『NieR』『ドラッグ オン ドラグーン』などで知られるゲームクリエイターのヨコオタロウ氏が、自身のゲーム制作を「穴埋め」と表現し、『ICO』や『斑鳩』を遊んだ際には、あまりに完成されていたため「このジャンルのゲームは、僕は作らなくていい」と思ったと語った。
これは、9月22日・23日に東京日仏学院で開催されたイベント「The Tenth Mosaic」で、『ENDER LILIES』『ENDER MAGNOLIA』のディレクター・岡部佳祐氏と行った対談で明かしたもの。電ファミニコゲーマーが10月5日に公開したレポートによると、岡部氏が優れた作品への嫉妬心を制作の原動力にしていると話したのに対し、ヨコオ氏は「僕は他の作品に対して嫉妬を感じることはない」としたうえで、自身の創作姿勢を説明している。
ヨコオ氏は、ゲーム業界で「これまだ誰もやってないからやんないといけないな」という義務感を持ち、ずっと「穴埋めする気持ち」で仕事をしているという。作風まで同じで、すでに非常に優れた作品が存在するなら「別に新しく作らなくていい」とまで考えているそうだ。
その具体例として挙げたのが『ICO』と『斑鳩』だった。両作について「あまりにパーフェクトだった」と振り返り、「このジャンルのゲームは、僕は作らなくていいんだ」と思ったという。それは優れた作品への嫉妬ではなく、「その穴はもう埋まっているから、違うところを埋めなきゃ」という感覚なのだと説明している。
そしてヨコオ氏は、自身の作品へ話をつなげ、「僕のゲームがひどいことがいっぱい起きる下品なゲームなのは、綺麗なところをみんな先駆者に奪われてしまったからなんだと思います」と語った。ここでいう「先駆者」は『ICO』『斑鳩』だけを指すものとして語られているわけではないが、すでに完成された領域には自分が重ねて参入せず、まだ空いている場所へ向かうという考えが、自身の作風にまで結び付けて説明されている。
こうした「穴を埋める」という考えそのものは、ヨコオ氏が以前から繰り返し明かしてきた。2021年にはエンジニアtypeのインタビューで、『NieR: Automata』制作時にも「面白いゲームはもう作らなくていい」とスタッフに話していたことを振り返り、すでに世の中に面白いアクションゲームが数多く存在する以上、同じものをもうひとつ作る意味は薄いとの考えを説明。「ゲーム業界でまだ誰もやっていないこと」を穴にたとえ、それを探して埋め続ける姿勢を語っている。
同年には自身のnote「世界の穴を埋めていく。」でも、「世の中でやられていない事」や「まだ実現できてない事」を“穴”と呼び、それを埋めなければならないという強迫観念のようなものが創作衝動の根にあると記していた。
さらに遡ると、2013年のファミ通.comのインタビューでも、『ICO』『斑鳩』を「宝物のように好きなゲーム」として挙げながら、それらを見て「これが作りたかった」と思うのではなく、「自分は違うものを作ろう」と考えるタイプだと話している。
一方で、ヨコオ氏は自身の作品が暗い方向へ向かった理由について、これまで別の角度からも説明している。2023年には『ドラッグ オン ドラグーン』について、『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』が存在する中で同じ場所を狙う意味はなく、当時の市場で残されていたものを考えて「じゃあ暗いゲームにしようかな」と判断したと振り返っている。
今回の発言は、そうした過去の説明を置き換えるものではない。ただ、『ICO』『斑鳩』のような完成された作品を見れば「その穴はもう埋まっている」と別の場所へ向かい、その結果として自分のゲームには酷い出来事が多く起こる――長年語ってきた「穴埋め」の創作姿勢を、自身が“下品”と表現する作風にまでつなげた説明となっている。





















