『ポートピア』完成直前、2KB不足で約1000文を全見直し ——堀井雄二氏が「削らなかった」のは”ニヤッとさせる”テキストだった

portopia_260311

ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』(1985年)の開発で約1000の文章を1文2文字ずつ削りながらも、「ニヤッとさせる」遊び心のテキストだけは残したと、堀井雄二氏がファミ通.comの独占対談で明かしています。完成直前に判明した2KBの容量不足への対処として、32KBの制約下で全文を見直したとのことです。この対談は、『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』(2026年2月19日発売)のディレクター石山貴也氏が堀井氏に直接訊く形で実現しました。

スポンサーリンク

32KB制限下で残した「遊び心」——堀井氏が語る取捨選択の基準

1985年11月29日に発売されたファミコン版『ポートピア連続殺人事件』は、容量がわずか「32キロバイトしかなかった」と堀井氏は振り返ります。その32KBに収められた文章は約1000にのぼり、完成直前の段階で2KBの容量不足に直面していました。

「『1文につき2文字削れば足りるな』となって。全部見直して、ちょっとずつ削ったんですよ。」 ——ファミ通.com 堀井雄二×石山貴也対談より

堀井氏は削減の具体例として、作中で「スナックぱる」の場所を案内するセリフを挙げています。当初は「ぱるなら、その角を曲がったところに」といった長めの表現だったものを、「ぱる なら そこでっせ」に変更し、それだけで10文字を削ったと振り返ります。

石山氏はこの手法について、容量を削ると文章が機械的で無味乾燥になりがちだと指摘しつつ、堀井氏のテキストにはユーモアや遊び心がしっかり残されている点に感銘を受けたと述べています。その削減作業のなかでも遊び心を手放さなかった理由を、堀井氏自身はこう語ります。

「プレイヤーをニヤッとさせたかったので、そこは削らなかったですね。」 ——ファミ通.com 堀井雄二×石山貴也対談より

石山氏はこの姿勢を「おふざけも決して無駄なものではなくて、必要なものなんだ」と受け止め、自身の制作にも受け継いでいると話しています。

堀井氏が語るスペース表記の原点はマンガ——石山氏が継承した「読点を使わない」手法

『ドラゴンクエスト』シリーズでは、テキスト中に読点(、)を使わずスペースで区切る独特の表記法が知られています。対談のなかで堀井氏は、この手法の原点について「もともとマンガのセリフの書きかただったから」と説明しています。同氏によると、初期のファミコン作品では平仮名しか使えず、文字が続くと読みにくくなる一方、読点を入れると「うるさい」ため、スペースで間を取る方法を選んだとのことです。

石山氏はかつて『ドラゴンクエストⅩ』のシナリオライブプランナーチームに在籍した経歴の持ち主です。その時期に堀井氏のテキスト手法を学び、『スクールガールストライカーズ』や『パラノマサイト』シリーズでは読点を一切使わずスペースで代替しています。石山氏は対談で、当時のディレクター藤澤仁氏が「『ドラゴンクエスト』に関わった人はみんな文章の書き方が『ドラゴンクエスト』になる」と話していたことを紹介し、自身もその一人だと認めています。

32KBと50KB——「制限があるほうが楽しい」という共通認識

堀井氏が32KBと格闘していた一方、石山氏もスクウェア・エニックス入社前に携帯電話向けアドベンチャーゲームを手がけた経験があります。石山氏によると、最初に開発した携帯アプリは50KBの容量で、「どうにか1文字削れないか」と苦心したとのことです。堀井氏の32KBに比べれば余裕があるように見えますが、石山氏自身は「それでもキツキツだった」と当時を振り返ります。

対談のなかで石山氏が「ある程度、制限があったほうが楽しい」と語ると、堀井氏も「それわかります」と応じています。石山氏は堀井氏の姿勢を受け、「これからも、ちゃんとふざけていこう」と意気込みを見せています。

※本記事はファミ通.comの独占対談記事をもとに、関連情報を加えて再構成しています。

出典

タイトルとURLをコピーしました