『ファイナルファンタジーVII リバース』でディレクターを務めるスクウェア・エニックスの浜口直樹氏が、海外メディアのインタビューに応じ、特定の魅力に特化したAA規模のゲーム開発に挑戦したいとの意欲を語りました。これは、AAAタイトルの開発費が高騰する現状を背景に、クリエイターとしての個人的な思いを明かしたものです。
海外メディアの取材で明かされたクリエイターとしての本音
この発言は、海外の有力ゲームメディア「GamesRadar+」が2025年11月1日に公開したインタビュー記事の中で明かされたものです。インタビュー中、浜口氏が自身の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー(GOTY)」として高く評価しているJRPG風のAAタイトル『Clair Obscur: Expedition 33』に話題が及んだ際、自身のゲーム開発に対する考えを述べました。
AAAとAA、浜口氏が語る開発思想の違い
浜口氏はまず、自身が手掛ける『FF7リバース』のようなAAAタイトルの開発コストが「非常に高騰している」という現状に言及しました。その上でAAA作品は「どの方向から見ても、どの要素をとっても非常に高品質」であることが求められると説明しています。
一方でAAゲームは、限られた開発リソースの中で「一つの側面を選び、それを突き詰めて高いレベルに引き上げる」開発スタイルだと分析。浜口氏の発言を基に両者の特徴を整理すると、あらゆる要素で高水準が求められるAAAが「総合力」で勝負するのに対し、AAは特定の魅力でプレイヤーを惹きつける「一点突破の鋭さ」が魅力だと言えます。
そして浜口氏自身も、まさにこのAA的なアプローチに強い関心を示しており、「一つの側面に本当に集中し、その側面を可能な限り楽しくする」ようなゲームを作ってみたい、と自身の願望を語りました。
「立場を無視できれば」——大作を率いる責任と個人的な創作意欲
ただし、この発言はあくまで「スクウェア・エニックスでの自身の立場や、会社が求める役割、要件といった現実を完全に無視できるならば」という、個人的な願望であると前置きしています。これは、世界的な期待を背負うAAAシリーズのディレクターという重責を担う立場と、純粋に一つの面白さを追求したいという一人のクリエイターとしての創作意欲との間に、ある種の「距離」があることを示唆しています。
AAゲームの隆盛は「業界にとって健全」
こうした個人的な願望を語る一方で、浜口氏は現在のゲーム市場でAAゲームが注目を集めている状況を「業界にとって非常に健全だ」と歓迎する姿勢も見せました。多様な規模や方向性の作品が数多く生まれている現在の市場を、業界全体の発展に繋がるものとして肯定的に評価していることがうかがえます。
業界を代表するクリエイターからこうした発言が出たことは、今後のゲーム業界の多様性を考える上で非常に興味深いものと言えます。




