DLSS 5に開発者が一斉反発——ゲーミング売上約7%のNvidiaはなぜこの技術を推すのか

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NvidiaがGTC 2026で発表したDLSS 5に対し、複数のゲーム開発者がKotakuの取材で批判の声を上げた。『Nuclear Throne』などで知られるRami Ismail氏は、Nvidiaの売上の約90%をデータセンターが占めるという事業の成り立ちをふまえ、DLSS 5を「投資家にNvidia製品の需要があると思い込ませるための演出」だと語っている。ゲーミング&AI PC部門が総売上の約7%にとどまる同社が、ゲーム向け技術を大きく打ち出す裏には、GPU需要を正当化するという構造的なねらいがあるとIsmail氏はみている。

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ゲーミング&AI PC部門の売上約7%——数字が示すNvidiaの重心

NvidiaのFY2026(2026年1月期)の通年決算を見ると、総売上2159億ドルのうちデータセンター部門が1937億ドル(前年から68%増)で約90%を占めた。ゲーミング&AI PC部門は160億ドル(前年から41%増)にとどまり、割合にして約7%だ。Nvidiaにとって収益の柱はゲームではなくデータセンターであり、DLSS 5はこの事業の構造のなかで発表された技術だ。

NvidiaのJensen Huang CEOはDLSS 5を、コンテンツを制御できる生成AIであるために「ニューラルレンダリング」と呼んでいると説明している。GTC 2026の報道向けQ&Aで同氏は批判者を「完全に間違っている」と退け、DLSS 5は開発者の「直接的な管理のもとにある」と語った。

「ゲームとも、ゲーム開発者とも関係ない」

Ismail氏の批判は、この収益構造とDLSS 5を推し進める動機を正面から結びつけたものだ。同氏はKotakuの取材に対し、過去のDLSSについては「少し見当違いだったかもしれない」としつつもニーズは満たしていたと評価する一方で、DLSS 5は「誰も待っていなかった」ものだと語っている。そのうえで、同氏は次のように述べた。

「Nvidiaがこれを推し進める理由として思いつくのは、あらゆる産業のあらゆる工程を粗悪な生成物で溢れさせ、人々の老後の蓄えで建てられる巨大な粗悪生成物センターに本当にNvidia製品の需要があるのだと投資家に信じ込ませ続けること以外にない。これはゲームとも、ゲーム開発者とも、ゲーマーとも関係ない」

ゲーミング&AI PC部門の売上が全体の約7%という数字は、Ismail氏が指摘する「ゲーマーのための技術ではない」という見方に、はっきりとした裏づけを与えている。Kotakuの記事では、複数の開発者が、Nvidiaがデータセンター向けAI需要をけん引していることでPCパーツが値上がりし、結果としてDLSS 5の恩恵を受けられるゲーマーは限られると指摘している。Doinksoft社のゲームプレイ/技術デザインリードであるCullen Dwyer氏はKotakuに対し、平均的なゲーマーにはDLSS 5を使えるハードウェアを買う余裕がないと語った。

自社タイトルが使われたスタジオにも事前の連絡なし

DLSS 5の発表をめぐっては、関わったスタジオの内部からも混乱の声が上がっている。Insider Gamingの報道によると、UbisoftやCapcomなどDLSS 5の発表に自社タイトルが使われたスタジオの一部の開発者は、発表の内容を事前に知らされていなかったという。

「一般公開と同時に知った」 ——Insider Gamingが伝える匿名のUbisoft開発者の証言

同じくInsider Gamingによれば、Capcomの開発者は、同社が『バイオハザード レクイエム』をはじめとする開発中のプロジェクトにおいて「AI反対」の立場をとってきたと語り、DLSS 5の発表が生成AIに対する社内の方針の転換を招きかねないと心配しているとのことだ。Todd Howard氏がDLSS 5の発表に直接関わっていたBethesdaも、Digital Foundryの投稿に返信する形で公式Xアカウントから声明を出し、DLSS 5の適用は「非常に初期段階の見せ方」であるとした上で、アートチームがライティングと最終的な仕上がりをさらに調整すると説明。すべてが「アーティストの管理のもとにあり、プレイヤーにとって完全に任意(使うかどうかは自由)」だと述べている。

作り手の意図を上書きする技術への不安

開発者の批判にはもうひとつの柱がある。Huang氏が「コンテンツを制御できる生成AI」と呼ぶDLSS 5が、開発者が作り込んだ映像表現の意図を上書きしてしまうという問題だ。元AAA開発者でインディー開発者のAndi Santagata氏はKotakuに対し、DLSS 5がオンの状態では開発者が意図した映像は決して得られないと語った。Blueskyではコンセプトアーティストで生成AI関連訴訟の原告としても知られるKarla Ortiz氏も、開発者が意図をもって行ったアートディレクション(映像表現の方向づけ)に対する侮辱だと批判している。

Huang氏は「開発者の管理のもとにある」と繰り返す。とはいえ、Insider Gamingの報道にあるように、発表に関わったスタジオの開発者すら事前に内容を知らされていなかった。

※本記事はKotakuの報道をもとに、関連する情報を加えて再構成しています

出典

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