カプコン出身のイラストレーター・あきまん氏(安田朗氏)が『エルデンリング』のグラフィックについてXに投稿した評価が、あらためて注目を集めている。GamesRadar+は2026年4月11日、この発言を『紅の砂漠』のような高精細タイトルとの比較を入口に紹介した。
しかし、あきまん氏が見ていたのは、単純な意味での精細さではない。氏が評価したのは、具象化が進むほど失われがちな「見る側が補う余地」を、『エルデンリング』がなお保っていることだった。細かく、はっきり見せるほど想像力を奪いやすいはずなのに、このゲームはむしろ想像力をかき立てる。あきまん氏は、そこに強さを見ていた。
あきまん氏はXで、こう述べている。
「普通、具象化が進めば見る者が補完する余地を奪っていくものだが、エルデンリングのグラフィックは具象化をその都度コントロールして見る者の想像力を常に最大限にかき立てる様に作られている」
——あきまん氏(安田朗氏)/X投稿より
グラフィックが精細になるほど、対象は具体的に見えやすくなる。そのぶん、見る側が頭の中で補う余地は小さくなりやすい。あきまん氏が指摘したのは、『エルデンリング』がその度合いを場面ごとに調整し、想像の余白を残しているということだ。GamesRadar+やAUTOMATON WESTが注目したのも、こうした点だったとみられる。
その評価は、遠景の扱いにもよく表れている。あきまん氏は同じ投稿で、こうも書いている。
「ご覧なさいよ、遠景から見た背景の浮世絵かアラン・リーかという様な空気遠近法を これを絵がうまいという」
——あきまん氏(安田朗氏)/X投稿より
一般に空気遠近法は、遠くのものほど輪郭や色をやわらげ、空気の層を挟んだように見せる絵画的な技法を指す。近景を細かく描き込むだけではなく、遠景をどう処理するかで景色の奥行きや気配は大きく変わる。どこまで見せ、どこから先を見せ切らないか。あきまん氏は、その加減を「絵としてのうまさ」として評価している。
この見方を補助線として考えるなら、フロム・ソフトウェアがCEDEC 2025で語った『ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE』と『ELDEN RING NIGHTREIGN』の背景レイアウトの話は参考になる。CEDEC 2025の公式ページでは、両作について「強い印象の背景グラフィックにするためにレイアウトを重視して制作されました」と説明されている。
さらに4Gamer.netのCEDEC 2025レポートによれば、フロム・ソフトウェアは作業コストやゲーム要件を踏まえたうえで、品質を引き上げる場所をあえて絞っていたという。その対象は「ビューポイント」と呼ばれ、プレイヤーが新しいエリアに足を踏み入れた直後など、場面の印象が切り替わる地点に置かれることが多い。すべてを同じ密度で磨くのではなく、強い印象を残す場所に力を注ぐ。これらはあきまん氏の発言を直接裏づける証言ではないが、氏が見いだした「具象化のコントロール」という視点と重なる部分がある。
『エルデンリング』の強さは、単純な高精細競争だけでは測れない。見せる場所と、あえて見せ切らない場所の配分によって、見る側の想像力を働かせる余地を残しているからだ。あきまん氏の発言は、その点を考える手がかりになる。
※本記事はGamesRadar+の報道を起点に、あきまん氏本人のX投稿、AUTOMATON WEST、CEDEC 2025公式ページ、4Gamer.netの情報を参照して再構成しています。
出典
- GamesRadar+:Legendary Capcom artist says Elden Ring’s visuals hold up against higher fidelity games like Crimson Desert because “the viewer’s imagination is constantly stimulated to the fullest”
- X(あきまん氏本人投稿):あきまん氏のX投稿
- AUTOMATON WEST:“This is what it means to be good at art.” Capcom veteran Akiman on why Elden Ring’s environments stand out even among higher fidelity AAAs
- CEDEC 2025:背景レイアウトから読み解く、『ELDEN RING』の世界
- 4Gamer.net:「ELDEN RING」の世界はいかに構築されたか。フロム・ソフトウェアが明かす,背景レイアウトの品質と印象を強化する手法[CEDEC 2025]



