『ロックマン』の稲船敬二、IP依存と続編偏重に警鐘——韓国講演で語った“守りの危うさ”

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ゲームクリエイターの稲船敬二氏が、2025年11月6日から7日にかけて韓国で開催された「コンソールゲーム開発者カンファレンス 2025」に登壇しました。氏は講演の中で、現在のゲーム業界がIP(知的財産)の知名度や既存ジャンルに過度に依存している現状について懸念を表明しました。

講演では、「あるシリーズの11作目や、あるIPの13作目といった選択も必要かもしれないが、ゲーム開発の本質と創作の情熱を考えれば、それがゲームシーンの全てになってはならない」と述べ、続編や類似作品に偏重する風潮に疑問を投げかけました。

また、氏は既存シリーズの続編や人気ジャンルの作品自体を否定するものではないとし、「それ『だけ』になってはいけない」と説明。多様な新規作品が生まれることの重要性を強調しています。

成功体験がもたらす「副作用」にも言及し、過去の成功に固執することで、クリエイターが新たな挑戦を避けるようになる傾向があると指摘。自身のキャリアを振り返り、『ロックマン』だけでなく、『鬼武者』、『ロストプラネット』、『デッドライジング』など多様なジャンルの新規IPを手掛けてきたのは、過去の成功に留まらなかったからだと自己分析しています。

氏は、新たな挑戦の価値を説明する例として、野球の大谷翔平選手を挙げました。当初は批判も多かった「二刀流」を成功させた例に触れ、「確率が低いとしてもやり遂げる人は必ずいる」との考えを示しました。

講演後の質疑応答では、業界を目指す学生からの質問に「どの会社に入るかよりも、自分が何をしたいのかが重要だ」と回答。自身の経験として、特定の会社を目指したのではなく「自分の絵を認めてもらいたい」という動機が原点であったことを明かしています。

稲船氏が同様の問題意識を表明するのは今回が初めてではありません。2009年の東京ゲームショウにおいても、日本のゲーム業界が過去の成功に安住しているといった趣旨の発言を残しています。

講演を行った稲船氏は、カプコンを退社後の2010年にComceptを設立し、代表を務めました。その後、同社は2017年にレベルファイブのグループ企業となりましたが、稲船氏は2024年中頃にレベルファイブを退社しました。そして現在は、ロケットスタジオにて執行役員を務め、新たなゲーム制作に携わっています。

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