクトの両方に関与しています。
CNNは、小島監督がゲームデザイナーと監督の間を歩いてきた存在だと位置づけた上で、「ゲーム固有の残り方」をどう捉えているのかにも目を向けました。
今回のインタビューでは、そうした問題意識につながる言葉が随所で語られています。



