「審査員はゲームをやってない」グラミー賞『Clair Obscur』落選でアワードへの不信感広がる

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2026年に開催される第68回グラミー賞のノミネート作品が発表されましたが、ゲーム音楽部門を巡ってSNSを中心に大きな波紋が広がっています。有力候補と目されていた仏製RPG『Clair Obscur: Expedition 33』がまさかの落選。この結果を受け、SNSでは「審査員はゲームをプレイしていない」といった怒りの声が噴出し、音楽業界最高峰のアワードに対する不信感が急速に高まっています。

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グラミー賞ゲーム音楽部門、有力候補『Clair Obscur』がまさかの落選

米国時間2025年11月7日(日本時間8日)、米レコーディング・アカデミーは第68回グラミー賞の各部門ノミネート作品を発表しました。2023年に新設された「最優秀ビデオゲーム・インタラクティブメディア作曲サウンドトラック賞」も候補が明らかになりましたが、そのリストに今年屈指の傑作と名高い『Clair Obscur: Expedition 33』の名前がなかったことで、多くのゲームファンに衝撃が走っています。

『Clair Obscur』の落選が単なる「残念な結果」で済まされないのは、同作のサウンドトラックが客観的な成功を収めていたためです。作曲家Lorien Testard氏が手掛けた本作の楽曲は、米ビルボードのクラシック関連チャートにおいて、10週連続で1位を獲得という快挙を達成。さらに、ワールド・サウンドトラック・アワード(WSA)で「Best Game Music」賞を受賞したほか、2025年10月時点でのストリーミング再生回数は3億3300万回を超えるなど、商業的にも批評的にも高く評価されており、ノミネートが有力視されていました。

今回の選考で候補から外れたのは『Clair Obscur』だけではありません。小島秀夫監督の最新作で、こちらも音楽への評価が高かった『デス・ストランディング2』もノミネートを逃しており、選考基準そのものへの疑問を深める一因となっています。多くのファンにとって、今回の結果は納得のいかないものとして受け止められています。

2026年のノミネート作品と選考の仕組み

では、実際に誰がノミネートされたのでしょうか。2026年のゲーム音楽部門の候補に選ばれたのは以下の5作品です。

  • Avatar: Frontiers of Pandora – Secrets of the Spires
  • Helldivers 2
  • Indiana Jones and the Great Circle
  • Star Wars Outlaws: Wild Card & A Pirate’s Fortune
  • Sword of the Sea

このうち2作品は、ゲーム本体ではなく追加コンテンツ(DLC)としてリリースされたアルバムが評価対象となっています。さらに、選考の仕組み自体も議論の的です。グラミー賞の選考対象期間は2024年8月31日から2025年8月30日までですが、2024年2月に発売された『Helldivers 2』がノミネートされています。これは、ゲーム本体ではなく、対象期間内である2024年9月20日にリリースされた「サウンドトラックアルバム」を基準としたためです。こうしたサウンドトラックアルバムの発売日を基準とするルールが、一部のファンから選考の公平性に対する疑念を招いています。

過去の受賞作と候補作の顔ぶれ

ビデオゲーム音楽部門が設立されてからの歴史を振り返ると、特定の顔ぶれが見えてきます。2023年の初代受賞作は『アサシン クリード ヴァルハラ』のDLC、2024年は『スター・ウォーズ ジェダイ:サバイバー』、そして2025年は名作のリメイク版『ウィザードリィ』でした。今年の候補作を見ても、『アバター』『インディ・ジョーンズ』『スター・ウォーズ』といった世界的に有名なIPを原作とする作品が半数以上を占めています。このことから、知名度の高いIPや既存シリーズの追加コンテンツが候補に挙がる例が多く見られます。

「審査員はゲームを聴いてない」ファンの怒りと3つの推測

今回の結果に対し、ファンからの反発は熾烈を極めています。海外のSNS、X(旧Twitter)では「史上最大の失態」といった厳しい批判や、選考プロセスを揶揄するような投稿も見られました。この騒動は、単なるファンの不満に留まらず、アワードそのものへの信頼を揺るがす事態に発展しています。

なぜこのような事態に至ったのか。海外メディアやファンの間では、いくつかの理由が推測されています。

特に多くのメディアやファンから指摘されているのが、知名度の高いIPが有利になる**「大手IPバイアス説」と、審査員がゲームを深く理解していないのではないかという「審査員の無理解・無関心説」**です。これらは、SNS上の「審査員はゲームをプレイしていない」といった声にも繋がっています。

加えて、一部の海外メディアでは、グラミー賞がアメリカ中心のアワードであることから、フランス産である本作が不利に働いたのではないか、という見方も示されています。

「ゼノブレイドの再来か」ゲームと音楽、評価の溝は埋まるのか

今回の事態を受け、一部のファンは、過去に主要アワードで評価が伸び悩んだ「ゼノブレイド」シリーズの扱いを想起させる、と指摘しています。傑作が必ずしも報われるとは限らないという経験は、ゲームファンにとって既視感のある光景なのです。

結局のところ、『Clair Obscur』の落選劇は、単一の作品が賞を逃したという話に留まりません。これは、音楽業界の権威ある評価基準と、実際にゲームをプレイし、その世界に没入することで音楽の価値を判断するファンの評価基準との間に、依然として大きな溝が存在することを象徴する出来事と言えるでしょう。ゲーム音楽がカルチャーとして成熟する中で、既存のアワードがその進化に追いつけていない現実を、今回の騒動は改めて浮き彫りにしたのかもしれません。

出典

VGC / Game Rant / Polygon / Tech4Gamers / Gaming Amigos / Full Cleared / Khel Now

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