『グノーシア』川勝徹氏が語る、無名インディー作品を”生まれた物語”で届ける文脈設計と泥臭い営業の実践

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プチデポットの川勝徹氏は、無名のチームが無名のゲームを売り出す際、スペックやジャンルの説明では関心を持たれにくく、そのゲームが生まれた物語を伝えるほうが有効だったと述べている。同氏はSNS告知にとどまらず、メディアへの個別連絡やイベントでの継続的な関係構築も実践していたという。4人チームで開発された『グノーシア』の広がりには、作品自体の力に加え、こうした文脈の設計と人的な届け方が組み合わされていた。

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スペック説明より「なぜ生まれたか」の物語で伝える

川勝氏がこの設計思想を実践した原点は、プチデポットの第1作『メゾン・ド・魔王』にさかのぼる。同作は、メンバーがアパート管理人のアルバイト中に家賃を踏み倒された実体験から生まれたタイトルだ。川勝氏がこの開発秘話を前面に出したのは、ゲームの内容が分からなくてもまずは興味を持ってもらえるのではないかと考えたためだと説明している。

その根底にあったのは、無名チームの無名作が置かれる状況への冷静な認識だった。

「実際のところ、無名のチームが無名のゲームを世の中に売り出そうとした時に、ゲームのスペックとかジャンルをいくら説明してもおそらく興味ないだろうと。」 ——電ファミニコゲーマーより

川勝氏はNHK『プロジェクトX』を例に挙げ、ダム建設自体には興味がなくても、作った人々の物語には興奮したと振り返っている。スペックではなく文脈で届けるこの手法を、川勝氏は専門学校での授業でも取り入れたところ、反応がよかったという。

SNS告知だけでは届かない——個別接触と関係構築の実践

川勝氏は、インディー業界に入った当時、ゲームを作る力があっても、その届け方まで意識している開発者には出会わなかったと述べている。自身には営業的な仕事の経験があり、そこに勝機があると考えたという。

具体的な実践として同氏が挙げるのは、メディア関係者への個別連絡やイベントで会った相手との継続的な接点づくりだ。その一例として、電ファミニコゲーマー編集長がSNSで『グノーシア』に言及した瞬間を捉え、大晦日に飛び込みでメールを送ったエピソードも語られている。

「SNSでちょろっと告知して満足してたらダメなんですよね。」 ——電ファミニコゲーマーより

発信するだけならSNSでもできるが、もっと人間性を出した泥臭いやり方も必要だと川勝氏は位置づけている。皆が面倒だと思ってやらないことこそ、一番やるべきことだという考えだ。一斉に送った30通のうちの1通だと相手に思われてはならないとも同氏は述べている。関係性ができていない段階でのまとめ送信では埋もれてしまうとの認識だ。

ディレクター兼プロデューサーとして創作とビジネスの両面を担う

4人チームのプチデポットでは、川勝氏とほかのメンバーとの間に明確な役割分担があった。川勝氏はディレクターを兼務しながら、仕事の半分はプロデューサーの視点で取り組んでいると説明している。クリエイティブと売上や数字まわりの両方を考えるのが自身の担当で、他の3人にはクリエイティブに専念してもらう体制だったという。

川勝氏によれば、ビジネス的な考えは純粋なクリエイティブにとって雑念になりかねない。クリエイターには純粋な気持ちでゲームを作ってほしいという思いから、売る側の仕事を自身が引き受ける構造を選んでいる。なお『グノーシア』は2019年6月20日にPS Vita版が配信開始され、TVアニメは2025年10月11日に放送が開始されている。

※本記事は電ファミニコゲーマーの報道をもとに、関連情報を加えて再構成しています

出典

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