初代『大乱闘スマッシュブラザーズ』が普通の格闘ゲームと同じルールだったら、そもそも発売されていなかったと思う――。シリーズの生みの親である桜井政博氏が、独自のゲームシステムを採用した理由とともに、そんな見解を語った。
桜井氏が想定したのは、1対1で戦い、ガードや通常攻撃、必殺技を使い、相手の体力をゼロにしてKOする従来型の対戦格闘ゲーム。仮にそうした作品が発売されていたとしても、基本的には「イロモノ」として扱われ、「そこで『スマブラ』の歴史は終わっていたことでしょう」と振り返った。
10月16日に公開された電ファミニコゲーマーのインタビューで、桜井氏は『スマブラ』の蓄積ダメージや位置取りによる独自の駆け引きに面白さがあると確信し、意図してその仕組みを採用したと説明している。しかし発売当時は、『ストリートファイターII』や『バーチャファイター』と異なることに馴染めず、批判する人もいたという。
なぜ、それほど従来の格闘ゲームと違う仕組みにこだわったのか。
桜井氏は過去の開発解説で、当時の格闘ゲームがコンボを重視するようになり、対戦相手との駆け引きが薄れていたと説明している。一度攻撃を受けると、相手が連続技を決めている間は自分の技術を発揮できず、特に初心者は一方的に攻撃される時間が長くなる。桜井氏はそうした状況を変え、対戦中の判断や駆け引きが生きる遊びを作りたいと考えた。
そこで生まれたのが、蓄積ダメージによって相手のリアクションが変化し、ステージ外へ飛ばされて復帰できなければ負けになる仕組みだった。同じ技を当てても状況が変わるため、プレイヤーはその場で次の行動を判断しなければならない。
桜井氏は2018年のインタビューで、一般的な格闘ゲームを「野球」、『スマブラ』を「サッカー」にも例えている。相手の体力を段階的に削っていく攻防に対し、『スマブラ』では予想外の展開から決着がつくこともあれば、じっくり攻めを組み立てることもできる。
こうした独自の仕組みは、任天堂のキャラクターを登場させる前から存在していた。
初代『スマブラ』の原型となったプロトタイプ「格闘ゲーム竜王」には、すでに蓄積ダメージ、空中ジャンプ、すり抜け床、はじき入力、画面外へのふっとばしといった要素が組み込まれていた。必殺ワザが追加されたのは、任天堂のキャラクターを採用した後だったという。
任天堂の「社長が訊く『大乱闘スマッシュブラザーズX』」でも、桜井氏は当時の2D格闘ゲームに対するアンチテーゼと、4人対戦によって毎回異なる展開が生まれる面白さを、初代『スマブラ』の構想として挙げている。
一方、独自の遊びを考え出すことと、それをプレイヤーに受け入れてもらうことは別の難しさがある。
2018年のインタビューで桜井氏は、初代『スマブラ』が発売当初に誤解や反発を受けながらも、実際に遊んだユーザーの口コミや評価によって復活できたと振り返っている。また、当初の企画ではアナログスティックだけでジャンプする仕様だったが、従来のゲームに慣れた人への配慮から、製品化までにジャンプボタンを追加したという。
今回のインタビューでも桜井氏は、ユーザーが慣れ親しんだゲームに期待するものと異なるだけで、独自の面白さに気づく前に拒絶されてしまう難しさを語っている。新しい遊びを思いつくことに加え、それをスタッフに理解してもらい、最終的にユーザーへ伝えることまでが大きな壁になるという。
それでも桜井氏が独創性を重視する理由は明快だ。「もし同じものなら、そのオリジナルを遊ぶのがいちばんいい」と述べている。






















