『ファイナルファンタジーVII リバース』ディレクター浜口直樹氏が「AIより優れたクリエイターでありたい」と目標を掲げ、小島秀夫監督は「友人」と語りました。表現は異なりますが、両者とも創造の主導権は人間が持つという認識で一致しています。
浜口直樹氏「AIより優れたクリエイターでありたい」
GamesRadar+は浜口直樹氏にインタビューを実施し、2025年10月24日にその一部を記事として公開しました。記事ではAI開発論について詳しく報じられており、業界の現状とFF7リメイクプロジェクトについても幅広く質問が行われています。
スクウェア・エニックスは現時点で、AI利用に関する明確な方針やルールを定めていません。浜口氏はこの点を前置きした上で、個人的な立場として見解を述べています。企業全体としての方針が存在しない中、各開発者が独自の判断でAI利用を模索している状況です。
浜口氏は「創造面でのAI利用については、少なくとも現時点では、私としては踏み切れない」と語りました。翻訳者を介したインタビューで、クリエイティブな側面へのAI導入には慎重な姿勢を示しています。この発言からは、AI技術が急速に発展する中でも、創造的な判断は人間がすべきだという考えが伝わってきます。
浜口氏は「クリエイターとして、チームの一員として考えると、AIがどれほど創造の領域に踏み込んで関わろうとしても、人間として、私たちのチームは、AIよりも優れたものを作れると言えるだけの十分に優れたクリエイターでありたいと思います」と語りました。慎重なだけでなく、AIより優れたクリエイターを目指し、「絶対にそれを推し進める」と決意を語っています。
リソース収集には活用も「そこで止まる」
浜口氏はAI利用をすべて否定しているわけではありません。資料集めや参考資料探しなど、作業を助ける使い方なら、AIも役に立つと考えています。情報を集める作業を効率的にする、そうした限られた使い方なら、AIを使ってもいいという考えです。
ただし浜口氏は「そこで止まる」とはっきり言いました。資料集めや下調べの段階では使ってもいいが、創造的な判断や表現の部分にAIを使うことは認めていません。あくまで補助的な道具として使うのと、創造の中心として使うのは違うという考えを示しています。
小島秀夫氏はAIを「友人」と捉え、効率化に活用
小島秀夫氏は2025年9月26日にWiredのインタビューでAI開発論について語り、その内容がInstagramで公開されました。GamesRadar+は2025年10月16日にこの投稿を基に記事を作成しており、浜口氏の見解と対比する形で小島氏の考えが紹介されています。

小島氏はAIを「友人」と呼びました。AIを敵や脅威ではなく、一緒に働く仲間として見ているということです。『メタルギア ソリッド』『デス・ストランディング』を作った小島氏にとって、AIは開発を支える存在です。
創造的な部分については「クリエイティブは僕」とはっきり述べ、AIは作業を効率的にするために使うと説明しています。アイデアを考えたり、創造的な判断をするのは人間の仕事で、AIには違う役割があるという考えです。この点は浜口氏と同じで、創造の主導権は人間が持つという考えを共有しています。
小島氏は「面倒なことはAIに任せればコストも下がるし速く作れる」と具体的な活用方法を示しました。ゲーム開発には、創造性がいらない繰り返し作業がたくさんあります。そういう作業をAIに任せれば、クリエイターはもっと創造的な仕事に時間を使えると考えています。
さらに小島氏は「AIを利用するというか、一緒に物創りをする」という表現を用いました。AIを単なる道具として使うのではなく、一緒に働く仲間として見ています。この考え方は、浜口氏の「AIより優れたクリエイターになりたい」という目標設定型の表現とは異なるアプローチですが、どちらも創造は人間が担うという基本的な考えは同じです。
創造の主導権は人間が持つ点で共通
浜口氏と小島氏には共通点があります。どちらも「創造は人間が主導する」という考えで一致していて、AIに創造的な判断を任せることには慎重です。クリエイターとして、人間が中心になって作品を作るという姿勢は同じです。
違いは、AIとの付き合い方です。浜口氏は「AIより優れたクリエイターになりたい」という目標を持ち、人間が創造を担うことを大切にしています。一方、小島氏は「AIと一緒に作る」という考えで、役割を分けて効率を上げることを重視しています。基本的な考えは同じでも、AIとの関わり方の表現には違いがあります。
ゲーム業界全体では、AI利用についてはっきりした方針がまだ決まっていません。スクウェア・エニックスのように会社としてのルールがない中、それぞれのクリエイターが自分で判断しながら試行錯誤しています。技術の進歩に業界がどう対応するか、これからも話し合いが続きそうです。
まとめ
浜口直樹氏は、人間がAIより優れたものを作れると信じ、チームの創造力を高めることを目指しています。小島秀夫氏は、創造は人間が主導し、効率を上げるためにAIを使うという考えです。スクウェア・エニックスを含む業界全体でAI利用の明確なルールがない中、それぞれの開発者が自分で判断しながらAIの使い方を探っています。




