Nintendo Switch 2向けにフルリメイクされた『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。その特徴的な人形劇風のビジュアルは、原作を遊んだことのなかったアートディレクター・信太文氏らが、28年前の作品から感じ取った「懐かしさ」を表現しようとした結果、生まれたものだった。
信太氏は、任天堂の「開発者に訊きました」で、今回のプロジェクトに参加してから初めてNINTENDO 64版『時のオカリナ』をプレイしたと明かしている。『ブレス オブ ザ ワイルド』ではキャラクターのデザインやモデリングなどに携わり、『ティアーズ オブ ザ キングダム』ではキャラクターリードを務めた人物だが、28年前にこれほど完成された作品が存在していたことに驚いたという。
そんな信太氏が原作に見いだしたのは、美しくもどこか影のあるハイラルの風景と、色彩豊かで個性的なキャラクターたちの対比だった。リメイクでは、原作の持つ独特の雰囲気を残しながら、実在するかのような密度の高い世界を構築し、そこにキャラクターたちを自然に溶け込ませる必要があった。
そこで開発初期から掲げられたキーワードが、「人形劇っぽさ」と「特撮っぽさ」だ。
人形劇も特撮も、現実をそのまま再現しているわけではない。それでも、架空の世界にキャラクターが本当に存在しているような説得力がある。信太氏らは、こうしたアナログ的な表現に、原作から感じた独特のノスタルジーと通じるものを見いだしたという。
その方向性を具体化するため、リンクやゼルダたちのスケッチを描く一方、デクの樹サマの3Dモデルも制作。光や質感を細かく調整して、まるで生きているかのような存在感を与えた。こうしてキャラクターと世界が一体となったビジュアルを、シリーズプロデューサーの青沼英二氏に提案した。
興味深いのは、1998年の原作開発に携わった青沼氏自身は、当時そのような懐かしさを表現しようとは考えていなかったことだ。
青沼氏によれば、NINTENDO 64版の開発当時は、その時代の最先端のものを作っているつもりだったという。ところが28年後、その作品に触れた若い開発者たちはノスタルジーを感じ、それを人形劇のようなアナログ的表現へと結びつけた。青沼氏は、原作の開発者としても、その発想に納得できたと振り返っている。
また青沼氏は、海外メディアPolygonのインタビューでも、人形劇風の表現を提案した若いアーティストとは世代が異なるにもかかわらず、提示されたスケッチから自身も懐かしさを感じられたと語っている。ただし、人形劇らしい見た目を作るだけで完成ではなく、そこから細部を磨き上げ、キャラクターに生命感を与えることが重要だったという。
信太氏らが目指したのも、原作のデザインを単に精密に再現することではなかった。28年を経てキャラクターの見た目が大きく変わっても、遠くから眺めたときに、かつて出会った人物が今もそこにいると感じられること。その親しみのある存在感を残すため、デザイナーたちは原作のキャラクターそれぞれの特徴を捉え直しながら、新たなデザインを模索していった。




