『アナザーエデン 時空を超える猫』や『ハーヴェステラ』のプロデューサーとして知られる高大輔氏が、2026年1月に株式会社Impachi(インパチ)を設立し、新作ゲームの開発を進めている。AUTOMATONのインタビューの中で高氏は、スクウェア・エニックス退職後の2年間をAI研究に費やした経緯と、Impachiにおける生成AIの採用・不採用の方針を具体的に語った。
開発規模の圧縮を見据えたAI実務活用
高氏がAI研究に踏み込んだ背景には、日本のゲーム業界が直面する構造的な問題がある。開発費の高騰、スケジュールの長期化、供給過多。大手にいた頃、同氏が得意としていたミドルゾーンの新規IPは企画として通りにくくなっていた。退職後の2年間、高氏はゲーム開発にAIをどうリンクさせるかを多方面から研究したという。
「もしかしたら、AIを活用すれば今まで自分がやってきた規模の開発をかなりコンパクトなかたちにして、新しくゲームを作っていけるんじゃないかなと思いましたね。」と高氏は語る。ただし、同氏が見出した可能性はAIによる開発の全面代替ではない。Impachiで実際にAIを使っている領域は、Claude Codeによるコーディング全般、ゲームデザインドキュメントの整理、マーケティングプランの立案とリサーチ、そして総務的な業務。いずれも、少人数体制の制作ラインを回すための実務工程にあたる。
絵と音楽には「自分の求めるレベルにない」
一方で、高氏は絵と音楽への生成AI導入を現時点では見送っている。「少なくとも現状の性能では、自分の求めるレベルにないですね。」「このたび立ち上げた会社では、絵と音楽については、現時点では生成AIを使用しないという方針になりました。」と、不採用の対象範囲とその理由を明確にしている。
高氏によれば、2025年4月のChatGPTの画像生成能力の向上や、同年10月のGeminiのNano Bananaによる一貫性のあるグラフィック生成など、画像生成AI自体は進化を遂げた。しかし、そこからの伸びは同氏の期待に届いておらず、ゲーム用アセットとしての採用は難しいと判断したという。高氏はあくまで、現時点の出力品質が自身の求める制作基準に達していないことを不採用の理由として挙げている。
Impachiの方針を見ていくと、生成AIを使うか使わないかを一律に決めているわけではないことが分かる。コーディングや文書整理のように実務効率を上げられる工程にはAIを組み込み、アートや音楽のようにクリエイティブの品質基準が直接問われる工程には人が担う。そうした工程ごとの切り分けが、高氏が2年間のAI研究を通じてたどり着いた結論だ。



